大事なのは中身より伝え方。相手にとって有益な発信をしよう。
私は製造業で事業企画という仕事をしています。
事業全体の目標、実績管理をしていますが、私の部署にはほかにも仕事があります。
私が事業全体をマクロ目線で管理しているとしたら、一つ一つのビジネス単位をミクロ目線で管理している人間もいるわけです。
もっとわかりやすく言うならば、各ビジネスのコンペ対応したり、原価改善をしたり、という実行部隊とも言うべき仕事です。
私はマクロ目線ですので、様々な部署に目標金額をお願いしていくことになりますが、ミクロになると、営業であったり、開発であるような各部署とプロジェクトチームを組んで活動していきます。
と、なったときに、そのチームの事業企画メンバーは何をしていると思いますか?
原価を計算しているんです。
ん?と思われるかもしれませんが、「原価を計算」しているんです。そして、打ち合わせでは「今皆さんが検討している改善案件の合計は***円です、目標まであと***円です」という説明をしているんです。
ですので、作る資料はただのグラフです。
製造業で働かれている方はこういう会議に出くわした方も少なくないのではないかと推測します。
私の部署では、こういった計算をする担当者が部署の7割くらいを占めています。ビジネスが多岐にわたりますから、担当者もそれなりの人数がいるわけです。
そうすると、職場内のベテランでも、この計算をしてきた職人のような人がいっぱいいます。そして、「俺の計算は精度が高い」といって若手にマウントを取っているのです。
私はこの状況を見て非常に危険だと感じています。
私の記事でたびたび触れている通り、情報発信というのは、「相手を動かさないと意味がない」のです。相手を動かせない人に存在価値はありません。
図面を見て原価を算出するのは、確かに一昔前では非常に難しいことでした。
私も10年前にこの仕事をしましたが、図面とにらめっこして、脳内でいろいろ考えながら原価を作りました。
しかしこのような仕事はすぐAIにとってかわられるものです。
なぜなら、この原価を計算するときは、革新的な作り方を考えるわけでもないので、過去の情報の寄せ集めで原価を「推測」しているだけだからです。
よって、正しいかもわかりません。
そんなことに時間をかけているんです。
これから時間をかけるべきは、計算ではありません。
計算結果から自分の見解をもって、関係部署に提案をすることです。
今までは、「推測」した原価がいかに正しいかを説明することに腐心していました。その説明が上手い人が「仕事ができる」とされてきました。
これからは、「何が正解かもわからないのに、それを正しいと主張する」ことは無駄でしかありません。
仮に正しかったとして何が起こるのでしょう?関係部署はそれで何か行動を起こせるのでしょうか。
少しでも良くなるにはどうしたらいいか、という前向きな議論を提示することが大事であり、その議論の仕掛けができることが付加価値なのだと思います。
議論を仕掛けるというのは、こちらが一方的に説明することや論破することではありません。
明確にすべきことを関係者が理解し、それに対しお互いの仮説をぶつけ合い、それに対し意見をしあうことです。
発言してもらうことが一番大事。
出てきた計算結果を、製造現場にはどのように伝えればいいか。開発にはどのように伝えればいいか。
相手の立場を考えて、発言しやすい、発想しやすい切り口で説明すること。
相手が発言すれば、行動の第一歩になります。逆に発言できなければ、一歩は絶対に出ません。
伝えるということは、伝えてもらうことです。相手に行動させる伝え方を常に心がけるべきと思っています。