見出し画像

BTS7人の保有株価は約65億円。まもなくIPOのBig Hit Entertainmentのこれまでとこれから。

10月になりましたね。中秋の名月はきれいだったし、キンモクセイ香るこの季節は1年の中でも大好きな時期です。ゆるゆると放置していた韓国エンタメラボの最初の記事は、BTSではじめようと思います。

ビックヒットエンターテイメントの上場

韓国は1年のうち一番大切とされる秋夕(チュソク)連休でしたが、連休明けの10月5日から公募がはじまり、多くの韓国人の注目を浴びている銘柄がタイトルにもあるBig Hit Entertainment(ビックヒットエンターテイメント、以下BHE)です。韓国では今年一番の大型上場として注目されているBHEですが、その時価総額はおおよそ4,000億円と予想されています。

ちなみにJYPやSM、YJの時価総額は3社合わせて約3,000億円とのことで、BHEはこれを上回ることになります。なお、日本ではABEXの時価総額が約465億円、スタートアップとして華々しく上場したUUUMは約434億円となるので、日本の芸能事務所の10倍ほどとなります。

新規発行株数は713万株で、うち一般公募は570万4,000株となります。上場は15日の予定なので、2005年にBHEが創立され、15年でついにユニコーンとして上場、という形になりそうです。

また、上場前からすでに場外取引が盛り上がっております。以下の記事は、その様子を紹介したものです。(『ビックヒットエンターテイメント、上場前から1株あたり40万ウォンに達する』)

公募価格が13万5,000ウォン(1.5万円程度)であるのに対し、すでに高騰している形となりますが、これはARMY(アーミー、BTSのファンの呼び方)らが「株を買ってアーティストを応援したい」といった動きも影響していそうです。(自分が応援するアーティストを冷遇したら、株主として許さない、ということになります)公募の倍率は約1,000倍強。ほぼ宝くじですね笑

また、上場に先立ち、BHE(というかパン・シヒョクさん)は主力アーティストであるBTS(防弾少年団)の7人のメンバーに一人あたり68,385株を贈与しました。これは時価総額換算で一人あたり約9億円に当たるものになります。(今後テレビで彼らを見るときは金融資産9億円あるな!と思いながら見ることになりそうですw)

本日はそんなBHEの有価証券報告書などの資料を読みつつ、彼らの軌跡やこれからの動きについて簡単にはなりますが、述べていこうと思います。(以下のリンクは上場申請のための証券申告書)

BHEのこれまで。超ざっくり。

そもそも2005年、パン・シヒョク氏がJYPから独立してから設立したビックヒットエンターテイメントですが、最初からうまく行っていたわけではありません。

一時期はバリュエーションが約300円(1株ではありません、企業価値です)までのダウンラウンドを経てのいまがあることはあまり知られていません。ちなみにBHEにほぼ最初に投資したSV Investmentのマルチプルは27倍(2011年および2012年に合わせて4億円を投資、110億円でExit)でした。SVは2019年、BHEへの投資実績が評価され、韓国のトップVC賞を受賞しています。(ちなみに売却はLPからの要望とのことですが、売却せずに保有していたら恐らく数100億円台でのExitだったろうと思うと、残念ですね)

そんな彼らが成功したのはBTSの力が大きく、売上比重は9割がBTSから生み出されており、報告書でもリスクとして取り上げられています。

당사는 주요 아티스트인 방탄소년단의 매출액 비중이 2020년 반기 및 2019년 각각 87.7% 및 97.4%를 차지하는 등 특정 아티스트에 대한 높은 매출 의존도를 보이고 있습니다.

これに対して2018年に再契約を行い、2024年までのBTSの活動は確保されていますが、IPの多角化を狙って近年は積極的にM&Aを行っています。GFRIENDのSource MusicやセブンティーンのPledis Entertainmentなど、韓国でも規模のある事務所を買収することによって自社のポートフォリオを増やそうとしていることが見て取れます。

これから:IT企業としてのBHE

ウィバース(Weverse)という独自のプラットフォームを立ち上げたBHEは、今後はIT企業としての側面も強化していきそうです。特にコロナの影響でコンサートなど、オフラインでの展開ができず、SpotifyやYou Tubeのようなストリーミングサービスが収益の多くを占めるようになっています。プラットフォーム側へ支払う費用が膨らんで来ている現時点では、妥当な判断と言えるかもしれません。

プラットフォームを開発しているのはbeNXという子会社で、beNX Japanなど日本にも進出、ECサイトの運営も担当しています。

ウィバースを利用した6月のライブは107カ国、同時接続75万人を記録しましたが、有料コンテンツの同時接続が75万人というのは驚異的かと思いますし、これを実現するプラットフォームを自社で作り上げたことは、BHEが以下にITに投資しているかを端的に見せてくれています。

ちなみにウィバースのMAUは2020年7月基準で412万名とのことで、ダウンロード数が1,000万を超えているに対して、個人的にMAU比率は高いほうだといってよいだろうと思います。

당사는 아티스트와 글로벌 팬덤 간의 활발한 소통을 위해 커뮤니티 플랫폼 서비스인 '위버스'를 출시하였으며, 위버스는 2020년 7월 기준 MAU(월간 활성 이용자) 412만명 이상의 글로벌 플랫폼으로 성장하였습니다. 당사는 별도의 전문성을 갖춘 자회사인 ㈜비엔엑스를 통해 해당 플랫폼의 개발 및 운영을 전담하도록 하였으며, 과거 최대 트래픽의 2~3배 이상의 트래픽이 발생하더라도 결함이 발생하지 않도록 관리하고 있습니다.

また、今後はトラフィック対応を2、3倍まで拡大するとのことです。

BHEが抱えるリスク

PERは上半期の実績からみて50倍以上となり、一般的なエンタメ企業のPERである30~35倍を大きく上回っているため、オーバーバリュエーションという批判もあります。

また、これは韓国人アーティスト特有の問題ではありますが、兵役の問題も避けることができません。最年長のジンは2021年までは入隊を延期できるが、2022年までにどうするかがBHEの課題になりそうです。

당사의 주요 아티스트인 방탄소년단은 1992년생 내지 1997년생의 현역병 입영대상 멤버로 구성되어 있으며, 이 중 출생연도가 가장 빠른 멤버인 김석진(진)은 2021년 말일까지 병역법에 따른 입영연기가 가능할 것으로 판단하고 있습니다.

ただ現在、韓国ではBTSも様々な分野で適用されている兵役の特例に当たるという議論があり、もしかしたら彼らが懲役を回避することも可能かもしれません。そうなれば、BHEの持続的な収益化はある程度担保されるでしょう。

駆け足で書いて見ましたが、BHEは今後も伸びしろがありつつ、BTSの後続アーティストを生み出せる仕組みになるかどうかが課題ということになります。またIT企業としての収益化という川下の領域をきちんと取っていけるかも利益率に関わってくるため、注目したいと思っています。

なお、当記事は今後、随時更新する予定なのでたまに覗いてみてください。

サポートいただいた分は今後のリサーチのために使わせていただきます