見出し画像

2024種親No.1候補ペア

 近頃は春早くにペアリングして産卵Setを組む猛者ブリーダーも多数いらっしゃるようですが、当家では常温飼育ですので、暖かくなって気温が成虫の活動域になってから、やっとペアリングという段取りです。というか、我が家の立地が涼しい処だからなのか、例年、ゴールデンウィーク頃というのはまだ早くてですね、そのままの気温では♂・♀共に「掛からない」のです。で、これもちょっとしたテクニックと言いますか、常温と言いつつの列記としたズルなのですが、いつもはお湯で温めてペアリングさせているんですよね。
 今、声が聴こえましたとも。「え、お湯?」と。「風呂にでも入れるのかよ?」と。まあ、それに当たらずと雖も遠からず。では、具体的にどうするのかと言いますと、沸騰させて少し冷ましたお湯をマグカップなどに注ぎ入れます。その上にペアリングする成虫を投入したPP容器などを乗せる。これだけです。要するに、簡易サウナですね。二、三分もしますと体が暖まってくるので活性して覚醒し、交尾してくれます。ウチはこの手法で毎回100%目視確認でペアリング成功してます。"no guesswork"で確実です。そして、その後は即、その当日に♀は産卵開始しています。なので、別途飼育ケース等の準備の必要性があり、日数も掛けた上に、しかも、リスクの伴う同居飼育とかは一切実施しておりません。そんなものは飼育者の自己満足に過ぎず、非合理的です。
 このペアリングの失敗の原因についても、通説ではいろいろ言われていますが、ハッキリ言いますと、♂・♀両個体が健常で成熟さえしていれば、あとは単純に環境温度が彼らが活性する気温(温度)にジャスト・マッチしているかどうかだけの問題なのです。それだけです。相性とかへったくれもないです。
 ただし、この人工サウナ法は、マグカップ内の湯面から上のペア成虫らの居るケース内の底面との距離は嵩上げするなどして十分に余裕を取って、容器内の温度が熱くなり過ぎないように重々注意します。目安の温度帯としては、だいたい25 - 35℃でしょうか。早い話が、市販の爬虫類用などのヒーターを使えば良いのですが、そんな物を買ってくるまでもなく、どこの家にも在るであろうマグカップにお湯だけで簡易に代用できますよってことです。わたしがいつも言っているように、他人の猿真似で思考停止するな。金や手間を掛ける前に、先ずもって自分の頭を使うべし、ってことです。

アヴァンギャルド・ペア

 で、今年に限っては我が家でも春から暖かくてですね、オオクワガタたちも例年よりも活動開始が一ヶ月ほど前倒しの様子で、成虫たちは早くもゼリーを食べだしてるんですよね。あれれ、これはいつもと違うぞ、と。それで、今年2024年のKYOGOKU血統ブリード・ラインの種親候補の様子を見てみました。

ワイルドに紙を食べさせて74mm

 74mmの当家レコード・タイの♂で、2021年初令採集、がっつり2年化の昨年、2023年羽化の京都市産ワイルド個体でいきます。大変バランスの取れた体躯だと思います。大顎の内歯の内向き角と出幅が少なく、前方向きなので一本歯に見えますよね。京都市産の大歯型は大体似た傾向で、殆どが前方向き傾向なんですよね。
 そして、この個体には秘密があって、なんと! 前期はオリジナル・アスペン・チップ/ウスヒラタケ菌糸、後期は、同じくわたしのオリジナル仕込みパルプ/ウスヒラタケ菌糸で育て上げた個体なのです! その結果、ワイルドでも74mmが出せたということなんですよね。それはどういうことを証明したのかと言いますと、培地はブナでもクヌギでも、広葉樹のオガでなくとも、紙でもちゃんと問題なく育つということなのです。つまり、純粋に餌材としての炭素源に関しては、樹種に拘る意味はまったく無いってことを実証した個体なのです。

♀ワイルドにも紙を食べさせて44mm

  ♀も同じく、オリジナルのパルプ培地ウスヒラタケ菌糸で育てて44mmに羽化できた個体にします。これも当然ながら京都市産ワイルドで、2022年3令幼虫採集の昨年羽化個体。前胸背板は見事にディンプル皆無でトゥルットゥルです。
 普通、採集3令幼虫は菌糸瓶で育てても大きく成長させるのが非常に難しいのですが(特に♀)、この個体は例外的に大きく羽化してきたんですよね。それでもう、「ブナとかクヌギとか、そんなの幻想。ぜんぶ嘘。関係ねえー」となったわけです。まあ、業界定説至上主義者には到底受け入れられない話でしょうし、どうでもいい話なのだとは思いますが、これがリアルなのです。
 勿論、当家ではインライン・ブリードはしない主義なので、♂・♀別親由来の、このアヴァンギャルドに育てたアウトラインで2024年最初のペアリングをすることにします。

実験魂が萎えることはない

 これらどちらの個体も、パルプ培地菌糸で育てるなどという、わたしの無謀とも云える素人実験魂に応えてくれた優秀なワイルド幼虫だった個体です。しかも、ちゃんと羽化後に冬眠も済ませ、お目覚めもよろしく、健常で元気。まったく問題ありません。
 そこで、産卵Setなのですが、またしても新たな実験をしようと思いつきました。先だって培養に成功したワイルド・オオクワガタ共生酵母菌なのですが、早速、あれを使用した試験を実施しようと思います。
 と言いますのも、産卵材については、今回は市販の廃ホダ木にウスヒラタケを植菌したものを予め用意しているのですが、材由来と考えられるカビが生えてきているんですよね。まあ、カビに関してはわたしは特に大きな問題にはしてはいないのですが、いや、これ、ちょうど良いではないかいな、と。共生酵母菌を培養した溶液なんですが、あれ、酵素が山盛りなんですよね。酵母の分解酵素が溶け込んでいるわけです。なので、今回はこの酵素のみの使用で、酵母菌は使いません。というか、菌自体も溶液に含まれてはいるのでそれで十分なのです。で、「この溶液を材のカビにぶっかければカビ、死ぬんでね?」と。まあ、こういう思いつきです。
 実は、以前には産卵木を日本酒に浸す実験もしたのですが、これも産卵は見事に成功はしてるんですよね。つまり、♀はグルコースとアルコールに反応するわけです。でも、暫くすると、やはり材の表面がカビてしまうので、その実験はその一回限りで、その後に当家では実用化はしませんでした。それでですね、カビには酵母菌の分解酵素が一番効くんじゃないだろうか? ということです。おそらく、「♀が産卵を開始しだすとカビが消えてゆく」というのも、つまりは、♀親が体内に保持している酵素による作用だと思うのですよね。
 まあ、これを今回は試してみようと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?