『老舗の流儀 虎屋とエルメス』黒川 光博, 齋藤 峰明
MAY 19, 2018 Instagram掲載
あの日、新しくできたデザインホテルの5000円ランチが本当にがっかりで、すっかりやさぐれた私たちの口直しをしてくれたのはTORAYA CAFEだった。虎屋は、絶対に裏切らない。やってくれる。いつものように。
そして、今はまだだけど、いつか当たり前に使っていたい(という自分になっていたい)エルメス。
美しくて、上等で、決して揺るがない2つの老舗。
フランスでエルメス本社の副社長をされていた斎藤さんと(エルメスは同族経営)、後陽成天皇在位中(1586-1611)から御所の御用を務める虎屋の社長 黒川さんによる対談。
どちらも職人をとても大切にしているので、職人好きにはたまらないエピソードがちらほら。
ある職人を「何年かかってもいいから日本中の和菓子屋さんを回って勉強してこい」と送り出したら、始めは嫌々そうに出て行って「おいしい」「まずい」と言っていたんだとか。それが「まず図書館や郷土資料館に行って、今日までの町の成り立ちを知ると、そのお菓子が受け入れられた理由がわかる」とお菓子と土地のつながりを考えるようになった、とか。たまらん。
虎屋も1980年にパリでお店を出していて、たくさんの具体的な事例を挙げて、日本とフランスの違いが語られる。
全面的に良いとか悪いとかはなくて、本当に異なっている。抜本的に違うっていう片鱗がわかりました。 - 老舗が長く続くのは『道理』に沿っているからじゃないか
‐ 判断は直感
と2人は話している。ビジネスの濁流の中を、直感を研ぎ澄ませて、道理を探って進んでいく。彼らはものづくりではないけど、そういうスキルの熟練した職人なんじゃないかな。
私がこの2人を素敵だなと思うのは、かっこいいところ。ガツガツではなくて、Elegant でsophisticated。対談をまとめた川島蓉子さんのあとがきには、二人とも家族を本当に大事にしている、とも。ご自分の人生がまるっと自身の哲学の構築と実践、そして経験になっているから、魅力的なんだろう。
2018年秋には赤坂の虎屋がリニューアルするそう。御殿場の虎屋のお店と工房にも行きたいな。そして社員の紹介があれば入れるというエルメスのミュージアム。いつか行って耽溺したい。
10. 老舗の流儀 虎屋とエルメス
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