プロセカについて語りたい① プロジェクトセカイ編 後編
注意:前編を読んでいない方は先にお読みください。
プロセカについての説明を入れ込むなどしていたため、長い記事になってしまった。正直今回に関しては考えていることを全部書き切る勢いでやっているので、これくらいのボリュームはあって然るべきなのかもしれない。
後編では、前編で取り上げた「変化」を産んだ、プロセカの凄さについて扱っていこうと思う。
プロセカの何がすごいのか
プロセカの何がすごいかといえば、幅広い顧客層を満足させられた点だろう。前編で扱ったように、プロセカは「ボカロの音ゲー」であり、「キャラクター」が存在する。この時点で、満足させなければならない人間は以下のように書き出せる。
ボカロのファン
音ゲーのファン
ソシャゲのファン
声優のファン
上二つは「ゲーム要素」について、下二つは「ストーリー」についての相手である。下二つに関しては、ソシャゲをあまり知らない、かつ声優さんのこともあまり知らない自分は何もコメントできないのでパスさせていただく。
しかし、ストーリーも満足いく出来であり(これについてはユニット各論でも少しずつ触れていると思う)、かつ実力のある声優さんをかなり登用していることから、これら二点については達成できていると言っていいだろう。
音ゲーとしてのプロセカ
順番が前後するが、まずは音ゲー要素について見ていこう。と言っても、自分はそこまで音ゲーを触ったことがない(太鼓の達人、チュウニズム、maimai、オンゲキ、Archaeaなどプレイ経験はあるが、どれも「一度はプレイしたことがある」程度のものである)ので、あまり建設的なコメントはできない。
それでも、前編で述べたように、プロセカが音ゲーとして他のゲームと遜色ない魅力を有しているのは確かであると思う。ゲームはシンプルでわかりやすく、初心者から上級者まで幅広く対応した難易度、そして多彩な曲調など、音ゲーとして必要な要素はちゃんと有しているのではなかろうか。
最近までは、最高難度がボカロ曲ではなかったり、cosMo@暴走Pの一強であったりという課題は確かにあったが、それもプロセカULTIMATEなどの試みで打破されつつある。
正直な話、ここまでお金のかからない音ゲーはなかなかないと思う。東方ダンマクカグラのサービス終了を見ていると、やや不安になってくるまである。しかし今のところ特にそういう問題点は聞いておらず、サービスも順調に回っているので、特に問題はないのであろう。これも素晴らしい点の一つである。
ボカロファンから見たプロセカ
ボカロファンにもいろいろいる。特に大きな括りとしては、「VOCALOIDのことをどう見ているか」という話がある。
このゲームでは、これまでも述べてきたように、VOCALOIDに明確な「人格」が付与されている。ボカロは近年「シンガー」としての認識が強まってきているように感じるし、先行音ゲーであるProject DIVAではこのようなことはしていない。
実際、自分は少し困惑した面もあった。プロセカがこんなに「キャラゲー」であるとは思わなかったからである。しかし、ボカロは確実にストーリーに馴染んでいるし、ストーリーもまた、素晴らしいのである。そして設定的に、ボカロの人格が可変であることも、これにいい影響を与えていると思う。
各ユニットでのボカロの立ち回りについては、VIRTUAL SINGER編や各ユニット編で扱うことになる。このキャラ作りのうまさはプロセカの一つの強みである。
また、スマホゲームの中にボカロを主題としたものは少なく、その中で、ボカロ曲を活かしながらボカロのキャラを引き立てるというゲームはこれが唯一と言っても差し支えないだろう。つくづく使い方のうまいゲームである。
もう一つは、実装する曲についてのお話であり、これが一番重要となるのであるが、これについてはおいおい話していくこととしよう。
その他、目立った点
個人的には、プロセカはグッズ展開が巧みだと感じた。音ゲーでありながら、キャラゲー・アニメ的な側面を持ち、アニメイトにあれだけグッズを展開しているのは感嘆する。自分は特に「イベントのバナーをアクリルバッチにした」のが好きである。ぜひ買ってください。
