英語化=グローバルという幻想


 2011年から楽天が社内英語化を公言してから一種の集団幻想となった社内英語化=グローバルという幻想。これの目的は、「楽天の英語社内公用語化の成功点②世界から優秀な人材が集結!」と煽るとおり優秀な人材が世界から日本に集結するはずであった。

ありがとうは英語になりませんよね


 「ありがとうは英語になりませんよね」とは神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏教授の言です。この語学感覚こそが真の国際人として備えるべき教養のはずです。

アフラック社では

 アフラック生命保険株式会社 代表取締役会長 アフラック・インターナショナル・インコーポレーテッド 取締役社長 チャールズD.レイクⅡ 氏を私がお手伝いをさせていただいている価値創造フォーラム21でゲストにお迎えし日経ホールにて開催された会合で氏は、その国の価値観はその国の言語でしか理解できないので各国母語でしか業務を行っていないし社員に英語力など求めていないと明言された。その上で、国際会議は言語のプロとしての通訳をつけておりそれで充分であるとおっしゃった。

 事実、「2018年4月、「アフラック生命保険株式会社」として日本法人化した。その一大プロジェクトの指揮をとったのが、現在、取締役上席常務執行役員である木島葉子さん。数カ月にわたりアフラック米国との対面会議、電話会議を重ねる日々だったが、実は英語はほとんど話せないという。

英語の達人が社内公用語に賛成しないワケ 

杉田敏・NHKラジオ「実践ビジネス英語」講師は、母語としての言葉が、ビジネス上で戦略的思考をするための重要な武器です。日本語できちんと考え、正確な文章を組み立てるということがまずは大事ではないでしょうか。」という。

英語のエキスパートは

 英語教育界には、四人組と呼ばれている達人がいる。江利川春雄和歌山大学教授、鳥飼玖美子立教大学名誉教授、大津由紀雄明海大学教授、斎藤兆史東京大学教授である。それぞれがどれほどの達人かは各氏名のリンク先で確認できるのでここでは省略します。

 大津先生は「世間では「グローバル化=英語化」ないしは「英語文化化」という風潮があります。そして、それが本当の意味でのグローバル化につながらないということを説く人はいますし、わかっている人はわかっています。しかし、多くの人々はそのことを理解していません。そうした歪んだグローバル化の受け止め方に対し、文部科学省や大学も、「グローバル化=英語化ではない」ということをしっかり発信する必要があると思います。」と断言しています。

 鳥飼先生は「英語パニック」とこのような現象を称して英語の社内公用語化にはたして実効はあるのか。英語支配の弊害、英語教育の問題点などを指摘しています。

 かつ「仕事の能力と英語の能力は必ずしも連動していないので、そこを見誤ると残念なことになりませんか、っていうのは言いたいですよね。」(出典:ひろゆき「無能なバイリンガルは楽天へどうぞ」 外資系や一流企業がハマる英語公用化のワナ

 江利川先生は、「政府や経済界は「グローバル人材」という1割ほどのエリート育成を学校英語教育の目的とし、小学校英語の低年齢化と教科化、中学校英語での英語による授業実施、TOEFL等の外部検定試験の導入などの無謀な政策を進めている。」と学校教育に与える弊害を指摘しています。

 斉藤先生は「「グローバル化」のために英語教育を強化するとのスローガンは俗耳に入りやすいが、具体的な政策には、言語学、異文化コミュニケーション論、教育学、言語習得論をはじめ、さまざまな学理に照らして理不尽と思われる点が多い。」と問題を指摘しています。

  そもそもこの楽天の英語化に関して東京大学の阿部先生は下記の指摘をしています。

楽天のグローバルって?

 そもそも10年も経ったので検証局面にあるはずなのでその後楽天は?

結果は「楽天、アマゾンに完敗し海外事業撤退の嵐…「ガラパゴス化」加速、巨額減損の悪夢

ふむ~~~。海外に本社を移転しないで国際展開もせず何故英語化なのだろう。

日本に働きに来るのですか?

 英語化の肝は世界から優秀な人材が集結するはずです。そうなの?

IMD世界競争力ランキング2020日本は34位で凋落止まらず

日本が「駐在員の住みたくない国」に堕ちた屈辱33カ国中32位

「日本で働きたい」はもはや当たり前ではない 大きく変わった外国人労働者の世界

移民を必要とする日本、しかし移民は日本を必要としているのか

日本が圧倒的に「低賃金の暮らしにくい国」に堕ちた真相

日本の労働生産性G7で最下位

先進国ではほぼ日本だけ サラリーマンの給料が減り続ける理由

在宅勤務定着、ニッポンの壁 主要国で最低水準

こいう状況で社内公用語を英語にしたら世界中から優秀な人材が集結するねぇ。

本当に必要なことは

 母語でしっかりと思考して、足元の問題とちゃんと向き合う人を育成する事ではないのでしょうか。杉田敏氏やアフラックのチャールズD.レイクⅡ 氏がおっしゃるように。ちなみにレイクⅡ氏は当日日本語で話されたのですが目をつぶって聞いていたら日本語が母語であると疑う余地は皆無。その方の国際経営と言語感覚から同社では英語力は必要ないと喝破しておられました。通訳をつければいいと。

 同時通訳者の草分けでエキスパート鳥飼玖美子先生は「人それぞれじゃないですか。劇が得意な人もいるし、音楽が得意な人もいるし。だから今、英語が公用語だとかって言ってますけれども、全員スポーツが出来なくてはならないって法律ができて、逆上がりできないと就職できないとかなったら、大変だと思いますよね。」とも。

 なんか、就活エントリーシートに英語検定の得点のみ書かせていることで、能力が異なる人罪を採用して業績落としていると思うのは僕だけ?

 それだけではなく鳥飼玖美子先生の上記のご指摘と「多様性の時代」「弊社はダイバーシティを重視しています」という就活PRとかしている会社が英語検定の得点のみ書かせているって矛盾していると気づかない経営者の教養ってどうなんでしょう?この世にはフランス語もラテン語もマレーインドネシア語も・・・

 言語学も含めて英語のエキスパートが全員反対している英語化。英語化=グローバルという幻想捨てないととんでもなく失った10年を悪化させるのではないのかなぁ。

  翻訳コンニャクはもう開発されてご時世にこの語学感覚が経営者の思考の古さを表現していると思えるのですが。

 ごめんね、昭和なガラパゴス人のぼやきにお付き合させてしまって。

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