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海の見える町と猫 4話




 もうすぐわたしの昔話も終わります。

 今では、うろこ港の町並みも、人も、猫も、波にさらわれて、川の駅のテラスだけがぽつんと残っています。
 ここまではボートを使わないといけないから、散歩にでかけるのも一苦労です。
 最近では、とうとう川の駅のテラスにも海が上がってきました。

 あたしは書き上げた手紙を瓶に入れて、テラスの上でそっと放した。
 瓶はしばらく波に揉まれて、それから夕日の沈んでいった方向に流れていった。
 時々こうして宛名のない手紙を出している。 
 ずいぶんと細くなったあたしの足首に波がじゃぶじゃぶ当たるのを感じながら空を見上げると、深い紺色が広がっていた。
 ゆっくりと水平線へ目を向けると、深い紺色はだんだんと薄くなり、とうとう淡いオレンジ色になった。
 けれど、海の色は真っ黒だった。
 しばらく水平線の黒を眺めているうちに、足元から頭の先までどっと力が抜けてなんのためにここへ来たのか分からなくなった。
 ときおり、ざあっと音が聞こえて、冷たい風が背中にあたる。
 耳の奥でジリジリと音が聴こえる。
 目の前がゆらゆら揺れているような気がして、ぐっと目を凝らす。

 水平線にみえる真っ黒な海が、ぞっとするほど美しかった。

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