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中国  良品計画「無印良品」商標権侵害勝訴(7月6日)

「無印良品」の商標で事業を展開している株式会社良品計画が、中国企業に先取りされた「无印良品」の商標権を巡る争いの第二弾で勝利したことが、7月14日に北京裁判所サイトで公示された。

問題を起こしている北京棉田紡織品有限公司(以下、棉田)と北京无印良品投資有限公司は最初の事件で勝訴後、第二弾として、株式会社良品計画の中国現地子会社である无印良品(上海)商業有限公司(以下、無印良品上海)と无印良品(上海)商業有限公司北京朝阳第三分公司(以下、無印良品北京)を「无印良品」登録商標第156446号(24類)、第7494239号(24類)の綿製品、タオル、布団、織物、ハンカチなどの専用権を侵害したとして、2019年に北京市朝陽区人民法院に使用停止と300万元の損害賠償を請求した。本件は、本第一審と北京知識産権法院の第二審ともに非侵害の判断を下したために、原告はこれに不服で、再審請求を北京高級人民法院に申立てていた。この再審請求に対して、北京高級人民法院は7月6日付の民事裁定書で、第一審、第二審の非侵害判決を追認し、再審請求を却下した。これにより、棉田による良品計画の商標乗っ取り計画は一応挫折した感じである。

第一審事件:北京市朝陽区基層人民法院(2019)京0105民初27092号
 2018年9月、原告は、無印良品北京が「タオル」「フェイスナプキン」「薄い布団」などの商品を販売し、店頭の看板や商品の包装袋、取引文書などに「無印良品」を使用していることを確認し、「无印良品」登録商標第156446号(24類)、第7494239号(24類)の専用権を侵害したとして、
1.被告に当該登録商標の使用の停止、
2.無印良品上海入口、WeChat、ECサイトの旗艦店の目立つ位置に30日間の影響の除去の掲示、
3.損害賠償300万元、合理支出64,653元の支払い
を命じる判決を申立てた。
争点
1.「无印良品」と「無印良品」は類似するか;
2.被疑侵害行為が登録商標第156446号(24類)、第7494239号(24類)の使用に該当するか。
第一審裁判所認定
争点1:无と無とは、簡体字・繁体字の関係にあり、類似する。
争点2:無印良品北京は、タオル、布団のほか、文房具、食品、家具、服装、電気製品、化粧品などの各種商品を販売しており、タオルや布団などの専門店ではなく、多様な雑貨を販売する百貨店に該当する。このため、看板に「無印良品」を使っているが、タオルや布団などの商品と一対一で対応するように使用されているとは認められない。また、買い物レシートの先頭に「MUJI無印良品」と印字されているが、どの商品の販売でも統一して印字されているため、タオルや布団などの商品に使用されているとは認められない。包装袋には「MUJI無印良品」以外に他の文字が印刷されておらず、また、消費者が商品を選んで購入決裁時に自由に使用することができるようになっている。また、包装用の紙袋などは16類の指定商品であり、良品計画が保有する登録商標第4471270号が合法的に使用されている。
 以上により、第一審裁判所は原告の主張を支持しないとの判決を下した。
(2019年8月23日)

第二審事件:北京知識産権法院(2020)京73民终1601号
 第一審判決に不服の原告は、判決取消を求めて控訴した。争点は同じ。
第二審裁判所認定
争点1:无と無とは、簡体字・繁体字の関係にあり、類似する。
争点2:第一審と同様の判断を示し、その認定に誤りはない。
被告が看板に「無印良品」を使用する行為は日用雑貨販売サービス“销售日杂百货服务”(35類)と認定できる。
 以上により、第二審裁判所は控訴棄却、原審維持の判断を下した。
(2020年12月29日)

再審請求事件:北京高級人民法院(2021)京民申2614号
 第二審に不服の原告は、再審請求を申立て、2021年4月6日に受理された。争点
1.看板に「無印良品」を使用する行為は日用雑貨販売サービス“销售日杂百货服务”(35類)との認定には錯誤あり。
2.商品販売に付帯する包装袋は独立した商品ではなく、商品ブランドの宣伝で、第16類での使用ではない。
3.先判決(2018)京民終171号、(2018)京民終172号判决と同じ状況で、重複した権利侵害である。
再審裁判所認定
争点1.被告の販売状況から多様な雑貨を販売する百貨店に該当しており、店舗の看板使用の位置、利用の方式、店舗サービスの内容、実際の販売商品の状況及び関連公衆の通常の認識によって、看板での商標の使用はある一つまたは特定の種類の商品だけを指すことは不可能で日用雑貨の販売に使われたため、主張は当たらない。
争点2.商標法で規定される商品の包装は主に商品の製造過程において商品の流通の利便性のために行われる包装を指しているが、本件の包装袋は不特定の商品のために販売前に印刷されたもので、店舗ではよく行われる使用方法である。特に、登録商標第4471270号の保有や「MUJI無印良品」のみを記載するなど合理的で、消費者に誤認混同が生じない。
争点3.事情が異なり、主張の根拠が欠ける。
 以上により、再審請求を却下する。
(2021年7月6日)

上記の解説に良品計画が35類に「無印良品」の登録商標を保有していることを記載していない。これはその指定役務が適切でないために十分な抗弁に活用できなかったためである。しかし、棉田が35類に登録商標を取得できない状況があるのは、非常に大きな意味がある。日本企業は中国で35類の取得が小売り制度がないと判断し不十分である、しかし、指定役務の表現方法を理解し、ECサイトの運用を含めて、適切に取得しておくことが肝要、不可欠です。どうぞご検討ください、必要に応じて当方にご相談ください。

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