見出し画像

探究のお作法 「情報の収集」編

今回は、探究サイクルの第二段階「情報の収集」についてお話をしていきます。

自分の疑問から始めて、課題と仮説を設定したら、次はこの仮説を検証するための情報を収集することになります。

情報を収集するということは、調査をするということです。中高生ができる調査の方法は3つあります。
 1)文献調査
 2)アンケート調査
 3)フィールド調査

これらから「適切な調査方法を選ぶ」というのが、情報の収集のお作法その1です。適切に選択するために、それぞれの調査のメリット・デメリットをみていきましょう。

まず、文献調査です。ここにはインターネット上の情報も含んでいます。
以前は、インターネット上の情報は真偽がわからないので利用しない方がいいと言われていましたが、今は積極的に使った方がいいと言われることが増えたと思います。ただし、真偽が不明なものが含まれていることは確かなので、使い方には注意をしなければなりません。

Google Scholarのように論文だけをヒットする検索エンジンがありますので、そこからは引用に値する信用できる情報が検索できます。明確な論文形式でなくても、著作者が明記されているもの、運営会社が信用できるホームページなどであれば、中高生の探究においては参考にしてもよいでしょう。ただし、どこの誰が書いたのかわからないような知恵袋やSNS上のコメントなどは鵜呑みにしないように気をつけましょう。

やはり、文献調査の基本は、図書館にあるような書籍、論文、公的な報告書などです。最終的には、それらを参考にしたり、引用することを原則としましょう。

文献資料には、一次資料(生の情報等)と二次資料(情報等を加工して書かれたもの)があります。情報収集のはじめ頃には二次資料が参考になりますが、二次資料にはまとめた人の見方や考え方が反映されているので、徐々に一次資料にあたるようにして、そこから自分の「概念」で読み取りをしてオリジナリティを出せるようになるとよいでしょう。

調査には定量調査と定性調査があり、いわゆる数値で示すことができるのが定量調査です。定量調査は数値で明確に表されるので、説得力があります。
中高生の探究学習発表などをみると、よくアンケート調査結果が使われています。しかし、内容をみると、情報として正確性を欠くものが多いです。
たとえば、調査対象の偏りです。よくみるのは、自分の学校の生徒を対象としたアンケートです。
年齢や住居地域、家庭層などがかなり偏っていますので、それで日本全国一般を代表させることには無理があります。
また、サンプル数が少ないことにも注意が必要です。サンプル数が少ないと誤差が大きくなります。調査結果を比べる際に、「AとBに5%の違いがあります」などと言うのですが、サンプル数が少ないと誤差の範囲かもしれません。大学生になれば統計的に有意差があるかどうかを検定しますが、中高生ではそこまで行わないことがほとんどです。結果の読み取りには注意が必要です。

3つ目のフィールド調査は、中高生にとっては使いやすい方法です。主なものは実験・観察とインタビューです。理科系テーマであれば、実験・観察が有効です。もちろん実験手法が正しくないと、きちんとした結果を得られませんが、中高生なりの方法で実際に自分でやってみるということに価値があります。
また、文科系テーマであれば、インタビューはよい方法です。街頭調査のように不特定多数の人に意見を聞くのもよいですし、識者に意見を求めるのもよいでしょう。こちらも方法や内容によっては正しい結果が得られないかもしれませんが、自分で考えて活動すること自体に価値があります。

こういった調査方法を、それぞれのメリット・デメリットも踏まえて、いくつか組み合わせて、説得力のある仮説検証ができるとよいでしょう。

情報の収集のお作法その2は「より正確な情報を集める」ということです。
文献調査でいえば、インターネットより書籍や論文に、二次資料よりは一次資料にあたるということが、より正確な情報を集めるコツです。
アンケート調査では、偏りのないサンプルを、より多いサンプルを集めることが、正確な情報を集めるコツです。

そして、情報の収集のお作法のその3として「当たりをつけて絞る」ということを挙げておきましょう。これができるかどうかで、情報収集のスピードが異なります。
設定した仮説がかなり絞られているのであれば問題ないのですが、仮説が抽象的だと、収集する情報の範囲が広くなってしまいます。関連しそうな情報をやみくもに集めようとすると、膨大な量になり時間もかかってしまいますし、その後の過程で情報を整理・分析するのが大変になります。そこでやってほしいのが、当たりをつけることです。

当たりをつけるというのは、大体こうであろうと予測することです。その予測により、仮説検証の道筋をつけるということです。
当たりをつける方法は2つあります。1つは、そのテーマに詳しい人に話を聞いてみる、もしくは一番テーマに近い書籍や論文を読んでみるという方法です。書籍や論文には、その人が参考にした文献や引用した文献が記されています。次にそれらを当たれば、考察がより深くなっていきます。
もう1つは、ネット検索など簡単な方法で多くの情報に触れ、正確性はなくてもざっと理解することです。これがインターネット情報の利用のメリットです。真偽がわからなければそのままは使えないですが、自分の頭の中を整理するだけであれば、多くの情報にあたって当たりをつけて、道筋が絞られてから信憑性の高い情報で論理を組み立てていけばよいのです。

今回は少し具体的になり過ぎましたが、以上が私の考える情報の収集のお作法です。

次回は「整理・分析」のお作法に進みましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?