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中国 江蘇省高級人民法院の営業秘密侵害民事紛争事件審理指南(2020年改訂版)

中国での営業秘密侵害は、年々増加の傾向にあり、主に元従業員による侵害事件が全体のほとんどを占めている。営業秘密侵害には、民事、刑事、行政での対応が可能であるが、民事訴訟での裁判所の審理手続きのガイドラインを制定しているのは、江蘇省高級人民法院のみであり、「江蘇省高級人民法院の営業秘密侵害民事紛争事件審理指南(江苏省高级人民法院侵犯商业秘密民事纠纷案件审理指南(修订版)」が2020年12月に改訂され、2021年より運用している。

ガイドラインの前文は、以下のようになっている。
「営業秘密侵害民事紛争事件審理指南」は2011年に発表以来、全省法院(江蘇省のすべての裁判所)の営業秘密侵害民事紛争事件の審理方針を統一、審判レベルの向上に重要な役割を果たしてきた。経済社会と科学技術の発展に伴い、新しい知的成果が絶えず現れ、ビジネスモデルが絶えず更新され、営業秘密を侵害する方法はますます隠蔽され、複雑になり、権利侵害の判断はさらに難しくなっている。「中華人民共和国反不正当競争法」は、2017年、2019年に相次いで改正され、「最高人民法院による営業秘密侵害民事事件の審理における法律適用の若干の問題に関する規定」も2020年に公布、施行されている。営業秘密侵害民事紛争事件を正確に審理し、営業秘密の保護をさらに強化するため、新しい法律法規、司法解釈に基づき、全省法院の知的財産権審判の実際と結びつけ、本指南を改訂する。

ガイドラインの構成は以下の通り
第一部 営業秘密侵害民事紛争事件審理の概要
第二部 営業秘密の審理と認定
第三部 営業秘密侵害行為の審理と認定
第四部 民事責任の負担
第五部 司法鑑定
第六部 刑事民事交差の処理
第七部 証拠保全と行為保全
第八部 訴訟における秘密情報保護

ご参考まで、最初の基本的状況は以下のように記載されている。
第一部 営業秘密侵害民事紛争事件審理の概要
1.1 基本的状況
 営業秘密侵害民事紛争は主に経営情報侵害紛争、技術情報侵害紛争及びその他のビジネス情報侵害紛争に分けられる。訴訟が起こされる原因は、一般的に、行為者が営業秘密を不正に入手、開示、使用、または他人に使用を許可することである。例えば、会社の従業員が他の会社に転職し、従業員自身或いは親族が別の会社を設立するとともに元の会社の営業秘密を漏洩、使用する。契約関係で相手方の営業秘密を知った後、秘密保持条項の約定に違反し営業秘密を侵害するなどである。訴訟において、原告の訴訟主張には、一般的に、その主張で確認を求める情報が営業秘密を構成し、被告に権利侵害の停止と損害賠償を求めるなどが含まれる。被告の抗弁理由には、一般的に、原告が主張する情報は営業秘密を構成しないこと、原告には当該営業秘密について権利主張する権利がないこと、被告は権利侵害行為を実施していないこと、原告の主張する賠償額に根拠がないことなどが含まれる。

全文を仮訳は、以下をダウンロードして、ご参照ください。

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