マガジンのカバー画像

掌編小説

29
私が書いた掌編小説
運営しているクリエイター

#ショートショート

掌編小説 天気雨

 すでに葉桜となったそれを見上げると、風に吹かれざわめく葉の隙間から日の光がちらちらと見…

京
10か月前
6

掌編小説 僕と花

 得体の知れない黒の中。気づいたら、僕はここにいた。自分がどこの誰なのか、どこから来たの…

京
11か月前
11

掌編小説 ひとみのなかみ

 昔、僕がまだ小さかった頃、お兄ちゃんはよく僕の顔を覗き込んだ。僕の目をまっすぐ見て、ニ…

京
11か月前
18

掌編小説 原石

「星屑を、ひとつください」 「あいよ、星屑ひとつね。お嬢ちゃんかわいいから、もうひとつお…

京
11か月前
5

掌編小説 母校

 大学卒業後に上京し、長らく東京に居座っていた私が今、博多行きの新幹線に乗っている。深い…

京
11か月前
34

掌編小説 もう森へ帰ろうか

 東京に行けば私の人生の全てが好転すると思っていたけれど、現実は厳しくて、それは田舎者の…

京
1年前
17

掌編小説 狭間

 ジョワンジョワンと、セミが鳴く。熱気に蒸された草の匂いはどこか懐かしく、子供の頃に嗅いだことのある匂いなのだと直感した。  小さな公園のジャングルジムのてっぺんに、私は座っていた。  神社でも何でも神聖なものはだいたい上の方にある、というのが私の持論だ。この味気ない住宅街の中にある聖域。それがジャングルジムのてっぺんなのだと、私だけが知っている。だからこうして、時折ジャングルジムのてっぺんに登るのであった。  少しでも神に近づこうとする。目に見えないものを感じることで、自

掌編小説 星屑の足跡

 学校に行かなくなってから、もうすぐ三ヶ月が経とうとしている。人生は良いこともあれば悪い…

京
1年前
12

掌編小説 望月くん

 望月くんの作る音楽は、どれも荒削りだった。角の取りきれていない石、とでも言おうか。たど…

京
1年前
11

掌編小説 檸檬

 ごつごつとした黄色い表皮に、頬を近づける。ひんやりとしていて、思いの外なめらかに感じる…

京
1年前
6

掌編小説 春風

 ここでこうして桜を見るのは、今年で二回目だ。放課後、誰もいない教室で私は窓を開ける。 …

京
1年前
6

掌編小説 雨

「みうちゃん」  大好きな人が、私を呼ぶ。私は穏やかな気持ちになり、そっと微笑んだ。  …

京
1年前
4

掌編小説 ユートピア

 ある冬の日、私は会社を休んだ。  精神的に調子が悪かった。知らないうちに、心労が積み重…

京
1年前
9