MBA留学オワコンなのになぜ?

  2009年には所謂MBAと言われる米国のビジネススクールで行われてい【た】教育は終わったと言い始めました。もっともこれは【シュゴデカウルス】すぎて何なのですが、日本の「イメージ」では「フレームワーク」「ケーススタディ」「ハーバードビジネススクール」のような教育をいいます。
 なぜこれを書いているのかというと毎年執拗に米国のMBA留学したいという学生の相談に応じるのが面倒なので公開しておこうかと(((*^ー゚)
 よくありがちな「MBAスクールの最大の人脈は学ぶ仲間だ」という言説を聞くことがありますがこれだと政治大学院であろうが音楽大学院であろうが同じなので完全にイシューを外していますからこれらの話題は外します。それどころか、飛行機に乗ってその学校に行くオンキャンパス思想はそもそも疫病禍前の米国でオワコンなのです。

 問題が深刻なのは不勉強な学生が聞きかじるの古い知識で進路先として検討するならまだしも、企業が社員を派遣留学させていたり、ひどい場合には一旦中止していたMBA留学を再開させる企業がでてきていることです。

 米国の中にも、バブソンやドラッカースクールのような経営大学院もあるので全て同じであるとは言えないのですがこれが日本だとMBAで一括りにされますし、上記の二校を除けば確かにひとくくりにできるとも言えます。何故ならば規範経営学を2009年まで全く相手にしていなかったからです。このあたりを精査せずに受け売りした大学院生が「米国の主要ビジネススクールではドラッカーなんて読まないし研究もしない」という言葉に代表されるように。この件は前の記事を参考にしてくださいね。

2008年のHBS改革

『ハーバードはなぜ日本の東北で学ぶのか』という本には以下のようにある。

 HBSといえば、さまざまな組織が抱える具体的な課題について記述されたケースを読み、教授のファシリテーションのもと教室で議論して学んでいく教授法「ケース・メソッド」の本家として知られます。しかし2008年、HBSは2つの意味で転換点を迎えます。創立100周年の記念すべきこの年、世界金融危機が始まりその震源地に多くの卒業生を輩出してきたHBSは「本当に世界をよい方向に変えるリーダーを育成できていたのか?」という深い自省を得るのです。そして、ニティン・ノーリア大学長のもとで教育大改革が断行されました。

 これまで「ハーバード」という名称がタイトルに載った本は何十冊と出版されているが、それらは辛辣な言い方をすると、すでに「賞味期限」が過ぎている。これまでの本は、HBSが100周年を契機に行った深い反省について触れていない。

 上記の通りリーマンショック前の教育を自らが全否定した改革の背後には社会信用の凋落があります。HBS卒業生の就職先がないことはNHKマネー資本主義でも報道されたとおりです。

リーマンショック問題よりも

 先日も問い合わせがあったのでGoogleで「WSJ MBA」と検索して出てきた記事を読んでみなさいと指導しました。2009年以降のMBAスクールの動向を大まかにいうと、米国内志願者減少、米国人MBA志願者ですら海外のMBAへ、留学生を増加させなんとか数を維持、授業料無償化、倒産、閉鎖、身売り、救済合併という状況です。これを順番に紹介しようかと思いましたが、直近の状況と、これら10年間の概略で様子は分かりそうですので概略のみ。


 そもそも、経営大学院なのに顧客減少起因の無料化・閉鎖・身売り・倒産って?経営大学院なのに顧客(志願者)減少により窮地とは何を教えているのでしょうか?という問いはたたないのでしょうか。 

リーマンショック後のビジネススクール

 MBA]志願者の減少に歯止めが効かず2011年にはWSJにBusiness School? No Thanks(September 13, 2011)と記事がでました。2013年には増加に転じなかったためにWharton's M.B.A.では入試責任者が辞任しました。

 名門ビジネススクールの悲惨な急転落が始まるのですがそれは後に述べるとして、このような状態が10年以上続いた今は?

海外からの留学生志願者減少

 リーマンショック後米国内からの志願者の減少を留学生によって補っていた米大学のMBAは2019年に外国からの志願者が急減しました。

 米国有数のビジネススクールへの志願者数は減少の一途をたどっているが、今年は一段と落ち込んでいる。移民政策の変更や米中の政治的緊張を背景に、大学は留学生をひきつけるのに苦戦を強いられている。その傾向が特に顕著なのは、一流の経営学修士(MBA)プログラムを提供するハーバード大学やスタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学などだ。これらすべてのビジネススクールが今年の志願者数が前年より減少したとし、ダートマス大学などでは2桁台の減少もみられた。

フルタイムMBAの終焉

 フルタイムMBAの終焉(The Demise Of The Full-Time MBA)というタイトルの記事が2018年のForbesに掲載された通りの状況なのでこの一行で終わっていいような話です。
 2019年には、ビジネススクールがMBAプログラムを閉鎖する理由(Why Business Schools Are Shutting Down Their MBA Programs)がForbesに掲載されました。

 現在米国では、多くの大学が人気衰退を理由として従来のMBAプログラムを閉鎖しているのは記事にあるとおりです。そして残るところも通信制の1年コースに多くがシフトしています。

 伝統あるUniversity of Wisconsinのような名門ビジネススクールですら閉鎖という状況です。。

MBAにまだ価値はあるか?


