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『コロナ黙示録』海堂尊

現実にあのヒーローが登場したらどう対処するんだろう?と思うことがある。

小説の舞台はコロナが日本に入ってきてしまった日本。クルーズ船で発症が確認されたものの隔離方法に問題があったり、その後も海外からの渡航者を疫学的に適切に対処できないなど、国内にコロナが侵入してくる。第二次安保首相の政治は首相や婦人、そして「おともだち」に便宜がはかられ、検察システムさえも壊れていく。『チーム・バチスタの栄光』や『ジェネラル・ルージュの凱旋』で活躍した東城大学医学部附属病院の「行灯」不定愁訴外来主任の田口先生と「火喰い鳥」厚生労働省技官 白鳥なら、またあの登場人物たちならどう立ち向かうのか。

図書館で随分前に予約したこの本は、オリンピック開催とともに私の手元にやってきた。医者である海堂尊さんはどのように「今」を小説にするのだろう。

クルーズ船内の隔離や、下船したあとの対処はどうすればよかったか。小説の中にもシガラミはありながらも、登場人物たちは逼迫した環境の中で判断を下し、行動を起こしていく。

アンフェアな政治(第一次から第二次政権、「満開の桜を愛でる会」や有朋学園国有地払い下げ問題に関する疑惑などに丸々一章が割かれる)を背景に、専門家の意見が軽視され事態がみるみる悪化していく。やりきれない環境の中で、医療関係者は目の前の患者を救うために力を尽くしていく。

第一刷は2020年7月。あれから1年、ワクチン接種は始まったものの、オリンピックは開催され感染者数は激増して医療崩壊に近づいている。小説と現実は分岐してしまってすっかりパラレルワールドになってしまった。私ですらやりきれない気持ちになるのに、海堂さんはどんな気持ちで「今」を見ているんだろう。

この本で、疫学的に何を徹底すればいいのか、コロナが重症化したらどうなるのか、病院でどのような処置が必要になるのかがわかった。私にできることはコロナにならないように行動する、まずそれだと思いながらワクチン2回目を待っている。

『コロナ黙示録』 海堂尊

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