〈生の自己完結化〉とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』
〈生の自己完結化〉 【せいのじこかんけつか】
〈自己完結社会〉の成立に伴う具体的な現象のひとつで、〈生の脱身体化〉と対になる概念。より具体的には、人々が「官僚機構」、「市場経済」、「情報世界」によって構成される〈社会的装置〉への依存を深めることによって、生身の他者に対して、直接的な関わりを持つ必然性を感じられなくなっていく事態のこと。
実際には、すべての人々が〈社会的装置〉を介してつながりあい、依存しあっているものの、人々にはその関係性が不可視化されており、それによって人々には、互いに互いを必要としていないように感受される。こうした心理的側面を通じて、生身の他者が負担やリスクとしてしか感じられなくなり、直接的な関係性を維持、構築していくことへの多大な困難(〈関係性の病理〉)を引き起こすことになる。
他方で、まったく同一の現象が、互いの生を分離可能なものとして認知させ、〈ユーザー〉としての「自由」と「平等」が拡大するという形で、人々に「あるべき社会」の実現をもたらすという根源的な矛盾が含まれている。
このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。
(現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。