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あのコはだぁれ?

地元のシネコンで映画「あのコはだぁれ?」を観ました。
監督:清水崇

注意。この記事には「あのコはだぁれ?」のネタバレが含まれます。
前作「ミンナのウタ」のネタバレも含まれます。

(少し間を空ける)

わりと面白かったです。
学園ホラーの雰囲気が良く出ていると思いました。

同じ清水崇が監督して去年(2023年)公開された「ミンナのウタ」の続編です。
僕も「ミンナのウタ」は鑑賞済みですが、正直、内容は憶えです。
そんな僕でも「あのコはだぁれ?」を問題なく観られたので、予習しなくても大丈夫だと思います。

前作「ミンナのウタ」は、
「行方不明になった主要登場人物たちが、無傷で戻って来る」
っていうラストでした。
なんだか肩透かしを食らったような感じで、煮え切らない幕引きになっちゃったなぁ、と思いました。
演者さんたちのパブリック・イメージを守るとか、そういう大人の事情があったのかな? なんて邪推しました。

今回も同じでした。
男子高校生たちと主人公以外の教師たちが無傷で生き返るんですね。
その辺のロジックが良く分からなかったし、やっぱりモヤモヤ感は残ります。

主人公の教師が死んで、幽霊というか地縛霊というか残留思念みたいな状態になるっていうバッド・エンドは良かったです。
(バッドなのに良いエンドなんて矛盾した言い方ですが、ご理解よろしく)

物語の冒頭、いきなり主人公の彼氏が交通事故にあって昏睡状態になります。
「その彼氏が、実はサナの弟だった」というツイストも割と良かったです。
演じた染谷将太は、出番は少なかったですが、やっぱり存在感ありましたね。

マキタスポーツ、それから男子高校生3人組も良かった。
この映画に関しては、脇を固める男優陣が良い味を出していたと思います。

劇場の雰囲気

平日の昼間、近くのシネコンで観て来ました。
満席でした。
(ただし、100席ほどの小さなスクリーンです)

夏休みという事もあって、9割方、10代の若者でした。

  • 小学校高学年の男子グループ

  • 小学校高学年の女子グループ

  • 中学生の男子グループ

  • 中学生の女子グループ

これらのグループで客席のほとんどが埋まっていました。
1グループあたりの人数は4~5人だったと思います。

残りは高校生グループが少々、大学生っぽいカップルが少々、親子連れが少々といったところでしょうか。

で、その10代のグループ客が五月蠅うるさいいったら、ありゃしないんですよ。

本編が始まっても、ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃ、おしゃべりをめない。
ストーリーと関係なく、突然ゲラゲラ、きゃはは、と笑い出す。
箸が転んでも可笑おかしい年ごろ、とは良く言ったものです。

正直、最初はイラッとしましたね。
お前ら、もう少し真面目に集中して映画を観ろよ、って。

しばらくして、彼ら10代の観客の雰囲気が何かに似ている事に気づきました。
(経験があるぞ、この雰囲気……何だろう?)
と、考えてみて、はたと思い当たりました。
ディズニーランドのライド・アトラクションの雰囲気に、そっくりなんですよ。
「カリブの海賊」とか「ホーンテッド・マンション」とか、ああいうアトラクションに乗っているグループ客の雰囲気。
突然、目の前にガイコツが現れて、「わっ」「きゃー」って驚いて、次の瞬間、仲間うちでゲラゲラ笑う、あの感じです。

10代の多数派……陽キャ的、パリピ的な少年少女たちにとって、映画館へ行くのも、テーマパークへ行くのも、似たような物なんですね。
みんなでワイワイ、ガヤガヤしたいっていうのが主目的で、その遊び場の1つとして映画館なりテーマパークがある。

(そう言えば、予告編が「高校生ラブコメ」ばっかりだったな)
なんて事も思い出しました。
学園ホラー映画や学園ラブコメ映画は、配給会社の年間プログラムによって、特定のシーズン(夏休み・春休みなど)に公開するとあらかじめ決められています。
その手のジャンル映画に課せられた第1の使命は、10代の陽キャ、パリピ・グループを満足させる事なんですね。
彼らこそが主たる顧客なんです。

そう思うと、客席でおしゃべりをする彼らへの怒り・不快感も徐々に収まって来ました。
彼らこそが主たるお客様なんだから、僕みたいに静かに集中して映画を観たいタイプは、この状況を受け入れるべきなのだろう、と思いました。

……少し、昔話にお付き合いください。
何十年も前の話。
たしか僕は大学生だったと思います。
当時は、まだ怪獣映画が「ちびっこ向け」って思われていました。
観客はもちろんの事、作り手や配給する側も少なからずそう思っていた。

とある地方の映画館で、とある怪獣映画を観ました。
僕以外の観客は、幼稚園児くらいの男の子を連れた母親だけでした。
映画本編が始まってしばらくしたら、男の子が客席じゅうを走り回り始めたんですよ。
母親も、それを放置してるんです。
で、僕も青臭さが抜けてない頃だったんで、思わず母親の席まで歩いて行って、イラついた声で「すいません、お子さんを静かにさせてもらえませんか」って言っちゃったんですよ。
いま振り返ると、ほんと申し訳ない事をしたって思います。
お母さんだって、いろいろな事情があってお子さんと一緒に映画館に入ったんだろうに。
子供が騒ぐくらいは、許容すべきだった。だって(当時の怪獣映画の位置づけは)子供向け映画なんだから。
それが嫌なら、大人には「夜上映」っていう選択肢もありますから、そちらに行けばいい。

話を「あのコはだぁれ?」に戻します。

そんなこんなで、10代少年少女のおしゃべりと映画のサウンドトラックを同時に聞きながらスクリーンを観ていたんですが、ある時点以降、ピタリとお喋りが止まったんですよ。

ある時点とは、「廃車置き場の自動車の中でカセット・テープを聞く」っていうシーンの時です。

以降、あきらかに若い観客たちの映画に対する集中度が上がりました。
お喋りもほとんみ、意味も無くゲラゲラ笑う事もなくなりました。
ラストまで、10代の観客たちは本気で怖がっていました。
おかげで、僕も映画に集中できました。
そしてエンドロールとポスト・クレジットが終わり客席が明るくなる直前、なんと、少年少女たちが拍手をしたんですよ。
それも1人2人じゃありません。
客席各所から(全員ではないにせよ)少なくない数の拍手の音が聞こえました。観客の3分の1くらいが拍手をしていたと思います。

ちょっと感動しました。
最初は映画が始まってもペチャクチャ喋っていたマナーの悪い10代の客たちが、ある時点から映画に引き込まれて、最後は拍手で敬意を表す……って、なんかそれ自体が、ちょっとしたドラマのように感じられました。

場内が明るくなって、いつものように僕は客席を見回しました。
みんな満足げでしたね。

あらためて、映画館へ行く楽しみって映画本編だけじゃなく、そこにつどった観客たちの中にも有るんだな、って思いました。

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ところで、僕はピチピチのバーチャル10代で、現役のバーチャル美少年男子高校生です。
ねんのため。

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