ビューティフルマインドの持ち主たち 統合失調症を語る
最近、本を読むときに、
内容と共に、著者プロフィールが
すごく気になってしまいます。
どんな人生を歩んでこの本を書くに至ったのか。
そんな著者の積み重ねを感じながら、
自分自身も積み重ねを決意するつもりで、
本の書き手と出会う。
これも1つの読書の楽しみですね。
共育LIBRARYへようこそおいでくださいました✨
教育、人間、人生など、様々な「知恵」や「情報」が詰まった図書館のような、皆さんがくつろぎ、人生の「気付き」を得たり、知的好奇心を満たしたりできる居場所を目指しています😌
どうぞ、ごゆるりとお過ごしください。
共育LIBRARYりょーやん、元教師です。
統合失調症。
この名前を、
一度は聞いたことがある人が
多いのではないでしょうか。
この症状をかなりクローズアップした映画があります。
そのタイトルは、
『ビューティフル・マインド』
ノーベル経済学賞を受賞した、
ジョン・ナッシュの実話をモデルにした映画です。
作中のジョンは、
様々な妄想に取りつかれるようになり、
幻覚を見始めます。
これを聞くだけでも、
この統合失調症がどういうものか、
少しは伝わるのではないでしょうか。
統合失調症は、
発達凸凹とも関わりのある、
多様性という点において、
欠かすことのできない症状の1つです。
よって、
記事にまとめていきますが、
センチメンタルな内容でもあるため、
コメント欄はクローズでいきます。
決して珍しい症状ではないので、
一人でも多くの方に知っていただきたいです。
途中でスケープしても、もちろん大丈夫です。
透き通るような感性と優しさの持ち主
精神科医であり、
山形大学客員教授である岡田尊司さんは、
統合失調症の症状をもつ方々を
「ピュアな感性の魅力」
と表現しています。
「自分自身、その透き通るような感性と優しさに、救いを感じてきた一人である」
そのように語っているのです。
それぐらい、
純粋な感性をもっている人がなる症状。
映画のジョン・ナッシュを思い浮かべれば、
それも納得かもしれません。
岡田さんは、
『統合失調症 その新たなる真実』
の中で、
「宇宙からのメッセージを聴く若者」
という事例を紹介しています。
ある日突然出会った、
涙を流しながら岡田さんのもとを訪れた若者。
若者は岡田さんに
「宇宙の星から声が聞こえる」
と伝えてきます。
「すべての人間の悲しみが、押し寄せてくるのだ。どうか、苦しめないでほしい」
そう言うのです。
岡田さんは、
「彼はまるで全人類の苦しみを一人で背負っているようだった」
と記述しています。
あまりにも、無私無欲すぎる若者。
我欲というものをほんとうにわずかしかもっていない。
彼のあまりにも純粋な感性に惹かれつつも、
岡田さんは統合失調症の治療を始めていったのです。
統合失調症だった著名人
統合失調症は、
100人に1人なる疾患と言われています。
決して、
少なすぎる数ではありません。
あなたの周辺にも
存在し得る症状なのです。
そんな事実を匂わせてくれる
当事者であった著名人を紹介します。
例えば、芥川龍之介。
彼は32歳の頃から、
不眠症や神経衰弱の症状が現れ始めて、
それが統合失調症の症状へと発展していきました。
彼自身が残している手記を掲載します。
本当は、もっと幻覚症状が
はっきり分かる部分もあるのですが、
食事中の方がいるかもなので止めておきます。
芥川龍之介の母親は、
彼を生んで八ヵ月後に統合失調症を発症し、
回復しないまま、
十一歳のときに亡くなっているそうです。
今度は国外の人物。
画家のムンク。
学校の教科書にもよく載っている
「ムンクの叫び」
という絵があります。
あの絵は当時、
統合失調症が発症し始めたムンクが、
己の存在が足元から溶けていくような
恐怖におびえた様子を描いたものだったそうです。
筆者はそのことを知りませんでした。
そういった精神世界を描いた意味でも、
歴史的に価値の高い評価になったのかもしれませんね。
きっと他にも、
統合失調症の苦しみを表現した
画家や音楽家、小説家といった
表現者は数多くいたのでしょうね。
統合失調症の症状
障害の重みづけという指標で、
各症状の精神的な負荷の高さが
数値化されています。
うつ病では、
中程度のうつ病 → 0.406
重症うつ → 0.655
という数値。
対して統合失調症は、
統合失調症残遺期 → 0.576
統合失調症急性期 → 0.756
となっています。
つまり、
統合失調症の方が、
全体的にみてうつ病よりも重いのです。
そんな統合失調症の診断基準は、
DSMー5では以下のように記載されています。
(アメリカ精神医学会の診断基準)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
①妄想
②幻覚
③まとまりのない発話
④ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動
⑤陰性症状
(生き生きとした表情が見られなくなる症状)
幻覚、妄想、まとまりのない発話の
3つのうち1つがあることは必須
5つのうち2つ以上の症状が、
1ヵ月の間持続していることが基準
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
統合失調症の症状は、
大きく分けて3つに分類することができます。
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
【陽性症状】
・機能が過剰になったり歪んだりする
・妄想や幻覚、奇異な行動 など
【陰性症状】
・活動性の欠如、行動欠損
・意欲喪失、感情の平板化 など
【解体症状】
・まとまりのない会話や行動 など
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
それを踏まえた上で、
統合失調症は幾つかの「型」に分類されています。
その型によって、
発症年齢が違ったりするのです。
主たる3つの型を記載しますね。
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
