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STEAM学習--アートとデザイン

今回は、STEAM学習における「A」の重要性についてお話をしようと思います。STEAMにおける「A」は、「アート」や「デザイン」のことだという説(マエダ派)と、「リベラル・アーツ(一般教養)」だと捉える説(ヤックマン派)があることを第1回目でお話ししました。そして、私はどちらかというと前者=「Aはアートやデザインのことだ」に近い考えを持っています。
ということで、今回は「STEAM学習において、なぜアートやデザインが大切なのか」という話をしていきたいと思います。

「アートやデザイン」と並列に書きましたが、実はこの2つはまったく異なるものです。簡単にいうと、アートは「自己表現のための創造」であり、デザインは「問題解決のための創造」です。

アートは表現そのものなので、特に目的などなくても構いません。自己表現したものが見る人の心を打てば、それだけで価値があります。しかし、デザインには目的があります。プロのデザイナーであれば、顧客から注文を受けて、特定の目的を持った作品を創ります。プロでなくても、何かの目的を達成するために物事を組み立てていくのがデザインですから、その意味で、デザインは問題解決なのです。

では、STEAMには、アートとデザインのどちらが必要なのでしょうか。

STEAM学習においては、アートもデザインも両方必要だと私は思います。アート思考的なSTEAM学習においては、自分が持つ自由な発想を起点として創造をする体験をすることになります。一方で、デザイン思考的なSTEAM学習においては、世の中にあるニーズを起点として創造を体験するということになるでしょう。

アートやデザインといっても、必ずしもいわゆる絵やイラスト、デッサン、造形等のセンスやスキルの高さが求められるわけではありません。それは芸術科の授業で取り扱うことなので、ここでは自分なりのセンスやスキルで創造、表現すればよいのです。

先ほど、「アート思考的STEAM」「デザイン思考的STEAM」という言葉を使った通り、思考過程が大切です。あくまで学習ですから、アウトプットが大切なのではなく、アウトプットする過程において身につけたアウトカム(得られた成果、身につけた資質・能力)が大切です。アート思考やデザイン思考という思考法を身につけることが大事ですし、完成するまで粘り強く取り組む「グリット(やり抜く力)」や失敗を恐れずに試行錯誤を繰り返す「レジリエンス」といった非認知能力を身につけることが大切なのです。

いま世の中にモノがあふれています。既にモノを機能重視で選ぶ時代は終わり、感性で選ぶ時代になっています。北欧の家具がはやったり、スマホ市場でiPhoneが席捲したりしているように、ものづくりのキーはアートやデザインになっています。

STEAM学習が創造(ものづくり)を前提とする限り、このアートやデザインの視点は欠かせません。もちろん、アウトプットしたものがアートとしての価値やデザイン性が高いかどうかが問われているわけではありません。アート思考、デザイン思考を発揮する場面を学習過程に取り入れることが大切なのです。

それでは、続きは次回に。ありがとうございました。

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