最後の跳び箱(レモンさん)
私は怖がりだ。
おばけも怖い、泥棒も怖い。
そして、マット運動で後転する事さえ怖い。
首の骨を折るんじゃないか、手首を捻挫するんじゃないか、
そういう想像が先走り 足が動かなくなる。
小学校の体育には跳び箱の授業がある。
小学校では6段飛べれば合格で、人によっては8段10段飛ぶ人もいる。 この跳び箱が曲者だった。
跳び箱は私に負の連想をさせるには必要十分だった。
私は跳び箱が飛べない。
それは運動神経の問題ではない。
負の連想で体が動かないのだ 私は一番低い3段の列に並び、
それでも飛べない日々が続いた。
最後の跳び箱の授業
担任の木塚先生は私に跳び箱を飛ばせてあげたいと思っていた。
木塚先生が3段の列に並ぶ私に「飛べるよ」と優しく言った。
クラスの皆が、「飛べる」コールをする。
手を叩く友人もいる。
意を決した私は走った 後には引けない、
負の感情に負けられない 先生の想いを無駄にしたくない。
走った。そして・・・・飛んだ。
・・・・・飛べた
簡単じゃないか。 3段が飛べれば6段も8段も飛べた。
木塚先生は最後の学年通信にこの話をこう記している。
自分で作った見えない天井に頭を打つ恐怖で、ジャンプできない事がある。 だけど、この見えない天井は、信じてくれる人がいればきっと打ち破れる。 そして一度打ち破れば、誰でも高く飛べるはずだ。
※この内容はインタビューを元に、加筆修正を加えて作成しています。
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