デザインプレゼン「まだ見ぬ人との共創を生むコミュニケーションデザイン」

美大生×官僚 共創デザインラボのこの記事では、「デザインプレゼン」について書いていきます。
今回は、美大生の本領発揮とも言える「アイディアの視覚化」。
このコミュニティの成果のひとつとして、早くも参加者の官僚の皆さんや、各地の美大やオブザーバーの皆さんから好評をいただいています。
ぜひ、覗いてみてください!

デザインプレゼンについて

美大生×官僚 共創デザインラボの活動の一つとして、「アイディアを視覚化する」ことがあります。
デザインワークショップで、美大生と官僚が協力して生み出した様々なアイディア。
それを、美大生が持つ技術で「目に見えるもの」にし、次回ワークショップでお披露目するのが「デザインプレゼン」です。

WSデザインプレゼン

今回は、昨年第1回ワークショップでの実例をもとに、デザインプレゼンについてまとめていきます。
「まだ見ぬ人との共創を生むコミュニケーションデザイン」をテーマに出し合った案をもとに、美大生メンバーが手探りで形にしていきました。
第2回オンラインワークショップでお披露目した際の反応や、リアルタイムでzoomのチャットに書き込まれたコメントなどもご紹介します。

第1回ワークショップの様子や、その他のアイディアなどについては、こちらの記事からどうぞ!


デザインプレゼン1 ーヘンなネクタイ

多摩美術大学大学院修士1年 秋丸 佳寿美(あきまる・かすみ)

ワークショップでAチームが出したアイディアは、「ヘンなネクタイの日」をつくるというもの。
官僚の堅いイメージを変えるため、気軽にチェンジしやすいネクタイをテーマにしました。ネクタイという、真面目な印象のアイテムを使って「遊ぶ」ギャップが面白い、とワークショップでも好評でした。

デザインプレゼン_秋丸_ページ_04

ここで言う「ヘン」とは、ユニークで親しみやすく、斬新な魅力があるということ。当然、奇をてらいすぎて「キモく」なってしまえば意味がありません。

情報収集やスケッチを重ね、4つの方向性が候補に上がりました。

デザインプレゼン_秋丸_ページ_05

カラフルな模様や柄、パッチワークなどで埋め尽くされた「派手なテキスタイル案」。
可愛いぬいぐるみを丸ごとネクタイにしてしまう「ぬいぐるみ案」。
ビーズなどの装飾でいっぱいの、賑やかな「デコラ案」。
本物そっくりの美味しそうなネクタイになりそうな「食品サンプル案」。

どれも視線をひとりじめできそうなアイディアですが、ここから更に検討を進めます。
各案について、ユニークでオリジナリティがありながらも、官僚が現実的に着用できる範囲に収まるにはどうすればよいかを考え、イメージを固めていきます。

デザインプレゼン_秋丸_ページ_11

その結果、ぬいぐるみをネクタイにするという案に決まりました。
裏テーマとして、「おじさんでも身につけやすく」「女子高生も欲しがるくらい可愛い」ネクタイを目指しました。

そうして出来上がったのがコチラ!

デザインプレゼン_秋丸_ページ_13

ふわっふわのクマのぬいぐるみが、そのままネクタイになっています。
ワンタッチで付けられることもポイント。
もし身に付けている人と出会ったら、クマの顔から目が離せなくなりそうです。

お披露目の際は、官僚やオブザーバーからも
「素敵です!」「かわいい!」「部屋に入る人のルールとしてクマタイ」
と、次々とzoomのチャットにコメントが書き込まれました。

海老原さん

着用すると、こんなイメージになります。
初対面の人でも、会話のきっかけになること間違いなしのインパクトです!

まだ見ぬ人と共創したい(色々な人と仲良くなりたい)という気持ちを込めて、「仲良くなりtie」と命名。
クマの他にも、ふわふわのしっぽやチーズ、ひよこ、キャラクターなどのバリエーション案も紹介しました。

仲良くなりTIE_B_秋丸


デザインプレゼン2 経産産業省の本棚

横浜国立大学建築学科 伊波 航(いなみ・こう)

Cチームが出したのは、経済産業省内にカフェを作る案、官僚のプロフィールやプロジェクトを閲覧できるオンラインツールのアイディア。
このアイデアは、官僚誰しもが、内に秘めている想いや考えを持っていても、形にする機会がなかなかなく、次につながらないと美大生がヒアリングから感じた現状に基づいています。

デザインプレゼン_伊波02のコピー

それをもとに、「何かを発信したい」という官僚と、「それにリアクションしたい」と思っている「まだ見ぬ人」をつなぐものを発想。
デザインプレゼンでは、カフェ案の要素を活かしながら、経済産業省に新しい場を創造していきます。

