プロセカについて語りたい① プロジェクトセカイ編 前編
注意:⓪を読んでいない方は先にお読みください。
①では、ゲーム全体のことについて、主に外部的な視点から語っていこうと思う。
「プロセカ」とは?
プロセカについてご存知の方は飛ばしてください。
プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク
「プロセカ」とはこのタイトルの略称である。改めて考えてみると、なかなか特殊な名前をしている。「カラフルステージ」ってなんだ、と思うが、よくよく考えてみると『いい日旅立ち・西へ』的なシステムをしていることがわかる。
プロセカには様々な企業が関わっているが、主な企業は次の3つである。
SEGA
Colorful Palette
CRYPTON
大まかな話をすると、SEGAとColorful Paletteがゲーム制作を担当しており、CRYPTONがボカロのブランディングに関わっている。これをもとにタイトルを見てみると、「プロジェクトセカイ」が「SEGA」、「カラフルステージ」が「Colorful Palette」、「初音ミク」が「CRYPTON」という構成をしていると考えられる。ちょっと強引な気もするが、、
プロセカってなんだ
さて、プロセカの中身の話。プロセカは、おしなべて言うと「ボカロのスマホ音ゲー」である。この「ボカロ」要素は、ボカロ曲が用いられているということと、ストーリーにボカロが関わるという点にある。
プロセカに似ている音ゲーとして「バンドリ(BanG Dream!)」があるが、こちらはオリジナル曲やアニソンなども扱っている。プロセカの方はボカロ曲しかない(オリジナル曲もボカロ曲として出ているものである)という違いがある。
僕は音ゲーをあまりプレイしないので、音ゲーとしての特徴はあまり知らない。とはいえ、音ゲーにも曲を提供しているcosMo@暴走PさんやOSTER Projectさんらが曲提供をしていることを考えると、ボカロ縛りにしたとは言え、他の音ゲーに見劣りしない完成度を誇ると考えられる。
独自性
実は以上の説明だけでは、プロセカの説明としては不十分である。なぜなら、「ボカロの音ゲー」としては、すでに先発として『初音ミク Project DIVA』が存在するからである。このゲームは相当昔からあり、アーケード版やPlayStation、3DSあたりにまで進出している。かくいう自分も、3DS版、アーケード版くらいには触れたことがある。
プロセカとProject DIVAの違いは、主に二点、「ゲーム性の違い」と「キャラクター」である。前者については、プロセカは「スマホ音ゲー」であり、Project DIVAは「アーケード音ゲー」であるという違いがある。それにより、音ゲーとしての性質もだいぶん異なる。まあこれに関しては、システム上の違いであり、本筋に直結するようなものではない。どちらもやっていて面白いし。
問題は後者である。Project DIVAにはVOCALOIDしか登場しない。また、VOCALOIDのキャラクター性はそこまで押し出されていないので、基本的にはゲーム中で歌っていたり、踊っていたりするだけの存在である。一方プロセカでは、「登場人物」としてVOCALOIDに人格が付与されている上、ストーリーやゲーム画面にはVOCALOID以外のキャラクターも登場する。そのため、プロセカは「音ゲー以外の要素」がかなり作り込まれているのである。このことは、以下何度も出てくるので頭の片隅に入れておいてもらいたい。
まとめ
情報量が多くなってきたので整理すると、プロセカは
ボカロ曲を主体としたスマホ音ゲーであり
ボカロが「キャラクター」として登場し
ボカロ以外のキャラクターもかなり作り込まれている
という特徴を持っている。
プロセカはボカロをどう変えたのか?
