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万博パビリオンの歩き方

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「2025年の大阪・関西万博って、どんなパビリオンができるの?」 このマガジンは、そんなあなたの疑問を“少しだけ”解消するために作られました。 開幕は2025年4月。海外の国…
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#一度は行きたいあの場所

「万博パビリオンの歩き方」始めます!

2025年大阪・関西万博開幕まで500日を切りました。共同通信大阪支社では、普段は大阪の行政や経済を担当している記者が中心となって万博についても取材をしています。 万博を巡っては、2度の会場整備費の上振れや、海外パビリオンの建設遅れなど、マイナスイメージのニュースが多いですよね。取材する私たちも、次々と舞い込む「バッドニュース」に忙殺される日々です。政府や大阪府・大阪市が主体的に関わり、多額の税金が投入される万博について、課題や税金の使われ方を取材するのは、報道機関としての

破壊と再建から生物多様性を描く~ブラジルパビリオン~

こんにちは。今日は日本から地球のちょうど反対側に位置するブラジルのパビリオンについてご紹介します(冒頭画像は©Bia Lessa team)。 ブラジルは当初、参加国が自前で建設するパビリオンの「タイプA」を希望していました。ですが日本との時差や距離がネックとなり、2025年4月13日の万博開幕までに完成が間に合わない恐れが浮上。昨年11月、日本国際博覧会協会(万博協会)が建設を代行する簡素なパビリオン「タイプX」への移行を表明しました。移行により、フロアは複数から一つに絞

「生まれ変わり」を体験、大阪ヘルスケアパビリオン

大阪府と大阪市は2050年の都市生活を体験できる「大阪ヘルスケアパビリオン」を出展します。テーマは「生まれ変わり」を意味する「REBORN(リボーン)」。健康や医療分野の最先端技術に触れることができます。*冒頭のイメージは提供:(公社)大阪パビリオン 場所は、会場最寄りの地下鉄・夢洲駅を降りてすぐの好立地です。メインの「体験ルート」では、来場者はまず心血管や筋骨格などの健康データを測定。データから予想される25年後の姿をした自分のアバター(分身)と対面します。そして、協賛企

帆船モチーフ、白い幕で包まれたカタールパビリオン (隈研吾さん設計!)

カタールはアラビア半島にある中東の国です。首都ドーハは、日本のサッカーファンには「ドーハの悲劇」(さらには「ドーハの歓喜」)でおなじみです。 木造の建物全体を真っ白な幕で包むデザインのカタールパビリオンは、ダウ船と呼ばれるカタールの伝統的な帆船がモチーフです。設計したのは東京の国立競技場を考案した建築家隈研吾さん。隈さんは「ペルシャ湾に面したカタールは、日本と同じ海に近い国。両国を象徴する船をモチーフにした」と4月に行われた起工式で話しました。 パビリオンは池に囲まれ、ま

赤い糸が結ぶ「愛の賛歌」~フランスパビリオン~

ボンジュール! 今回お届けするのは愛と美食の国、フランスパビリオンです。(冒頭画像は©Coldefy & Carlo Ratti Associati)。 パビリオン紹介の前に、ちょっとした豆知識をご紹介。みなさんはフランスの一大観光名所であるエッフェル塔が、万博をきっかけに作られたということをご存知でしょうか。 フランスで初めて万博が開催されたのは第1回のロンドン万博から4年後の1855年。そして、フランス革命100年を祝う年である1889年のパリ万博に向けて建築されたの

砂漠に覆われた「神秘」の国がもたらす出会い~トルクメニスタン館~

中央アジアに位置するトルクメニスタンは旧ソビエト連邦を構成していた国の一つです。 パビリオンは3階建てで、黄色や緑の電飾が華やかに外装を彩ります。国土のほとんどを覆うカラクム砂漠の自然をイメージしています。大きな白馬をあしらったがデザインが印象的です。 国力を支えるのは豊富な天然ガス。首都アシガバートにもパビリオンさながらの白亜の大理石建造物が建ち並んでいます。荘厳な街並みは、近未来SFのようです。 大統領による強権的な国家運営で「中央アジアの北朝鮮」と呼ばれることもあ

巨大スクリーンでK-POP鑑賞も~韓国パビリオン~

今回紹介するのは、日本でもなじみ深い韓国のパビリオン。最近は文化や料理だけでなく、音楽(K-POP)やファッションの分野でも注目が高く、旅行先としても大人気ですよね。 筆者の私も実は大の韓国オタク。落ち込んだときには弘大(홍대、韓国・弘益大学)近くのライブカメラを動画サイトでぼーっと見るのが習慣になっているほどです。交換留学の経験もあり、新型コロナウイルス禍の前は何十回(!)も現地を訪れていました。 あのピリ辛の韓国風屋台おでん、特大サイズのアイスアメリカーノ、学生街のフ

