長編小説 雨粒のひかり 【1.モラトリアム】 2018年6月

 2018年6月1日 くもり
 今日から量産のライン作業が始まった。パートさんたちと一緒に、部品の検査。
 今日も1日、乗り越えることができた。
 小林さんからまた連絡があって、まずは週に2回のペースで働くことになった。

 2018年6月5日 くもり
 今日は同じ派遣社員の関山さんと一緒に、部品の検査。
 社員の吉田さんに言われ、途中から1人で検査することになってドキドキした。吉田さん怖そうだから、「1人でできそう?」と聞かれて「無理です」とは言えなかった……。
 意外と1人でもできるもんだ。良かった。
 昼休みに、関山さんに話しかけられて少しおしゃべりした。関山さんは、元気なおばちゃんって感じ。私みたいにあえて派遣社員をやってる若い人、結構いるみたい。

 2018年6月8日
 怖そうな社員さんが多い。不安になってきた。でも小林さんには「大丈夫」と言っといた。


 2018年6月11日 雨
 そろそろ梅雨入りかな?


 2018年6月12日 くもりのち雨
 パートの赤川さんに、お菓子をもらった。うれしい。
 パートさんたち、みんな優しい。関山さんも同じこと言ってた。


 2018年6月18日 くもり
 単発で来る派遣社員は、仕事が雑な人が多い。びっくりした。真面目に仕事をするだけで評価されるなんて。社会ってそういうもんなの?
 私って、今まで肩肘張りすぎていたのかな。


 2018年6月27日 雨
 出勤日。夕方、もうすぐ仕事が終わる頃に吉田さんに話しかけられた。怖い人だと思っていたけどそうでもなくて、見た目で判断していた自分がいたことに気付いて反省した。
「次、いつ来るの?」と聞いてもらえてうれしかった。少しだけでもいい。自分が必要とされていることが、生きるパワーになる。
 前の会社で「使えない」なんて言われていたのは、何だったのだろうか。あんな会社、辞めて正解。


 2018年6月30日 くもり
 もう6月が終わるなんて。
 久しぶりに小林さんから連絡があって、「出勤日を少し増やしてみないか」って。だいぶ慣れてきたし、自宅にいても退屈だから、増やしてもらおうかな。