この記事は、おしなべて言うと「プロセカのここがすごい!」な記事であるが、まずはその「結果」から見ていくことにする。ここからは自説であるが、プロセカは「ボカロ界を大きく変えた」コンテンツであると考えている。それをみる上で、まずプロセカ前史について見ていくことにする。
プロセカ前史
プロセカがリリースされたのは2020年9月30日のことである。この頃は、ボカロが「それなりに」流行っていた時期である。ここでは詳しくは扱わないが、2015年ごろの低迷期以来、『シャルル』を鍵として、爆発的にボカロ曲が流行した。それからその人気は衰えることなく、ぬゆりさんの記事に述べたような大流行に突っ込んでいくことになる。
さて、この流行にはある特徴がある。これはボカロが「メジャー」になったと言う点である。これについて話し始めると長くなるので、簡単に述べるにとどめるが、
ボカロの舞台がニコニコ動画からYouTubeへ移行したこと
ボカロPさんが次々とメジャーデビューをしたこと
という2点に集約されると考えている。正直この点についてはかなり議論の余地があるかと思うが、もう少し詳細な話を別記事でしようと思うので、そちらを参照いただきたい。
実際、上に挙げたバルーンさんは「須田景凪」名義でメジャーデビュー、有機酸さんは「神山羊」、ぬゆりさんは「Lanndo」など、次々と生声でのメジャーデビューを果たしている。
なお、2020年はAyaseさんのYOASOBIとしてのデビュー(すなわち『夜に駆ける』の投稿)や、Adoさんのメジャーデビュー(『うっせえわ』投稿)、yamaさんの『春に告げる』投稿など、この動きが如実に現れた年であった。
プロセカによる「接続」
プロセカによる影響が顕になってきたのはリリースの翌年、2021年のことである。上に挙げたぬゆりさんの記事で取り上げた『ロウワー』のヒットが最もわかりやすい例だろうが、もちろんそれだけではない。
先述したように、ボカロ流行の中心は、当時YouTubeに移っていた。プロセカが行ったのは、「YouTubeでの人気を削がず」「ニコニコ動画での流行を再興した」というとんでもない芸当である。
まず、プロセカはヒット曲を数多く採用している。詳しいことは後編に譲るが、初期からヒット曲の『シャルル』『劣等上等』をはじめとし、現在は『ヴァンパイア』『フォニイ』など、いわゆる「YouTubeで流行った曲」を実装していることが見て取れる。特に『フォニイ』に関しては、CRYPTON所属のボカロでない「可不」の作品であったにも関わらずである。
これらはプロセカの宣伝にも効果的に利用されており、「あのヒット曲で遊べる!」という売り出し方をしている。(口角と否定的に見えてしまうかもしれないが、これまで音ゲーを触ってこなかった人(自分とか)に対する素晴らしいアプローチだと思う。)
逆に、プロセカが起点となり、流行した曲も数多く存在する。『ロウワー』『トンデモワンダーズ』あたりがいい例か。
対して、プロセカはニコニコ動画へも積極的にアプローチしている。2022年に入ってからだが、プロセカは存在する全てのMVをニコニコ動画に投稿。実はProject DIVAはニコニコ動画に公式チャンネルがないので、これは異例のことである。
ニコニコ動画側も、ボカロやプロセカの台頭をきっかけに、アプリ「NicoBox」が「ボカコレ」として再リリースされた。ボカロ以外の動画ももちろん利用できるが、公式が「ボカロ向きのシステムですよ」と言っていることになる。こちらに関しても、「あの曲が聴ける」といった、ボカロ曲を使った宣伝がされている。
ところで「ボカコレ」は「Vocaloid Collection」というボカロのコンテストの名前がそのまま用いられている。コンテストの方の「ボカコレ」では、その上位入賞者がプロセカに実装されるという取り組みが行われており、プロセカがボカコレ、ひいてはニコニコ動画に影響を与えているのは明らかである。
このような取り組みは、まさに「YouTube側」の人間を「ニコニコ動画」に、「ニコニコ動画側」の人間を「YouTube側に」引き込むような取り組みであろう。今時は、双方を「見たことがある」という人がほとんどであろう。しかし、それらの垣根を低くしたと言う功績は大きい。
「空気」の変化
やや抽象的な話になっているので、少し踏み込んだ話をしよう。
YouTubeの曲の流行は、どこからともなくやってくる。その一端は「TikTokでの流行」であったり、「有名な歌い手のカバー」であったりする。もちろん曲がいいから流行するのであるが、なぜそれが流行しているのかは不透明なままである。ある意味、これが「流行」の本来の形である。
対して、ニコニコ動画の曲の流行は「作られる」流行である。ことボカロに関しては、「作っていく文化」という意識がとても強いように思える。そして、プロセカはボカロにその空気を取り戻したように感じる。その一つの「成果」が、何度も述べている『ロウワー』にあるのではないかと思う。
ボカロは、我々が作る文化である。曲を作る人がいて、動画を作る人がいて、歌ってみる人がいて、踊ってみる人がいて、コメントする人がいて、広告をつける人がいて、、というふうにできてきた。その中でいい曲というものが広まり、そして「この曲をもっと伸ばそう」というムーブメントができる。
プロセカがリリースされてから、プロセカの曲公募である「プロセカNEXT」で、「ボカコレ」で、あるいはニコニコ動画の他の取り組みである「無色透明祭」で、その活動の活発さは変化しているように感じる。
もちろんYouTubeによるメジャーな動きも死んでいない。Kanariaさんの台頭や、近年の、例えば『きゅうくらりん』などのブームはそういう寄与が強いだろう。
自分としては、このメジャーな空気の中にアングラな空気が混ざった、今のボカロの様相がすごく楽しいな、と感じている。
少し長くなってしまったので、前編はここで終わり、後編に続く。
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