また、声優さんの露出のさせ方も巧みであり、ユニットごとのイベントやコラボが入り混じっている点に好感が持てる。
以上のように、プロセカは、「ボカロゲーであり、音ゲーであり、キャラゲーであり」という複合的な性質を持っているゲームである。
プロセカの「バランス感覚」について
プロセカはバランス感覚の優れたゲームである、というのが持論である。
これ以外のパートでも度々この表現は登場していることと思うが、ここでは一般的な点について少し触れることとしよう。
ゲームジャンルについて
先ほどから散々書いているように、プロセカは「音ゲーであり、キャラゲーである」。しかし、多くの人は音ゲーを目当てにこのゲームを始めたことだろう。少なくともリリース当初は。
やってみるとキャラゲー要素はとても強いことがわかる。スコアを上げるためには、キャラを育成しないといけないし、曲を増やすには、ストーリーを読まなければならない。だが、これらの要素が、プロセカの大きな魅力の要素である「ストーリーやキャラ」に我々を引き込むのである。
最近は、キャラを目的とする二次創作もかなり増えている。また、キャラを中心とした宣伝を打ち始めてもいる。上記したグッズ展開についても、プロセカのキャラ要素が十分に浸透していることの表れだろう。
結果として、「キャラゲー」と「音ゲー」はうまく両立されており、どちらの魅力も遺憾なく発揮されているのである。
選曲
プロセカには様々な曲が実装されているが、これは以下のように分類できる。
既存の有名曲
ユニット書き下ろし曲
公募曲(プロセカNEXT・プロセカULTIMET・ボカコレ)
以上に当てはまらないオリジナル曲(少数)
これらの実装のバランスが、非常に良いのがプロセカの第二の特徴である。
プロセカの主体は、ユニットの書き下ろし曲である。これは各ユニット編で多くを割いて語る部分であるが、ここではストーリー要素とボカロが絡み合う、プロセカにおいて「核」と言っても差し支えない部分であろう。
ここで重要となるのはボカロPさんの選出である。これについては各ユニットの部分でじっくりと扱うので、そちらをご覧いただきたい。
既存の有名曲は、さらに「昔からある曲」と「今流行っている曲」に分けられる。前者はいわゆる「ボカロオタク」向けのもの、後者は最近始めた人や、最近ボカロを聴き始めた「メジャー層」向けのものであろう。
実装曲が増えるたびにTwitterでは話題になっているので、ここについてもプロセカの楽しみの一つとなっているのは間違いないだろう。
公募曲は、前回取り上げた「プロセカによる流行の発信」の要になる部分である。ここで取り上げられた曲が大抵ボカロのみでの実装となるのが興味深い。プロセカがボカロ文化の先端を担っていくという気概が垣間見える部分である。
以上に当てはまらないオリジナル曲は、大方「アニバーサリーソング」である。例外はカップヌードルなどのコラボ曲と、『ワーワーワールド』『マシンガンポエムドール』くらいなものであろう。ここでは、有名なボカロPさんを次々と登用し、まさにプロセカの「顔」たる曲たちを作っている。
このように、プロセカの実装は、様々なファン層にアプローチできる仕組みになっているのである。近年はボカロ曲がかなり広く聴かれるようになったため、このような仕組みが機能すればかなり強い音ゲーになることは間違い無いだろう。
曲について
このブログはボカロ音楽について書くものであるので、曲についても積極的に触れていきたい。ここでは、プロセカが上記したような強みを持った所以である曲たちを紹介していければと思う。
プロセカNEXT
花を唄う シノ feat.初音ミク
自分がプロセカNEXT中で最も好きな曲。あまり音ゲー感のない曲であるが、「こういう曲も採用されるんだ」という意味でいい刺激になったのでは無いだろうか。ちなみにゲーム中ではかなりの難易度で登場する。
ラストスコア せきこみごはん feat.初音ミク