【妄想型】
・30歳前後で発症することが多い
・幻覚や妄想状態が主
・被害妄想、誇大妄想 など
・生活能力やIQが高い場合が多い
【解体型】
・10代後半から20代で発症が多い
・幻覚や妄想はあまり目立たない
・学校や職場での能力の低下
・年齢よりずっと若い十代のような雰囲気
【緊張型】
・20歳前後に急激に発症
・激しい興奮や全く無反応な状態が急激に出現
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
ではここからは、
「なぜ統合失調症になるのか」
という、
幾つかの有力な説を紹介しますね。
統合失調症の原因仮説
ここから記載するのは、
あくまで仮説ですので、
その点はご注意ください。
様々な仮説があるのですが、
この記事では3つの仮説を解説します。
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
❶ ドーパミン仮説
❷ 異常セイリエンス仮説
❸ 神経発達障害仮説
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
❶ドーパミン仮説
ADHDの低覚醒の理由として、
ドーパミンが少ないことがあげられます。
統合失調症の原因となる仮説は、
その逆です。
ドーパミンが過剰分泌されてしまう説が
有力とされています。
ドーパミンが過剰に分泌されると、
色々な機能が過剰に働きます。
そのような症状にとって、
妄想、幻覚などの陽性症状が発現する。
そして、
過剰にドーパミンが分泌されると、
ドーパミン受容体は、
「こんなにいらないよ」
と反応体の数を減らして、
反応を抑えるようにします。
すると、段々とドーパミンに
反応しなくなっていくのです。
もしくは、
過剰な興奮によって神経細胞がダメージを受け、
反応低下や機能低下を起こします。
これが陰性症状です。
この説を
京都大学大学院医学研究科の、
村井俊哉教授は、
異常セイリエンス説として発展させています。
❷異常セイリエンス説
私たち人間には、
選択的知覚という能力があります。
無意識的に、
自分が注意を払いたい刺激を選び、
それ以外の刺激を弱めて
物事を見たり聞いたりしているということです。
カクテルパーティ効果といって、
想像しいパーティの中でも、
周囲の人の会話に集中して聞き取ることができるように。
しかし、統合失調症の場合は、
全ての情報を同じ大きさで受け取ってしまい、
選択ができないという説です。
この情報の顕著さを示す言葉がセイリエンス。
そうなると、
離れた距離で小声で話していることも
大きく聞こえてしまいます。
まるで、周囲の人が、皆、
自分のことを噂していると錯覚してしまっても
おかしくありません。
また音の大きさの選択ができないなら、
体の内側の頭の中の声も、
非常に大きく聞こえるかもしれません。
そのような自分内と、
外界の声が顕著であるために、
境界線が感じられなくなってしまい、
自分の考えを読まれているように感じたり、
人の考えが雪崩れ込んでくるように感じたりしてしまうのです。
❸神経発達障害仮説
これは冒頭で紹介した
岡田尊司さんが提唱している仮説ですが、
おそらく神経症と発達障害を
被せた説にしているのでしょう。
本来は、
発達障害=神経発達症なので、
一見すると混乱しかねないので、
名前について触れておきました。
統合失調症を発症する人の
子ども時代の様子を集約し、
神経発達症の子どもとの特徴と比較すると、
統合失調症の人の3割が、
神経発達症の症状と同じ特徴をもっていたそうです。
岡田さんの個人の経験では、
統合失調症と診断される人の、
3分の1~4分の1の人は、
神経発達症の特徴が見られるそうです。
統合失調症にも、
閉じこもってしまうような
自閉の傾向が見られるので、
どちらかというとASDと親和性がありそうです。
治療方法
統合失調症の治療は、
入院や薬物療法が主たるものと言えます。
現在はかなり
薬の効果も発揮されるようになってきて、
当事者の20%は、
人生のうちたった一度症状が出ただけで、
ほぼ正常な状態に戻るそうです。
60%以上は、
複数回の再発を経験しますが、
以前のレベルに戻ると言われています。
それだけ、
薬物療法も進歩してきているのです。
ただ、薬を飲むのを欠かしてしまうと、
退院後の再燃率は、
27%から64%へと一気に上がります。
自分の判断で勝手に投薬を止めることは、
止めた方がいいでしょう。
他にも認知行動療法のアプローチもあります。
また、周囲のサポートも必須です。
ASDの過敏性と一緒で、
自分のことを受け入れてくれていて、
いちいち症状のことを気にしない人たちと共にいると、
かなり落ち着いた状態で
日常を送れるそうです。
逆に、
世間体を気にして本人に様々な指摘をしたり、
疎外するような雰囲気を出していると、
症状はなかなか落ち着かないでしょう。
まとめ
現在は
医学的にも様々なことが分かってきて、
精神疾患に対しての世間の風当たりも少なくなってきました。
治療薬も進歩し、
多くの場合に症状を改善させることが
できるようになっています。
ただ、この時代に至る前は、
様々な差別的な歴史があったことも事実。
現在も、
まだ完全に差別的な扱いが消えているわけでは
ありません。
これまで迫害されたり、
差別されたりしてきた人の思いを無駄にしないためにも、
今生きている人たちが、
理解と改善法を、
さらに一歩でも深めて、
未来にバトンタッチしていく必要があると思っています。
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いつもいつも、最後まで読んでくださり本当にありがとうございます!
明日の記事は、
📓あなたはどの脳タイプ?心理学で先延ばしをストップ!
です。
油断しているとついついやってしまう
先延ばしのクセ。
それをどう防いでいくのかを、
心理学の観点から解説します。
是非、楽しみにしていてください🎵
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