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探究のお作法 「課題の設定」編

今回は、探究のお作法の話をします。

探究には一定の型があります。茶道や華道に、この型だけは守らなければならないという動作の決まりがあるように、探究にもお作法があるのです。しかし、茶道や華道でお作法を守ることが目標ではないのと同じで、探究においても、型を守ることは目標ではなく、その上に自ら主体的に考え、自分のオリジナリティを発揮することが目標です。
しかし、まずは基本の型を身につけることが大事ですので、その説明をしていきましょう。

探究のサイクルである「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」という段階別に紹介します。

まずは、「課題の設定」です。

探究のための課題の設定は、まず生徒自身の疑問から始まります。小さな子どもの頃は、見るもの触るものすべてに疑問を持ったと思います。「なぜ、お空は青いの?」「なぜ、電車は速く走れるの?」「なぜ、猫さんは高い所から飛び降りても大丈夫なの?」

このような疑問こそ、学びの始まりです。
純粋な子ども時代は疑問をたくさん口にします。しかし、学校に通うようになると、知識は教えてもらうもの、知識をたくさん覚えていると偉い、という価値観が定着し、簡単には疑問を口にしなくなります。そして、そのうち疑問そのものを持たないようになってしまいます。中学生ぐらいになると、いざ疑問を持ちましょうといわれても、なかなか思い浮かばないようになってしまいます。

そこで、課題の設定のお作法その1は「疑問を持つ」です。抽象的な事柄について疑問を持つことは難しいので、実際に何かを見る(観察する)ことから始めるのがよいと思います。植物や動物の観察などはお勧めです。漠然と見ていると気づかないことも、よくよく観察すると発見することがあります。よく見れば大人でも不思議に思うことがたくさんあります。
これが疑問を持つということです。このように意図を持って疑問を持つことを練習しているうちに、疑問を持つことに慣れてきます。そうすれば、だんだん普段から疑問を持つ好奇心も生まれます。

そうやって発見した素朴な疑問をもとに、きちんと「問いを立てる」のがお作法その2です。
例えば、動物園で孔雀(くじゃく)を見て、「なんで孔雀の羽は大きくて派手なんだろう」という疑問を持ったとしましょう。動物園で話を聞いたり、関連する本を読んだりすれば、羽が派手なのは雄だけで、雌はそうではないということは直ぐわかるでしょう。地球の長い歴史の中で、動物は進化をとげて、いま生き残っている。そんな進化の過程にまで興味・関心を膨らませて考えて、「なぜ孔雀の雄は派手な羽を持つのか」という「問いを立てる」ことができれば上出来です。

「問い」の次には、自分なりの「仮説を設定する」ことになります。これが課題の設定のお作法その3です。
例えば「孔雀の雄は雌の気をひくために派手な羽を広げるのだろう。種の保存のために有用なのだろう」と、自分なりに仮に問いの答えを予想してみるのです。こうやって答えを予想しておくと、この後の過程にある「情報の収集」の範囲を絞ることができます。この仮説設定をしないと、作業が膨大になってしまい、探究が頓挫してしまいます。

長い期間かける探究においては、はじめの問いの設定が重要ですので、問い自体の検証を行う必要があります。初期的な問いと仮説をもとに簡単に調べてたりしながら、仮説の修正をします。試行錯誤しながら、小さな探究のサイクルを回すことで、改めて「問い」を固めることになります。こうして「問い」は正式に探究テーマである課題として設定されます。この「課題の設定」がお作法その4です。

この課題の設定次第で探究の成果の良し悪しが決まるといっても過言ではありません。それだけ課題の設定は探究において重要です。
では、適切な課題の条件とは何でしょうか。それは「自分がしたいこと」「自分ができること」「社会(他者)から求められていること」を満たしている課題です。京都市立堀川高校では、探究論文の序論に必ず自分以外の誰かにとってどのような意味があるか、という研究意義を述べるように指導しているとのことです。自分が興味あるだけではなく、社会で役立つことを探究することが、将来のキャリアにもつながり、探究としての深みも出ます。ぜひ、このような視点で探究課題の自己チェックをするよう生徒たちに促してほしいと思います。

今回はここまでにして、「情報の収集」におけるお作法については、次回にしましょう。

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