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中古で何が悪い! - リサイクル魂炸裂

 先日、採集レポの動画と記事をUPしましたけれど、noteもYouTubeも、アナリティクスを見ますと、他のテーマ系よりも断然、採集系の投稿の方が人気高いんですよね。圧倒的に閲覧数が急上昇します。やはり、一度は自分もこの手でワイルド個体を採集してみたいという欲望をお持ちの方が多いからなのでしょうか。それとも、ノン・フィクション感が良いのかな? いや、ただ、小難しいのが苦手な人が多いだけということでしょうね、きっと。
 で、いつもの文字数が多くて小難しいの、いきますよっ!(笑)

手詰め半年もの - 中古ウスヒラタケ菌糸cup

 さて、この200cc菌糸cupは、わたしの手詰めのクヌギ・オガのウスヒラタケ腐朽ものなのですが、元の未使用1次発菌培地を崩しては崩してを繰り返し、3次発菌までさせたものをこのcupに手詰めし、4次発菌ものとして完成品とし、今年の京極ブリード・ラインの孵化初令幼虫の初期餌用として使用したものです。当時の仕上がり状態は最上級レベルでした。そして今現在、製作から既に半年が経過しようとしているものです。
 今から3ヶ月ほど前に、このcupに投入した初令幼虫が3令に加齢したのを見極めて、cup容器から丸ごと中身の培地を取り出し、ウエディングケーキよろしく真っ二つに割って(というか、実際は両手で捻って割って)中の幼虫を取り出して新しい大型の菌糸瓶に移動させた後、幼虫の食痕諸共それら断面を元に合わせてそのままcup容器に再び戻して蓋をし、放置しておりました。

京極ブリード・ラインの孵化初令幼虫の初期餌用として使用した4次発菌もの

 それが、今年8月上旬頃のことです。そうしますと、割った断面は、あら不思議、菌糸の膜で数日後には元どおりになり、食痕にも菌糸が廻って再生されたのです。その際、何故、このように保管したかと言いますと、貴重な実験検証の材料としてのサンプルです。
 で、先日、10月24日にお山で野外採集して持ち帰ったワイルド幼虫たちを、これらの使用済み中古菌糸cupに順次投入しました。この、既に幼虫飼育に約3ヶ月間使用した後に、また更に約3ヶ月放置の中古品に、です。好都合なことに、更なる実験検証検体が得られた、というわけです。

ワイルド幼虫の人工餌材への適応性を観察する

「いやあ、京極さん、それは幾らなんでもしみったれてケチ過ぎるってぇえもんじゃぁあござんせんか」とおっしゃる向きもあろうかと思います。……しかしまあ、それはそれで酷い申されようですな。けれども、わたしに言わせれば、「あなたさまのほうこそ、それ、大きな間違いでございますわよ」と。

リサイクルの条件とは

 オオクワガタ幼虫用餌材としての菌糸瓶に関するわたしの仮説と言いますか、今や持論ですけれども、——活性のある白色腐朽菌を使用した良質な菌糸瓶はリサイクル可能である——ということです。これは、わたしのこれまでの野外採集に於けるオオクワガタ幼虫が生育していた天然腐朽材の数々をこの目でを具に観察して得ての仮説によるものでして、本来の天然餌材環境に近く、しかし、栄養価はそれよりも高い、良質なオリジナル餌材(菌糸瓶)開発を目指した一連の実験検証なのです。実際、天然腐朽材中では、そのメカニズムが成立しているのです。
 おそらく、今、読者諸氏が抱かれているのであろう、わたしのこの持論に対するみなさんの不協和音的不理解の原因は、偏に——刷り込み・思い込み——によります。それは、言うまでもなく、思考停止のアホ業者&アホ・ブリーダーたちによる無エビデンスの通説が原因です。まあ、そのような愚者ではないわたしからすれば残念ではありますが、そういう偽説を疑いなしに鵜呑みにする方々に措かれましては個人のご自由ですので、もう、それはそれでよろしいのではないかと思いますので、何もそれに対して声を大にして申すことはございませんで、ただただ、わたしは独自の研究による実験検証結果をこうして発表しているのみです。各々、それを参考になさっての評価は、まったく、みなさんのご自由なのです。
 話を戻します。この実験検証は、——どのようにすれば、天然腐朽材に近い良質な菌糸瓶餌材を製作・維持管理できるのか——という、大変アヴァンギャルド(先進的)且つ、プラクティカル(実用的)な実践方法を編み出さんがためのものです。これまでの過程で解っていることを挙げますと:

