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目覚まし時計のベルが鳴る
ちゅっちゅっちゅっちゅ。
梢にもたれた朝の霧に、
見付かりたくて隠れていたい散歩道。
犬は背伸びをしながら、
昨夜ついたばかりのため息を、
濡れた鼻先に押し付けながら甘えている。
シンクには溜まりっ放しで、
使い古しのジェンガみたいに、
遊び途中のまんまで高く積まれた洗い物。
破れたソファの穴に落ちて、
行方不明で捜索願いも取り下げたのは、
いったい誰の夢だか玩具だか、愛だったか。
ちゅっちゅっちゅっちゅ。
骨の髄までしゃぶったセンチメンタルは、
薄黄緑色に染まり絶版になったメルヘン。
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やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール