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「究極の平等社会」の比喩とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』


「究極の平等社会」の比喩 【きゅうきょくのびょうどうしゃかいのひゆ】

 「例えばここで、“究極の平等”が実現した社会について考えてみよう。まず、そこではすべての人間に遺伝子操作が加えられ、人々は身体的潜在能力の「総和」が等しくなるように生まれてくる。……もちろんその社会には、「不平等」の元凶となりうる相続などという概念は存在しない。「初期設定」として与えられる財は、〈社会的装置〉によって厳密に管理されており、死亡した人間の所有物は、すべて一様に〈社会的装置〉へと還元されるようになっているからである。」 

下巻 124-125

 〈無限の生〉の敗北を超克するために、いっそのこと〈生の自己完結化〉〈生の脱身体化〉を極限まで推し進め、「意のままにならない他者」「意のままにならない身体」からの完全解放を試みる思考実験のひとつで、遺伝子操作と人体改造などを駆使して、人間存在を基礎づけている生まれながらの不平等(〈有限の生〉の第二原則=「生受の条件の原則」)を極小化させ、究極の平等が実現した社会のこと。

上柿崇英『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版、2021年)

 このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。

 (現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。

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