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冷蔵庫を想う


引越しのために冷蔵庫をからっぽにした。

なるべく使いきれる野菜を買い、卵は意外と消費できないから買わないように我慢し、冷凍していたご飯や肉は全部食べ終わり、調味料はダンボールに閉まった。

からっぽの冷蔵庫を見て、ああ、いよいよまた新しい生活が始まるんだなあと思ったと同時に、この冷蔵庫を買った日のことを、めちゃくちゃ思い出してしまった。


***

1年半前。島根に引越す前に、地元にある『ライフとキミドリ』という中古の家具家電屋に足を運んだ。

そこで出会ったのが、私が今使っている『amadana』というブランドの、『2010年製』の冷蔵庫だった。

SHARP、日立など、いろんな中古の冷蔵庫が並んでいるなか、マットな白色に取手が木材というめずらしい冷蔵庫が、ぽつんと置かれていた。256L。価格は32000円。可愛いデザインなのに、大きさも値段も悪くない。

私はその冷蔵庫を吸い付くように見た。いわゆる一目惚れというやつ。

でも。冷蔵庫は毎日使うもの。中古で、しかも衝動で買っていいものなのだろうか?2010年、多分まだスマホは普及していなかったはず。しかも私はまだ小6のとき。その時代の家電?1年も使えば壊れるのではないか?と、優柔不断が作動。

重りのようにじーっと動かない私を見た店員さんは『この冷蔵庫可愛いですよね〜』と話しかけてくれた。

迷っている旨を伝えると、店員さんは笑顔でこう言った。

『冷蔵庫の取手って、絶対毎日触るものじゃないですか。そこが木材って、テンション上がりませんか?』

冷蔵庫は、ただ食べ物を冷やす機能のことしか考えていなかったけれど、こう言われて私は、冷蔵庫を開ける瞬間のウキウキ感をたくさん想像してしまった。

自炊のときに調味料を出す瞬間。作り置きのおかずを出す瞬間。キンキンに冷えたビールを出す瞬間。

取手を触りながら、たくさん想像した。毎日訪れる冷蔵庫を開ける瞬間がすごく楽しみになってきたのだ。

だから私は購入した。中古であり2010年製であること、そして送料が1万円することには目を逸らせて購入を決めたのだった。


***

引越し業者さんが来るまで冷蔵庫を掃除しながら、そうか、これは中古品であり、2010年製なんだなあと思い出した。なぜなら、1年半使った今でも正常に動作するし、中も新品と見分けがつかないくらいピカピカなのだ。


私たちはすぐに『新しい』が欲しくなる。12年前の家電を新たに買おうだなんて思わない。私はIT業界に勤めているからこそ、新しい物やサービスには敏感になってしまう。

でも私はこの冷蔵庫を使って、冷蔵庫を開ける楽しさを味わった。物を大切に扱うという、生活の基本を見直すこともできた。そして、リアル店舗で買う偶然の出会いに、とても感謝できた。

『新しい』ばかりを追っていたら、きっとこの大好きな冷蔵庫に出会えていなかっただろう。

中古品を探すって、めちゃくちゃ楽しい。

家電じゃなくても、世の中には古着や古本など、たくさんの中古品がある。私も頻繁にセカンドストリートやブックオフに足を運んでいる。

やっぱりこの冷蔵庫が、中古品の良さを教えてくれたのだと思う。


新しい生活がはじまって、不安と疲労感がまったく抜けない日々を過ごしている。でも今日も変わらず、amadanaの2010年製の冷蔵庫はそこにある。それが私の生活にとって、どれだけ幸せなことだろうか。





…置いてから気づいた。扉がキッチンと反対だ!

くっそう!両開きの冷蔵庫が欲しい!!!!!


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