生態系のつながりを体験し、感受性を呼び覚ませ~河森正治プロデューサーの「いのちめぐる冒険」~

万博の8人のプロデューサーによるテーマパビリオン第3弾です! 今回の万博の至る所に掲げられている「いのち」 そもそも「いのち」って一体なんでしょう。 アニメーション監督の河森正治さんは、発展途上国の子どもたちの輝く目を見た時、「いのち」を感じたそうです。(冒頭画像© 2022 Shoji Kawamori/Office Shogo Onodera, All rights reserved.) 「現代人が眠らせている観察力や感受性を呼び起こしたい」 そう願う河森さんが手が

ともに並び、肩を組んで歌って踊ろう!~アイルランドパビリオン~

アイルランド。名前を聞いたことはあっても、行ったことがある方は少ないのではないでしょうか。私もその1人です。そんな私のアイルランドの原体験は、何と言っても2019年のラグビーW杯日本大会! 国花のシャムロックをあしらった緑色の衣装に身を包み、欧州からはるばるやってきた大勢のアイルランドファンを日本の各地で見かけました。スタジアムではハイネケンのビールを文字通り底なしに飲み、代表チームのために作られた特別な歌「アイルランズ・コール」を熱唱する彼ら。あのとき同じスタジアムにいた私

東西文化の集束地を表現「知識の庭」~ウズベキスタンパビリオン~

中央アジアに位置するウズベキスタンは古くからシルクロードを通じて、東西の思想や商業が集まる場所でした。パビリオンは「知識の庭」というテーマで、古くからの文化と現在の技術を体験できる内容になっています。(冒頭のイメージはATELIER BRUCKNER & NUSSLI Switzerland) 外観は伝統的な刺繍や装飾品の模様をあしらっていて、パビリオン内に入ると砂漠のオアシスのような庭が目に飛び込んできます。 展示の目玉となるのは中央部のムービングステージ。来場者を乗せ

食べて、旅して、免疫を高めよう~タイ パビリオン~

東南アジアのタイは高い医療技術や伝統的な診療を求めて世界中から人がやってくる「医療ツーリズム」が盛んだそう。パビリオンが掲げたテーマは「免疫力」です。 木造の大きな屋根が特徴の館内に入ると、免疫力を高める食材や成分を学べる展示が並び、実際に試してみることもできるそうです。 タイ料理にはハーブや健康的な食材がたくさん使われているため、タイの担当者は「タイ料理は世界で最も美味しい薬」と話します。 3月13日に大阪で記者会見したタイ政府の保健大臣は「大阪・関西万博のタイパビリ

共に築こう!持続可能な未来~イギリス パビリオン~

ついに出ました! 今回ご紹介するのはイギリスです。 日本では「イギリス」でおなじみですが、正式名称は「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国」。歴史的な経緯からイングランド、スコットランド、ウェールズと北アイルランドの4つの国がつくる連合王国です。サッカーW杯ではなんと、それぞれの国の代表チームが出場することができます。 イギリスは18世紀半ばから「産業革命」が始まり、世界に先駆けて石炭を動力とする工業化が進んだことでも有名です。19世紀半ばからは「パクス・ブリタニカ

翼を広げた大きな鳥が歓迎~クウェートパビリオン~

中東にあるクウェートのパビリオンは、正面玄関の屋根が左右に跳ね上がった特徴的なデザインです。モチーフは翼を大きく広げた鳥。パビリオンのテーマは「先見の明かり」で、夜間にライトアップされると、浮かび上がる姿が印象的です。 設計した担当者は「誰に対しても開放的なクウェート社会を表していて、訪れる人を歓迎するという意味を込めました」と話します。 クウェートはペルシャ湾に面し、サウジアラビアとイラクに挟まれた国。日本の外務省のHPによると、面積は四国とほぼ同じで、約446万人が暮

キューブに誘われ「創出」の旅に出よう~アメリカ パビリオン~

万博パビリオンの歩き方、今日はついに超大国・アメリカの登場です。万博会場のメインゲート前の「一等地」に建設予定のアメリカ館。テーマは「Imagine What We Can Create Together(共に創出できることを想像しよう)」。(冒頭の画像©Trahan Architects) 人々の交流や協力を促し、持続可能な社会に向けてアメリカも一緒に取り組んでいく、ということを示すテーマだそう。展示エリアは5つに分けられており、来場者は映像や音楽などを通して「アメリカ探