見出し画像

〈継承〉の実現とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』


〈継承〉の実現 【けいしょうのじつげん】

 「〈継承〉とは、人間がひとつの生命体として必然的に死を迎えるという宿命によって、〈生活世界〉を通じて自らが前世代から受け継いだものを、改良しつつ、再び次世代へと引き渡していくことを指している。この〈継承〉という契機は、人間存在の“歴史性”という側面に位置づけられる。ただしここでの〈生〉には、「暮らしとしての生活」にも「精神としての生活」にも還元できない、“時間”の概念が含まれている。」

上巻 147

 人間存在が“生きる”と表現する営為の根幹にある「〈生〉の三契機」のひとつで、時間の概念を含んだ人間存在の歴史性と結びついている。

 この契機は、「暮らしとしての生活」にも「精神としての生活」にも還元できないが、たとえ〈生存〉〈現実存在〉を実現することができたとしても、この〈継承〉が実現されなければ、〈生活世界〉(およびその骨格をなす「〈生〉の舞台装置」としての〈社会〉)は現世代とともに破綻し、次世代の人間は、〈生〉の実現に際して多大な困難を抱えることになる。したがって世代を越えて「集団的〈生存〉」を実現するためにこそ、〈継承〉の実現が求められるようになったと考えることができる。

上柿崇英『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版、2021年)

 このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。

 (現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。

テーマ別索引
五十音別索引