  • 活性の強い(生命力の強い)白色腐朽菌株が必要である

  • 活性温度帯の広い白色腐朽菌株が必要である

  • 培地内環境を低C/N比に偏らせない

  • 培地内環境を低pHに偏らせない

  • 空気中のバクテリアを培地内(食痕)に必要以上に増殖させない

 ——ということが必須条件としてあります。最低限、上記の環境を菌糸瓶内で維持管理できさえすれば、白色腐朽菌と幼虫との良好な共生環境が成り立ち、培地が最終的に無機化するまでリサイクルが繰り返し行われるとわたしは考えています。具体的には、幼虫の食痕(糞)が白色腐朽菌によって再発菌分解され、それがまた幼虫の餌になるというリサイクルのループです。
 市販菌糸瓶を使用した飼育方法の悪手は、——使い捨て主義——であるということです。その根本にある発想が、幼虫の大型化生育であり、その目的に固執するあまり、高栄養剤添加による培地の低C/N比が元凶となって培地の劣化が発生し易く、最終的には健常だった菌糸培地も食痕も腐敗し、廃棄せざるを得なくなるものです。
 しかしながら、そういった市販品であっても、使い方次第でそのような劣化を抑制し、リサイクル可能であることが実験で判ってきています。わたしの目的はなにも、高経済的効果——ケチケチ主義——の達成ではありませんで、本質的な主題はあくまでも——幼虫を健全に大きく育てることのできる餌材——の独自開発なんです。そして結果的に、リサイクル菌糸瓶を使用した幼虫の方が優位に大型化するという結果が表れているというだけのことなのです。
 反対に、使い捨て使用法との合わせ技的悪手が、菌糸瓶交換時の旧菌糸瓶内からの幼虫の食痕の導入であり、それによるバクテリア増殖によって培地の劣化が促進され、すべてが台無しになってしまうのです。これも、業界に罷り通る通説の刷り込みと思い込みによる弊害と言えるかと思います。

高次発菌リサイクル現象

 是非とも、これをご覧くださいましな。

幼虫投入後僅か3日で6次発菌中

 既に先日採集したワイルド2令幼虫入りで、この幼虫が移動した痕跡は食痕(糞)ではなくて、ただ、幼虫が噛み砕いて詰め直しながら移動した痕です。そこにもう既に再発菌(6次)していますよね。そして、元は明るめの褐色だった培地のオガ色がここに来てやっと白色化しています。これは、リグニンが本格的に分解され始めたという証です。つまり、白色腐朽菌は添加剤の窒素源を先に分解しますので、その運用(分解吸収)が終了して、やっと本来の木質(炭素)を分解し始めたところと判断できるわけです。要するに、白色腐朽菌にとっての栄養源はまだ培地に残っているため、菌の活性は弱まっていない状態です。白色腐朽菌の名の所以である木質の「白色化」が実質的にやっと始まったところなのです。ですので、この菌糸cupの培地は今、天然材に非常に近い環境に至っている状態だとわたしは考えています。

実は品質最上級品

 勿論、リサイクル培地は菌と幼虫に分解消化吸収されて徐々に物理的に目減りしてゆきますので、事実上、最終的な無機化まで100%使い切ることはできないとは思います。しかし、餌材としての内容は凝縮化されており、実は非常に上質(高栄養)なものなのです。
 このリサイクル菌糸瓶の製作方法(と言うか、維持管理方法)の条件、及び手順ですが、成功には腐朽菌の生態に関する専門的な知識も必要なので、克服すべき困難さは多少、無きにしも非ずです。つまり、上述した幾つかの必須ポイントはあくまで最低限度のものでして、他にもコツと言いますか、配慮しなければならないポイントは多数あります。けれども、メインストリーム的手法からは大きく逸脱した、このような飼育材と手法について本心から興味をお持ちになる方は少ないと思いますので、故にここにすべては記述はいたしません。
 また、独自研究の成果として、実際にこのリサイクル菌糸瓶使用での結果(大型成虫作出)を出すことがわたしにとっては最も重要だとも考えておりますので、それまでは解説も控えめにしておきたいとも思っています。
「でっかくなるのが判ってから慌てて問い合わせてきたって、相手にしてやんねえかんなっ!」(笑)

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