中国特許法第4次改正内容(2)

現在、中国では特許が十分適切に使用がされておらず、日本でいう「休眠」段階にあるものが70%を超えると言われています。中国政府は特許の事業転化や使用を促進することは、無形資産である特許の役割を十分に発揮させ、市場での価値を実現し、実体経済のイノベーションと発展を強力に支援することになると考えており、今回の特許法改正では、特許の転化と使用を促進し、行政も特許転化に関するサービスレベルを向上させるために、以下の3項目を新たに導入しました。

(1)職務発明規定の改正(第6条、第15条、第72条)
 中国の職務発明は会社に帰属するため、職務発明規定は会社と発明者の権利と利益の分配を調整する制度として機能しています。中国政府は特許権の運用実施を積極的に推進し、イノベーションの環境整備とニーズに対応するために、今回の特許法の改正では、会社の職務発明に対する合法的権利としての処分や権利行使の権限(第6条)を新たに追加する一方、特許権を取得した会社は財産権を運用した成果を発明者に報奨する方法を具体的に示し、報奨の実施を奨励する(第15条)ことで、さらに発明創造と普及応用が進み、科学技術のイノベーションがさらに社会に貢献することを期待しています。
 従来の特許法では、上位法の契約法などが発明者や創作者(以下、発明者という)に対する公平な保護のために優先権を認めています。つまり、会社が成果物を自由に処分する前に発明者に要否確認しなければならないとか、ライセンス未実施の特許に発明者は優先的にライセンスを受ける権利を認めなければならないなどの優先的権利があると理解されています。こうした優先的権利を制限する改正を今回特許法に追加し、企業に自由な処分権限を認める代わりに、発明者には十分な報奨を行うことを強く奨励するために、具体的な報奨方法を例示しています。民法典が2021年1月に施行されると特許法が優先的判断基準になるために、こうした改正には大きな意味があり、企業は社内規定などを見直し、適切な対応をすることが求められます。
なお、この改正に合わせて、非職務発明やその他の発明者の権利に関する規定(第72条)を削除しています。

(2)公然許諾制度の導入(第50~52条)
 公然許諾(オープンライセンス)制度は特許の転化を促進する重要な法律制度で、その目的は特許権者が所有する特許権を一般に開放することを奨励し、需給の調整と特許の実施を促進し、本来の特許の価値を実現することにあります。この制度はヨーロッパ諸国で良く用いられており、ライセンスオブライト(License of Right:LoR)と呼ばれ、特許庁にオープンライセンス手続きを採ることで、特許年金が半額になる予算的措置も伴うものとなっています。
 今回の特許法の改正は中国の国情に基づいて、オープンライセンスの声明とその発効の手続き要件、ライセンシーがライセンスを受ける条件と義務及び相応の紛争解決ルートを規定しています。当初含まれていなかった年金額の調整は最終的に第52条2項に設けられました。
とは言え、中国での技術移転は技術輸出入管理条例及び民法典に関連の規定があり、ライセンサーには付随する義務が多くまたノウハウの流出も伴うことから、ヨーロッパ諸国でのように簡単に通常実施権を無制限に供与することはできずらいことに注意が必要であり、よくよく考えて対応することは不可避です。

(3)特許情報公共サービスの充実(第21条、第48条)
 タイムリーな特許情報の公開、普及、使用は、イノベーションの活動を改善し、重複した研究開発を減らし、他人の特許権侵害を回避するなど、事業活動に非常に重要です。社会一般のニーズにさらに対応するために、特許情報のサービス体制を体系的に整備し、特許法の改正により、行政機関による基本的な特許情報サービスを強化し、特に、特許の実施と利用を促進するための責任を明確にしています。

以上、ご参考まで。

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