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「塗りつぶされた〈関係性〉」(〈間柄〉によって)とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』


「塗りつぶされた〈関係性〉」(〈間柄〉によって) 【ぬりつぶされたかんけいせい】

 「われわれが人間の本質を掌握してくためには、ここで第二のプローチとなる「〈生〉の分析」を導入し、その存在を再び生身の人間に等身大のものとして描きだしていく必要がある。そして人間存在を等身大のものとして描くということは、われわれが生活世界を舞台として展開している〈生〉をめぐる諸々の活動、すなわちわれわれが「生きる」と呼んでいる営為の本質を問うということを意味しているのである。」 

上巻 143

 もともと〈間柄〉は、〈関係性〉の「形式化」によって双方の「〈我‐汝〉の構造」がもたらすズレを緩和させ、負担(「内的緊張」)を軽減させる機能を持つものである。

 しかしこの「形式化」が強すぎると、望まない振る舞いを強制される感覚が強くなったり、〈関係性〉に「〈我‐汝〉の構造」を介在する余地がなくなったりすることによって、「意味のある〈関係性〉」を成立させることが困難となってしまう。

 「塗りつぶされた〈関係性〉」は、このことを比喩的に表現したものである。なお、その典型的な事例は、「市場経済」の文脈上で、「経済活動」に象徴される、「財やサービスを生みだす側」と「財やサービスを消費する側」といった〈関係性〉である。

上柿崇英『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版、2021年)

 このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。

 (現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。

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