 MBAにまだ価値があるのか?という議論が起きるのは当然で WSJ読者の声として2019 年 6 月 14 日 16:01 JSTに下記の報道がされました。

 最近、米国の大学で経営学修士号(MBA)課程の入学者が減少し、より短期かつ専門的な修士課程やオンライン課程の人気が高まっていると伝えた。こうした状況を巡り、MBAの価値を巡る議論が巻き起こった。

従来型MBAコースが減少、米で人気薄れる

 米国ではこれまでビジネススクールの中核を成してきたフルタイムのMBAプログラムを打ち切る学校が増えており、ティッピーはその一例にすぎない。この潮流の背景には、より履修期間が短く専門化した修士課程やオンライン課程の人気が高まっていることがある。

世界中のMBAプログラムが秋の入学者数の減少を予測


 ビジネススクールのほぼ半数が、2020年に関心が下がると予想していると新しい調査が示しています

1年コースや通信制へシフト

 1年間のMBAは、アプリケーションの減少に伴い増加とのWSJ報道(April 1, 2020 8:00 am ET)にあるように、MBAを学びではなく就職に有利になる資格だと考えれば安くて手っ取り早い方がいいに決まっています。

 このことは2015年にはアメリカ人がMBAのために海外に行く理由とWSJで報道された(Updated Sept. 2, 2015 7:04 pm ET)とおりです。理由は、ヨーロッパの短期プログラムと低学費が米国の学生を魅了しているとのこと。

倒産を救済合併により名前は残ったが、

様変わりした名門ビジネススクールの例

 米国にThunderbirdという名門ビジネススクールがあります。リーマンショック後典型的な経緯をたどった学校といるでしょう。閉鎖が続くMBAのなかでは、閉鎖したとも言えるし継続しているともいえる学校です。なお、同校の名誉のために申しておきますと、同校は経営大学院の単科大学院故に学部からの内部補填に頼れずにこのような悲劇にあったということですが、これは同時に米国内ではビジネススクールはもはや財政的なお荷物とみられている象徴とも言えます。学内内部補填がないと維持できないので。

 リーマンショック後どの経営大学院も社会的信頼を失い学生数を減らしたことは周知の通りです。その最中 The Economistが報道する通り、2013年に同大学院は、フルタイムのMBAプログラムを20か月から12か月に減らし、料金を$ 20,000引き下げると発表しました。

 しかしながら、資金が底をついた同大学院は、2013年驚きの行動にでたのです。

 経営学修士(MBA)の価値を疑問視する声が増えるなか、世界有数のビジネススクールの1つ、サンダーバード国際経営大学院は経営難からの脱却を図る最後の努力の一環として、営利目的で大学などを経営するローリエット・エデュケーションにキャンパスを売却する予定だ。

 この提携話を受け、少なくとも理事1人が先週、抗議のために辞任したほか、4万人で構成される同窓会の怒りを買うことになった。一方、運営陣や内部の関係者らは、サンダーバードは経営を安定させるために思い切った手段を講じる必要があったと話す。

 英語の a for-profit college operatorが何を意味しているのかは米国の教育制度の闇を知っていれば、理事の抗議辞任や同窓会の怒りを買う意味がよく分かるかと思います。

 Fortune紙が「サンダーバードMBAスクールの慢性的な衰退の中」という記事に経営の詳細が書かれていますのでご興味のある方はそちらを

 これらの混乱の中2014年に同校は同州の州立大学の救済合併($22 Million in Debts Owed by Thunderbird)によって継続が維持されます。

これは事実上の買収でありました。

 2015年には、米アリゾナ州立大学W.P.キャリー・ビジネススクールとして生まれ変わり、ビジネスだけを教えるのではないという新コンセプトの元再スタートし、実質的な授業料無償(学費を全額カバーできる奨学金を提供)にしています。キャリー・ビジネススクールのエイミー・ヒルマン学部長は、学費無料化の中核にあるのは、MBAコースの姿を変えたいという同校幹部たちの熱意だったと説明しています

廃止転換過去の全否定のなか日本では

 「これまで「ハーバード」という名称がタイトルに載った本は何十冊と出版されているが、それらは辛辣な言い方をすると、すでに「賞味期限」が過ぎている。」や特に象徴的なのはHBSPから出た本のタイトル『競争優位の終焉』(帯のポーターの理論だけでは、生き残れない。)は英文タイトル通りM.E.ポーターの完全否定というなか、過去の幻想、いや、亡霊が漂う日本。

 2018年には日本マイクロソフト元社長の成毛愼氏は下記の指摘をしています。

 無意味な学び直しの最たるものが、「国内MBA」。働きながら、日本の大学などが運営するビジネススクールに通って、経営学修士を取得しようというものだ。なぜ無意味かといえば、世界的に見ても、成功した起業家で、MBAホルダーはほとんどいないからだ。

 上記は前に書いたとおり教育がManagementなので当たり前と言えば当たり前なのですが。

 オンラインが主流に移行する米国なのに多額の費用と時間を費やし米国MBA留学に固執する日本。いったいこの国の未来は・・・


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