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記者が中学校に出前授業、「幽霊っていると思いますか?」質問浴びてタジタジに

こんにちは、大阪社会部記者の野澤拓矢のざわたくやです。

「記者の仕事について、ぜひ中学生に話をしてくれませんか」

私のいる大阪社会部にそんなお誘いの電話がかかってきたのは、今年の6月か7月ごろでした。

連絡をくれたのは大阪市立港南中学校の先生です。情報提供の電話を受けることはありますが、このような依頼はなかなかありません。

数ある報道機関の中でもなじみの薄いであろう共同通信をどう紹介するか。不安はありましたが、認知度向上のチャンス!と同僚たちの後押しを受けて9月、中学校にお邪魔することになりました。


いざ、生徒の待つ中学校へ

港南中学校では毎年、将来の夢を考えるきっかけにしてほしいと、さまざまな職業の方を招き、中学1年の生徒を対象に「職業講話」を実施しているそうです。

私を含め8業種が、講師として招かれ、中学生に向けてそれぞれの教室で授業を行います。案内された待合場所には警察官や鉄道会社の社員、看護師の姿がありました。どれも人気の職業ばかり…

大丈夫?共同通信…浮いてない?

記者の仕事って?

緊張しつつ教室に入ると、20人ほどでしょうか。目を輝かせた生徒の皆さんが出迎えてくれました。

いきなり共同通信の話はとっつきにくいはず。まずは記者全体の話をしてみました。

「皆さんはどんなニュースに関心がありますか」

なかなか声は上がらず、皆さん少し困った様子。

「大リーグで大谷選手の活躍が話題ですよね。」

ちょっと助け船を出してみると、ウンウンとうなずく生徒も。

「世の中で起きているあらゆることをまだ知らない人に伝える。それが記者の仕事です」

どのような媒体から情報を得ているのかも聞いてみました。やはりインターネットやテレビといった声が大半。「新聞を読んだことがあるか」という質問には20人中2人という結果でした。まだ多い方かもしれません。これからどうメディアが生き残っていくか。改めて課題を突き付けられたような気がします。

報道への信頼

正確なニュースを届けるために記者がどのように「裏取り」をしているのか。「当事者(本人)に話を聞く」といった取材の基本を説明しました。生徒の皆さんは幼いころからインターネットで膨大な情報に接してきた世代。記者の仕事を知ることで、日常で触れる情報が正しいかどうか考えるきっかけになればいいなと思っています。どのように感じてもらえたでしょうか。

「うそか本当か分からない、さまざまな情報が飛び交う時代だからこそ信頼できる報道が必要だと思います」

こんなことを言ってしまいましたが、メディアに厳しい目が向けられているのも事実です。人々の信頼に応えられているかどうかは日々問い続けなければならないと思っています。

やりがいは反響の大きさ

こうしてようやく共同通信、そして私の仕事を紹介する入り口にたどり着きました。

生徒に共同通信を知っているか聞いたところ、やはり誰も知らず…無念。

共同通信の記事が全国の新聞社やテレビ局、ラジオ局に配信されていることを説明しました。

そして私の仕事も少しだけ紹介。私が取材し記事にした、競馬業界の持続化給付金不正受給問題を取り上げました。新型コロナウイルスがまん延していた2020~21年、コロナの影響を受けていない競馬関係者が国の持続化給付金を受け取っていた問題です。できるだけ分かりやすく伝えたつもりでしたが、少し難しかったかもしれません。

問題をまとめた記事はこちら。

配信記事が国会で取り上げられ、日本中央競馬会(JRA)が受給実態を調査。計1億円以上を不適切に受け取っていたことが判明し、返還へとつながりました。

「自分の書いた記事がきっかけで物事が動き出す。反響の大きさはやりがいです」

生徒の皆さんが熱心にメモを取ってくれていたのが印象的でした。仕事の魅力が少しでも伝わっていればいいなと思います。

予想外の質問

ここで、質問を受け付けることに。生徒から次々と手が上がりました。

「幽霊っていると思いますか?」

1人の男子生徒からの質問でした。

いきなり予想外で驚いてしまいましたが、よくよく聞いてみると、心霊現象に関心があり、取材してみたいとのこと。

「大丈夫。記者はどんなテーマも取材できます」

ゆくゆくは心霊現象ジャーナリストとして名をはせるかもしれませんね。

それ以外にこんな質問も。

「夜討ち朝駆けはありますか」

夜討ち朝駆けとは、帰宅時や出勤時をねらって取材先に接触することを指す業界用語です。

…でも君、どうして知ってるの?

「記事を書くのにどれくらい時間がかかりますか」
「中学生のときの将来の夢は」
「記者の仕事は寝られますか」

質問する側から質問を浴びる側に。45分間の授業が終わるぎりぎりまで質問の手が上がりました。もう生徒一人一人が小さな記者です。時々返答に窮しながら、私の拙い授業が幕を閉じました。

終わりに

後日、先生が授業を聞いた生徒の感想を送ってくれました。みなさん授業に満足していただけたようです。

「世の中に正確に伝えることに誇りを持っていることを教えてくれて興味を持ちました」

1年4組大西琥さん

「野澤さんが書いた記事が半年かかったと聞いてびっくりしました。私は将来の夢がないので、お話しが聞けてとても参考になりました。これから私も夢を探したいと思います」

1年4組筒井奏乃夏さん

さまざまな人と会う記者も中学生とこのように話をする機会はほとんどありません。生徒たちが報道をどう捉えているのかを知るとても良い機会でした。また、この授業をきっかけに生徒が記者を目指すとまではいかなくても、報道の仕事に興味を持ってくれたら嬉しいです。お話しを持ってきてくださった港南中学校の先生方、ありがとうございました。

Instagramで授業の様子を公開しています。ぜひご覧ください。フォローもよろしくお願いします。


野澤拓矢(のざわ・たくや)=2017年に入社し和歌山→大阪社会部。大阪府警や地検などを担当。千葉県出身。特技は飲み会の幹事。

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