菌糸瓶に足りないのは発酵 - 2
画像や動画から匂いが感じられるような技術は未開発ですから、こうして文語表現で何とかせざるを得ないわけですが、本当に、腐朽材から発散されるあの香りを一度嗅いだら、忘れられないと思います。それくらい芳醇で濃密なのです。そんな香りが枯れ木の中からしてくるなんぞ、思いも寄らぬことでした。そして、それが酵母菌による発酵臭なのだと確信できるにはかなりの時間を要しましたが、今や、わたしの手元にはその証拠である、単離培養液があります——ワイルド・オオクワガタ共生酵母菌(京極株)——です。