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ISAKを立ち上げた小林りんの物語「茶色のシマウマ、世界を変える」を読んで

「茶色のシマウマ、世界を変える」
日本初の全寮制インターナショナル高校ISAKをつくった小林りんの物語

石川拓治著 ダイアモンド社 

今の私にものすごいエネルギーと課題、明確な道筋を与えてくれた一冊。
改めて本の力はすごいと思った。

軽井沢にあるインターナショナルスクール、ISAK。名前は知っていたし、女性が立ち上げた、と言うのも頭の片隅にあった。インターで日本人はほとんどいなくて、というイメージで、ものすごいエリートが集まる学校なんだろうな、という勝手な想像をしていた。改めて女性が学校を立ち上げた、という所を思い出し、これはヒントになるかも!と早速本を見つけて読んでみた。

小林りんさんがISAKを立ち上げようとしたのは30代中。東京生まれで生まれながら高い知性を持ち、日本の高校を中退してカナダの高校へ。そこで見た世界の貧困から教育というキーワードを閃きながらその後東大を卒業し、常に心身が赴くままに世界を舞台に華やかな経歴を歩んできた彼女が日本の投資家である谷家衛氏に声を掛けられたのがきっかけで、最終的にはゼロからISAKを立ち上げた。

私はこの本を読みながら、同じ女性という立場で学校設立に向かう大先輩という気持ちで自然と自分と比較しながら読み進めた訳だが、冒頭の生い立ちの部分を読んでいて、まずは純粋に私がいつも思う日本の地方と都会の格差をまたここでも感じてしまった。和歌山で生まれた自分と、郊外といえ東京生まれの小林さん。彼女も同じように、学歴社会のを感じる高校の先生からの発言をきっかけにそれが嫌になってカナダへ飛び出したのだが、少なくともそこまでの中学教育は和歌山ではそもそも存在しない学校環境、(この学校環境は深堀してみたい。)そして高校が嫌になった時には次のカナダ留学を奨学金で叶える可能性という情報を手に入れて見事合格、そこでの体験が今のISAKの源になった。(もちろん!それを見事手に入れてしまう素質がそもそも彼女にはあるのだが。)
今はインターネットで地方に居ながらも情報が得られるのでここの格差は減っていると思うが、その時代に高校生が手に入れられる情報は限られていた。当時地方で生まれた人間には情報取得に大きなハンディがあった。そして情報が得られる今日とはいえ、小学校や中学校は少なくともまだまだ物理的に、もしくは経済的にも家から通える範囲の学校にしか通えないのが現状で、改めて小林りんさんのような人生を地方出身者が送ることは、無いとは言わないが確率的に考えて更に低いんじゃないかと思ってしまった。

早いうちでの整った教育環境が特に大事だと思った部分で、では何が整ったということになるか、であるが、突き詰めると自分を知る、自分の興味を知る、そして自分の道を歩む力、その上で学んでいくことができる教育環境なのではないかと思う。小林りんさんは、本当に早い段階でその域に達し、早々と世界を舞台に自分がやりたい仕事、やるべき仕事をこなし、その結果日本に一つしかないインターナショナル学校の必要性と使命に気づき、更にはそれを成し遂げた。

ISAKは、小林りんさんの実体験で見た社会課題により導かれた、「私たちは、自ら成長し続け、 新たなフロンティアに挑み、 共に時代を創っていく チェンジメーカーを育みます。」という精神を掲げている。

私の場合はやはりこうだ。日本の地方が抱える多くの社会問題。そして私が和歌山から東京に進学した時に体感した、教育環境格差。それの最たる場所が、私の故郷、和歌山である。やはりそこに、当事者として、問いを投げかけたい。そして、それらの問題を、ローカル視点、グローバル視点の両方を持って解決できる未来の開拓者が必要なのだ。そんな若者を和歌山から創出するために、学校を造る。そんなビジョンを明確にしてくれた、とても貴重な一冊であった。


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