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逆算と段取りを気にしすぎて、先に進めなくなった話【ユタカジン】

世の中、特に仕事の上では「ゴール(目標・あるべき姿)を定めてそこから逆算し、詳細にタスクを割り出す」という考え方が主流のように思う。

対して私はどちらかというと「逆算」とは反対の「順算」優位のタイプ。思いついたらまず手を動かし、試行錯誤して、その時必要なものを都度集めながら進めていく。比較的クリエーターに多いタイプなんじゃないかと思う。

霧に包まれたような漠然としたイメージはふんわりと頭に浮かんでいるけれど、いざ作り始めたらまったく違うものが出来上がったりする。いわゆる偶然の産物も含まれる。

しかし仕事、特にチームで作業をするうえでは、それでは許されないシーンが多々ある。まずはゴールとなる形を定め、そこに向かうまでの計画を綿密に立てる。リスケはもちろん出来るものの、そうそう頻繁に「やっぱりこうしたい」とは言いだしにくい……

実行中も段取りとは違う手法を次々と思いつき試してみたくなる私だが、苦手ながらも、周囲に促されて順序だててタスクを積み上げ、その通りに実行しようと試みる。

そうやって過ごしてきたある日、ふと良くない変化に気づく。
あきらめの速さ」と「機動力の低下」である。

計画ファーストにおける「待て」のメッセージ

まず計画!段取り八分。
思いついたら取り合えず何か形作ってみる……そんな私の頭に、計画ファーストは強烈な「待て!」のメッセージとして刻み込まれたらしい。

まだ手を付ける段階ではない。いきなり作ってはいけない。
草案やたたき台作りも、まずは方向性が決まってから。
やりたい気持ちが抑え込まれていくうちに、当初の熱量は奪われていく。

そのうち、実際に何かを作ろうという段階で、不安と戸惑いを感じるようになった。今まではそんなことを感じる間もなく「ふと浮かんだものを形にしてみたい」という衝動だけで手が動いていたのだと思う。猪突猛進と言われたこともある。

それが「本当にこの計画通りに、想定通りのものが作れるのか」というプレッシャーとの闘いが先に来るようになった。
核心部分を先送るかのごとく、関連文書の作成や情報収集ばかりが進む。
モノを作るのに、いつからこんなに勇気が必要になったのだろうか。

逆算と順算における「失敗」の捉え方

また「自分が上手くいっていない感覚」というものも覚え始めた。

考えてみれば、逆算思考では効率を考えて計画を組むことが多い。
想定通りにいかなければ修正が入り、修正を繰り返すのは時間のロス。
自他ともに評価が下がっていく。

対して順算思考では、もとより軌道修正を繰り返しながら進む。ちょっとやそっとの失敗は、ただの通過点。
「やってみたけど上手くいかなかったから、他の方法を試してみよう!」
という次のステップへの踏み台でもあり、むしろ「今後のための引き出し」が一つ増えた、ということにもなりうる。

順算的なプロジェクトの出会い

「でも仕事ってこういうものなんだ、自分のやり方は少数派で、これでは社会では通らないんだ。」
そうあきらめていた私が、チームでの順算的なプロジェクトに出会った。
タスクシュート協会の「手帳制作チーム」だった。

ざっくりとしたスケージュール感(目安?)はあるものの、現在の状況からのネクストアクションをミーティングしながら決めていく。絶対的なゴールはない。
初めての体験にかなり面食らったのを覚えているが、慣れてくると心地よい。常に次の一手に集中できる。

ひとつ手をつけるごとに世界は広がる

クリエーターは「職業ではなく生き方だ」といわれることがある。自分の経験や考え方が、作るものに如実に反映されるからなのかもしれない。
しかしそれは表に現れやすいか否かの違いであって、 誰であってもそうだと思う

1秒前までの経験が、自分に作用する。
昨日見た映画、今朝コンビニで見かけた新商品から、ふと何かを思いついたりする。TVドラマでも「なんらかのきっかけ」で事件が解決したりする。

自分の行動も然り。文字を入力する、線を1本引く、それだけで徐々に考えがまとまり、アイディアが広がる。手や目を動かし、指先から、感覚から、そしてそのフィードバックによって、自分の理解、洞察が深まり、形作られて、次の一手が見えてくる。

そうやって出来上がっていくもの、そんな未知の経験を、どうやって頭の中だけで作り、ゴールと道筋を決めることができるのか。

ただ先述の通り、仕事の内容によっては逆算が必要な場合も多々ある。
準備に時間がかかるもの、複数人での作業調整、予算がらみの案件 etc

何をどこまで逆算し、どこまで順算を取り入れると上手く回るのか。
自分も周りも、どうしたら気持ちよく進められるのか。思案の日々は続く。


<当回はnoteマガジン「ユタカジン」への寄稿です>

参加型のトークイベントもあります。よろしければ是非。


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