デザインプレゼン_伊波04

まず、「人」と「情報」の双方が集まる場所を、「図書館」のような場所として捉えます。
例えば官僚が、好きな本やマンガや思いついたアイデアを書き込んで、本棚にしまう。
それを他の人が閲覧し、レスポンスや評価を書き足して、また本棚に戻す。
最初に書き残した官僚が再度見た時には、賛同や更なるアイディアなどと出会えるという仕組み。
そのような循環が生み出されるように、自由に使える空間を用意していきます。

デザインプレゼン_伊波05

経済産業省の建物に入ってすぐの1階ロビーは、今はソファが置かれているぐらいで、少し殺風景にも感じられます。
そこを改装し、本棚や上げ床などを備えた、居場所になるような空間に変身。

デザインプレゼン_伊波06

ワークショップも開催できるようなスペースや、大きく開閉できる窓など、柔軟な設計になっています。
「簡素で仮設的なものが、堅牢な建物の中に溶け込んで共生する」ようなイメージで、既存の庁舎の中に居場所を出現させました。

デザインプレゼン_伊波07

現在は木が植えられているだけの場所も、位置付けを変えて前庭のように整備。
経済産業省の外と内とを緩やかにつなぐ縁側や、入ってすぐ見える正面の壁面にはホワイトボードやスクリーンを備えるなど、ワークショップで挙がった小さなアイディアが散りばめられています。

デザインプレゼン_伊波8

日替わりでキッチンカーが来るようになればこの空間でご飯を食べることもできるし、ワークショップに関連のあるワゴンを呼ぶこともできるかもと、空想も広がります。

伊波11

デザインプレゼン_伊波12

デザインプレゼン_伊波13

そして、「経済産業省の本棚」のポイントは、「人目につく場所で何かをする」ということ。
根底にあるのは、「まず官僚自身が楽しんでほしい」という想いです。
読み終わった本でも好きなマンガでも、なんでも置いて自由に楽しめる。
そして官僚が生き生きとページをめくったり、空間を楽しんだり、ワークショップの様子が外からも見えることで、良い影響があるのでは、と考えたのです。

デザインプレゼン_伊波14

普段のロビーを見慣れている官僚からは、
「この職場なら通勤も楽しそうです!」
「こういう玄関なら、企業にお邪魔した時に羨ましくなることが無くなりそう」
などの好評のコメントがチャットに書き込まれました。


デザインプレゼン2 シン・政官要覧

多摩美術大学グラフィックデザイン学科4年 塩谷雄大(しおたに・ゆうだい)

Bチームが出したアイディアは、官僚個人について発信することができるツール。
美大生が使うポートフォリオのように、官僚もパッと見て伝わる「政策ポートフォリオ」を持つ、そんな想像から生まれました。

デザインプレゼン_塩谷2

その根底には、美大生がヒアリングで感じた官僚ならではの問題意識がありました。
現在、官僚が個人で情報を発信する機会はほとんどありません。
『政官要覧』という政治家や官僚についてまとめた本は、分厚くて手に取りづらい上、官僚の情報は幹部のもののみ。
経済産業省ホームページの採用向けパンフレットで、ようやく個人の顔が見えてくる程度。熱い思いを持った取り組みや政策が社会に伝わらず、何をしているのか、何を考えているのかがわからない人たちに見える。

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そんな壁を乗り越えて、出会いに繋がるような情報発信ができるツールを考え、たどり着いたのが「インスタグラム」。インスタグラムのアカウントで、経済産業省の政策や官僚の想いなどを投稿していく、というアイディアです。
1投稿ずつにテーマを分けて表紙が並んだトップページから、気になる記事を読むことができます。数枚にまとまった情報を横にスライドして読んでいくだけなので、分かりにくいというハードルを感じることも無さそうです。

デザインプレゼン_塩谷7

また、若い世代がよく利用しているメディアを使うことによって、新しい出会いの可能性も広がります。生き生きと活動する官僚の姿を発信し、気軽に見てもらうことで、学生の採用にもつながるかもしれません。
インスタグラムの投票機能を使って、政策への若い世代の反応を直接見ることもできます。

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このアイディアと連動して、官僚にとって一番身近なコミュニケーションツールである、名刺もリデザインしました。堅く無機質な印象も、デザインでポップに、グッとカラフルで注目を集めるデザインになりました。

また、この共創デザインラボや、行政と民間の間での人材流動性を高める週一官僚プロジェクトなども、ロゴで可視化しました。官僚が独自に立ち上げた取り組みについて伝える会話のフックにもなります。

裏面のQRコードから、その場ですぐインスタの自分の記事を見てもらうこともできそう。
投稿自体が数枚の画像で簡潔にまとまっているので、気軽に印刷して使えます。ちなみに、この次世代空モビリティ室や週一官僚プロジェクトのロゴ、名刺も実際に官僚の方に採用され、近日実動し様々な展開が期待されています!

まとめ

共創デザインラボ初めての「デザインプレゼン」は、ワークショップに参加した官僚やオブザーバーの方からも大好評でした。
「視覚化する」という美大生の力の可能性を、改めて感じることができた機会になったと思います。

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