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中国 無印良品に意味のある二審勝訴(9月23日)

上海知識産権法院は、北京棉田紡績品有限公司(以下、北京綿田(上訴人、原告))が无印良品(上海)商業有限公司(被上訴人、被告)を第1561046号、第7494239号、第14130423号の商標権侵害で上海市普陀区人民法院に提訴した第一審((2020)沪0107民初2973号民事判决)の非侵害の判決に不服で控訴を受けた第二審((2021)沪73民終734号)で、上訴却下、一審判決を維持する判決を下した。
 
第一審原告の訴訟請求
1.第1561046号「无印良品、綿織物ほか」、第7494239号「无印良品、布地ほか」、第14130423号「無印良品、枕カバーほか」(いずれも24類)の商標権侵害の停止の判決:
(1)第24類商品の包装及び取引文書における「无印良品」の使用停止、
(2)公式ウェブサイトページ上部及びその他の目立つ位置での「无印良品」の使用を停止
を含む。
2.无印良品の中国のすべての店舗(直営店、加盟店を含む)の入口の目立つ位置、「无印良品MUJI」WeChat公式アカウント(MUJI _ CHINA)及び无印良品MUJI公式サイト(www.muji.com.cn)のトップページ及び見出しの位置に30日連続で声明を掲載し、その権利侵害行為による悪影響を排除する判決:
3.経済損失300万元、及び権利侵害阻止のための合理的支出75080元の賠償命令。

第一審裁判所は、原告の訴訟請求をすべて不支持とした。

第二審の争点
上訴人原告は、第一審の請求の再審、判決の修正を求めており、特に以下の行為を侵害と認定するよう請求した:
1.ネット通販商品の郵便小包の袋に「MUJI無印良品」(上/下)を表示し使用する行為;
2.公式ショッピングモールのショッピングリストの左上に「MUJI無印良品」(上/下)、裏面トップに「无印良品」を表示する行為;
3.公式ショッピングモールのホームページのトップ或いはその他の目立つ位置に「MUJI無印良品」を表示する行為。

本件での商標権侵害は、商標法57条(1)号の専用権、(2)号の類似商標・類似商品・役務の禁止権(誤認混同)の適用の是非になる。

第二審で、上訴人原告は上記登録商標の無効宣告請求裁定書や行政判決書を提出し、被告による訴訟請求の1.(1)(2)は24類の使用範囲に含まれ、35類の使用範囲に含まれないことを主張し、被上訴人被告は本件との関連性がないこと主張し、裁判所は質疑後に、追加証拠を採用しないとした。

二審裁判所は、以下のように判断を下した:
1.本件の被疑侵害郵便小包の袋は、被告が経営する小売店が不特定の商品を提供するために一括して郵便で使用する小包の袋であり、消費者に商品を郵送するために使用する商品破損防止のためのものであり、実際には店舗がサービスを提供する方法のひとつである。そのため、本院は受け入れない;
2.専門店が提供する雑貨商品の小売サービスでは、開設された実店舗やオンライン店舗の看板に「無印良品」または「MUJI無印良品」を設け、統一された買物リストや郵便小包の袋に「無印良品」などの標識が使用されているが、本件において、「無印良品」の実店舗や通販ショップや買物リスト、郵便小包の袋に表示された標識は、特定の商品の出所を示すことではなく、商品販売サービスの提供者を示すことを目的としている。そのため、事実と一致せず、本院は受け入れない;
3.被疑侵害の標識は被控訴人原告の自社の商品の小売サービスに使用されているが、控訴人原告の「无印良品」登録商標は第24類の商品に認可されており、前者のサービスと後者の商品とに類似商品とサービスの関係は構成されていない。そのため、被控訴人被告の被疑侵害行為は、控訴人原告の「无印良品」登録商標専用権を侵害していない。

本院は、被控訴人被告が商標の使用過程において、「無印良品」「MUJI」とその結合した標識を提供する雑貨商品小売サービスに使用し続けてきたことから、関係者がこの標識と被上訴人被告とその親会社の良品計画との間に安定した対応関係を構築してきており、すなわち、一般消費者は被控訴人被告が開設した「無印良品」専門店やオンライン店舗で第24類の商品を購入したとき、当該商品が控訴人原告に由来していると誤認混同することはないことを言及する。
 また、被上訴人被告が販売する第24類の商品には「MUJI」という商標が使用されており、被上訴人被告の使用方法は上訴人の登録商標「无印良品」の境界を合理的に回避しており、上訴人の逆に混同するとの主張は、事実根拠を欠いており、本院はこれを受け入れない。
 従って、第一審判決は正確で、本院はこれを維持し、終審判決とする。

【報告者の見解】
当然と言えば、当然の判決であり、特定の商品の専用のパッケージや包装でないものに商標や標識の表示や使用がある場合、上記の二審の2に記載の通り、事業者や販売店を示す目的で使用されていると判断することが通常の理解である。この点は、当サイトで2021年7月に報告した北京高級人民法院(2021)京民申2614号再審請求事件の争点1と2に対応しており、上海知識産権法院はその判決も当然確認しているため、同じ判決となったと理解している。そういう意味からは、北京綿田のこうした訴訟継続や再提訴は、中国で最近話題になっている悪意訴訟の一つの態様と言えると個人的には考えている。
 また、判決の最後に、現地法人の无印良品(上海)と親会社の良品計画の良好な関係や「MUJI」商標を使用した差別化をするとともに、専用店舗で24類の商品を販売することも、消費者に誤認混同を起こさせない対応をしていることの、ある意味言外に、必要十分な対策を行っているとの高い評価を判決文に書いてもらったことには大きな意味があると考える。もちろん、地元の上海で良い判決が出されたとの判断もある。しかし、当職の経験からは、最近の中国の嫌日の雰囲気もあるので、しばらくは反転攻勢をかけることなく、粛々と、MUJIと無印良品のみを活用し、中国での事業を継続することが中国全体での良い評価につながると理解している。
 中国の民事訴訟は二審制のため最終判決となるが、再審請求の機会は残されている。再審請求があった場合は、悪意訴訟のモーションもありか・・・と考えるが、北京綿田はそろそろやめ時が来ていると理解するべきであろう。

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