見出し画像

給水塔

山道の湾曲を抜けていくと
遺棄された採石場があった

夕映えのベルトコンベアは
静止した轟音を運んでいた

刈る人の無い草は首を垂れ
土に還れる頃を待ち侘びた

フェンス越しになぜる風は
当然の様に寄り添っていた

やがて夜が来たなら各々は
緑に埋まる給水塔へ帰った

だから僕はたった一人残り
何もない星空を眺めていた

この記事が参加している募集

やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール