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中国法院知識産権司法保護状況(2022年)を発表、前年比20%減少!

最高人民法院は、4月20日付、記者会見を行い、「中国法院知識産権司法保護状況(2022年)」と「2022年中国法院10大知識産権事例と50典型知識産権事例」を発表した。会見では、知的財産権の①司法保護能力とレベルの向上、②司法保護メカニズムの健全化、③イノベーションの保障による科学技術強国建設、③行政との協同保護強化、⑤国際協力と国際的影響力を拡大について説明しているが、民事第一審の受理件数が前年比20%減少した状況については一切言及はない。行政や刑事での対策が増加していること、賠償額の増加や厳格な処罰が侵害の歯止めになっていることが感じられるが、減少している商標や著作権紛争はインターネット上の侵害が多く、事業者の対策も功を奏していると思料できる。

(1)最高知識産権法廷事件
 2022年最高知識産権法廷の民事事件の受理は3,786件(前年4,243件、▲10.77%)、処理は3,073件(前年3,557件、▲13.61%)とそれぞれ減少した。また、行政事件の受理は1,456件(前年2,852件、▲48.95%)、処理は1,542件(前年2,487件、▲38%)とそれぞれ減少した。

(2)民事訴訟事件
 2022年、地方の各クラス人民法院は民事一審事件を438,480件受理し、前年に比べ11.2万件、▲20.31%減少した。このような減少は初めてである。内訳は下記の通りであるが、商標権侵害事件が1.2万件、▲9.82%減少、著作権侵害事件も10.5万件、▲29.07%と大きな減少となった。特許侵害事件は7千件、+23.25%、不正競争事件も1,000件弱、+11.51%増加している。審決は、第一審457,805 件と前年比▲11.25%減少した。第二審の受理も2,560件と▲5.22%減少、処理は46,563件と+2.41%増加した。

(3)行政訴訟事件
 2022年、地方の各クラス人民法院は行政一審事件を20,634件(前年20,563件)受理し、前年比+0.35%増加した。この内、特許事件は1,876件(前年1,810件、前年比+3.65%)、商標事件は18,738件(前年18,734件、前年比+4件)、著作権事件は12件(前年19件、前年比7件減少)である。処理も17,630件と前年比▲8.85%減少している。第二審の受理は5,897件(前年8,215件、前年比▲28.22%)、処理は結審7,285件(前年7,418件、前年比▲1.79%)である。原審維持率は5,518件(前年5,636件、前年比▲2.1%)と減少したが、全体の構成比では75.74%と増加した。

(4)刑事訴訟事件
 2022年、地方の各クラスの人民法院は刑事一審事件を5,336 件(前年6,276件)受理し、審決5,456 件(前年6,046件)処理し、それぞれ前年比▲14.98%、▲9.76%減少した。その内、登録商標類侵害事件は4,971 件(前年5,869件、前年比▲15.3%)、著作権侵害事件は304件(前年333、前年比▲8.715%)とそれぞれ減少している。第二審の受理も979件(前年1,050件、▲6.76%)、処理は審決977件(前年997件、2.01%)と減少した。

報告書は、2022年度の特徴として、商標と著作権紛争が大きく減少していることに言及はなく、技術類事件数が持続的に上昇し、中西部などでの事件数がおおく、江蘇省では技術類の権利帰属と侵害紛争事件1,817件(前年比+17.61%)を受理した。そのほか、南省、河北省、遼寧省、江西省、湖南省、黒竜江省、新疆生産建設兵団などで前年を22%か倍増の増加を示している。

参照サイト:https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-397102.html
報告書 https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-397082.html

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