2022年のマジカルミライ・楽曲コンテストでグランプリに輝いたボカロP、咳き込みごはんさんの作品。プロセカNEXT採用の「確かな目」っぷりが窺える作品である。ボカコレと合わせて、これからも新規ボカロPさんの登竜門となることに期待している。
プロセカULTIMATE
What's up? Pop! Capchii feat.初音ミク
プロセカ高難易度枠のULTIMATEであるが、とんでもない曲が出てきた。純粋に曲がいいというのもあるし、音ゲー曲としての素質をしっかり兼ね備えている。cosMo@暴走Pさんとは異なり、EDMからアプローチしていることで、初音ミクの「ボーカル・シンセサイザー」っぷりを遺憾なく発揮している、プロセカULTIMATEが産んだ名曲である。
ボカコレ
星界ちゃんと可不ちゃんのおつかい合騒曲 南ノ南 feat.星界・可不
よく採用したな、と方々から言われていました。この前に『フォニイ』を実装していなければ入れてなかったのでは無いか、と邪推しています。これが騒ぎになってかなり話題を掻っ攫った感があるので、結果的によかったんだと思います。面白い高難度曲も増えましたし。
コラボ曲
青色絵具 くじら feat.初音ミク・巡音ルカ・MEIKO
オリジナル
プロセカ版(feat. 初音ミク・日野森雫・日野森志歩)
幻の作品。リリースもカラオケへの配信もされていない。どうしてですか???
くじらさんの実装曲がこれだけになってしまったのも残念である。今後あるのかもしれないけど。曲は非常によく、このカップヌードルコラボ中で自分が最も好きな曲である。志歩がこんな声を出すのかと驚いた人も多いだろう。
アニバーサリーソング
セカイ DECO*27(作詞)・堀江晶太い(kemu)(作曲) feat.初音ミク
いきなりものすごいメンツである。DECO*27さんはプロセカに本当に本当に多くの曲を提供されており、さすがの貫禄。プロセカリリースと共に発表された、まさに「オープニングテーマ」とも言えるような一曲であり、世界観をイメージづけるような一曲である。
アニバーサリーソングは「すべてのユニットに向けて書き下ろした曲」である。その分抽象度が高くなるためなかなか難しいのであるが、そこはDECO*27さんがすばらしく書いているところである。特に、
正解の想いに出会えるかな
という歌詞は、プロセカ全体で共有している通奏のイメージであると思う。
考えているともう少し深掘りしたくなったので、またどこかで詳しい話をしよう。
群青讃歌 Eve feat.初音ミク
一周年のアニバーサリーソング。ここでもまたEveさんという鬼札を切ってきた。ボカロ曲を長い間投稿されていなかったので、衝撃的な事件であったろう。
特徴的なのはその「エンディング」的な曲調。『セカイ』についてもそうだが、プロセカのアニバーサリーソングは空明るいものでは無い。しかし、どこか希望と、背中を押してくれる力を感じる曲である。
Journey DECO*27 feat.初音ミク
二周年のアニバーサリーソングは、一周年とは毛色が異なり、「Journey to Bloom」といういわば「新クール」の入り口たる曲となっていた。
曲調はこれまでと変わらず、手放しに明るいと言えるものでは無いが、今回はその歯切れの良さから、決然とした何かが感じられる作品となっている。
余談だが、セカイ→群青讃歌→Journeyで、MASTER(プロセカの最も高い難易度)のレベルが26→27→28と上昇しており、ユーザーの成長に合ったシステムになっているのかとも考えさせられる。
まとめ
ずいぶん長くなってしまったので、まとめをば。
プロセカは、そのゲームの対象ユーザーを巧みに満足させることができた。
プロセカの強みは、「音ゲーとキャラゲーの二重性」であり、VOCALOIDキャラクターをうまく適合させている。
運用に必要なバランス感覚も、非常に良い。
他の記事では、VIRTUAL SINGERや各ユニットの話を掘り下げているので、ぜひ読んでみてください。
つづく。
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