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「遊ぶように学ぶ」STEAM学習

こんにちは。コアネット教育総合研究所の松原和之です。

STEAM学習について連載してきましたが、連載は今回を最終回として、一旦区切りをつけようと思います。
ということで、今回は、STEAM学習の今後の展開について述べたいと思います。

昨年度(2022年度)から高等学校で新しい学習指導要領が適用されました。全国の高校1・2年生の多くは、必修科目となった「情報Ⅰ」の授業を受けていると思います。
情報Ⅰでは、(1)情報社会の問題解決、(2)コミュニケーションと情報デザイン、(3)コンピュータとプログラミング、(4)情報通信ネットワークとデータの活用の4つの内容を学習することになっています。つまり、これからはすべての高校生がプログラミングを学ぶようになります。さらには、情報Ⅰは大学入学共通テストの試験科目として設定され、来年の今頃には多くの国公立大学で試験科目として採用することになります。必修科目とし、大学入試科目にも設定しているあたり、文部科学省の本気度がうかがえます。

ブログ記事で紹介してきたように、「STEAM学習=プログラミング学習」ではありません。しかし、プログラミングを学ぶことは、STEAM学習の基礎を学ぶことに他なりません。
このままの流れでいけば、次の学習指導要領には、STEAM学習の要素が色濃く入ることは間違いないでしょう。しかし、STEAM学習の定義がイマイチはっきりしていませんし、STEAMのような英語やカタカナ語は、日本の学習指導要領には馴染みません。従って、言葉を変えて、STEAM学習の要素や本質が反映されるのではないかと思います。

私としては、前回述べた通り、「創造的探究学習」として、「科学技術を活用した」「教科融合の」「創造(創作)活動」という要素が大事だと思っていますので、それらを包括した科目ができるといいな、と思っています。
現在の学習指導要領で一番近いのは、「理数探究」です。しかし、やはり「創造活動」の要素が弱く、理系の探究論文を書くようなイメージです。STEAM学習とするならば、もっと実技科目としての要素を強調したほうがいいでしょう。何か作品を作ることを出口(アウトプット)とした方がいいと思います。
また、理数探究ではなく、芸術科目にSTEAM学習の要素を反映させるのも一つの手だと思います。

ここで、以前(2022年10月25日)、私学マネジメント協会定例セミナーに登壇していただいた株式会社steAm代表取締役の中島さち子さんの言葉を引用させていただきたいと思います。
中島さち子さんは「創る=遊び×思想(アート)×具体(デザイン)」だとおっしゃいました。これは面白い整理です。
これからの学びには「創る」ことが大事であることは論を俟ちませんが、「創る」ということは、「遊び」と「アート」と「デザイン」の掛け算であると。まずは、特に目的もない「遊び」が「創る」の第一歩であり、とにかくワクワクするとか面白いということから始まる。そうして遊んでいるうちに、創りたいものが見えてくる。この「何がしたいか」ということが「思想」であり「アート思考」なのだと。しかし「アート」だけではアイデアに終わってしまうので、目的を明確にし課題解決的な「具体化」「デザイン」の段階にいたって、それが「創造」になるというのです。

学校教育はどうしてもはじめから目的を持ってしまいます。何かを学ぶために、科目が設定されています。「創る」ということが無目的な遊びから始まるのだとすると、学校教育には馴染まないのかもしれません。この相克をどのように解消するのか。ここにSTEAM学習を学校に根付かせるためのポイントがあるのかもしれません。「遊ぶように学ぶ」――なんだかワクワクしてきますね。

いくつかの学校で、何人かの先生が、STEAM学習に先進的に取り組んでくれています。そういった実践事例から学びながら、より良いSTEAM学習のあり方を探っていきたいと思います。そして、その集大成をぜひ次期学習指導要領に反映していただければと思います。

今後も、時々STEAM学習については、このブログで取り上げていきたいと思います。
6回にわたる連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。次回以降は、もう少し思いつきで自由にテーマを決めていきたいと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。2024年も御贔屓を賜りますようよろしくお願いいたします!

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