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【KY29】伸びるDX銘柄の見つけ方


デジタルトランスフォーメーション?

DXとコンサルティング

私は売れっ子ではないので、コンサルティングで色々やっています。生産性向上や働き方改革の案件も、ありますよ。

コンサル先の60歳以上の役職者を相手にしつつ、彼らアナログ世代が「これからはDXだ」と言うのを聞くたびに、アナログとデジタルでは互換性はないのだ!貴方がいなくなることがDXなのだ!と心の中で叫んでました。

まあ心の中でしか叫べない小心者ですが、今回はとある大学病院の事例をピックアップして、お話ししようと思います。

生産性向上とDX

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何でしょうか?

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること(経済産業省より)

だそうです。難解でよく分からないです。
簡単に、デジタル技術を使って生活やビジネスを良くする
ぐらいに理解しておけばよいと思います。

ビジネスを良くするとは何かなのですが、端的に生産性向上のことを指します。

DXの一丁目一番地

アベノミクスのときに、積極的に生産性向上が国策テーマになりました。
しかし、生産性向上が何なのか、なぜ必要なのか、ほとんどコンセンサスがないまま進んだため、いまだ混乱しています。
諸外国と比べて(日本は労働時間が長いとかで)、生産性が低いから何とかしろとか、あまりスッキリしない議論が多いです。

生産性=OUTPUT(産出)/ INPUT(投入)
要するに投入(分母)を少なくするか、産出(分子)を大きくすればいいだけです。
当たり前のことなので、だからなに?ですよね。

そもそもこの式が間違いなのです。
式を展開すると、下記の通りになります。

生産性は独立変数であって、従属変数ではない、というのがポイントです。
この式から次のことが言えます。

  1. OUTPUT(≒付加価値)を高めるために、生産性を高める

  2. INPUT(≒人手不足や高齢化)が減少しているから、生産性を高めて補う

特に2の方が大事です。なぜなら、日本社会が直面している課題に対する解決方法が、生産性の向上であり、国策テーマとなるからです。

働き方改革とDX

例えば、高齢者や子育て中のシングルマザー、障がいを持った人でも働けるよう、ICTを導入することや、AIテクノロジーを活用すること、ロボットが危険作業をすることで自動化を進め、人が無理せずとも働ける環境を作るということです。

端的にいうと、人に優しい社会を作るためにDX化を進めることであり、人が主題になるということです。
したがって、DXによる生産性向上とは効率化が目的ではなく、付加価値を向上させることが目的となるということです。
つまり働き方改革とDXは、親和性が高いということです。

業績が伸びるDX銘柄の見分け方

このように見てくると、伸びるDXは働く人(エンドユーザー)が泣いてよろこぶような、やりがいにつながる、導入してよかったと思える、製品・サービスだということです。
そして効率化だけでは人は動かず、ポジティブな側面(給与・待遇・職場環境の改善・コミュニケーション・福利厚生・やりがいなど)にどれだけ影響を及ぼすかで、成果が変わります。

またDX銘柄はB to Bビジネスなので、その先のto Cまでコミットできれば、ものすごく強いです。
例えば、自治体DXであれば「社会インフラの安全性に貢献する」ことや、営業DXであれば「お客様の潜在的ニーズの発掘」とか、建設DXであれば「環境負荷の低い建築」、直接の顧客だけでなくその先のto Cの付加価値にコミットできれば、大きく伸びることが期待できます。

つまり伸びるDX銘柄の見分け方として、付加価値として何を顧客(主にエンドユーザー)や社会に提供できるかに着目すると、分かりやすいです。
効率化ばかりにフォーカスしているDX企業は、あまり伸びないと思ってよいです。

プラットフォーマーのDX

もう一つ、大事なポイントとしてはプラットフォーマーになれるか、という点です。
例えば建設業だと、大手ゼネコンは下請けまで垂直的統合ですし、自動車業界だとケイレツとなっています。

このようなクローズドな業界の場合、特に企業のコアコンピタンスに関わるDXだと、プラットフォーマーになりにくいです。
建築・設計CADソフトのDXや、工場のオートメーション化のDXは、営業秘密に属するものも多く囲いたがるので、業界の統一規格がある場合を除くと、プラットフォーマーになりにくいです。

それに対して、一般的なチャットツールなどのコミュニケーションツールのクラウドサービスなどは、プラットフォーマーになりやすいです。

本業のDX

最近は、DX銘柄も出尽くし感が高く、割高なものが多いです。
ある著名なエコノミストが述べていたことなのですが、金利(リスクフリーレート)が上がってくると、高PER銘柄のリスクプレミアムに割高感が強くなるので、今後は伸びが鈍化するとのことでした。
単純化すると、金利が上がれば比較的安全に儲かるバリューの方が良くて、あえてハイグロースを選ぶ必要がないと言うことです。

私もこれについては共感するところが多いです。
したがって、私はバリュー銘柄の中で積極的にDXに取り組んでいる銘柄を物色しています。

例えば陸運業や建設業などで、積極的にDXに取り組んでいる企業です。
こちらの方が伸び代は、大きいと見ています。

医師の働き方改革

とある大学病院の実態

ここまで色々DXについて書いてきたのですが、読者には分かりやすいよう私の経験をシェアします。

医療DXは国が積極的に進めていることもあって、割とテーマ性が強いです。
その本丸的な位置付けにあるのが、医師の働き方改革です。
内容は今まで、ほとんど規制しなかった、医師の時間外労働時間をなるべく年間960時間に収めようということです。

とある大学病院の実態を調査していたのですが、事務長にヒアリングすると
「うちは大丈夫です。しっかり管理しており、ほとんど残業はありません!」とのことでした。

まあそんなことはなくて、大学病院の医師は臨床(患者さん相手)と研究をやっていて、病院だけでなく大学にも籍を置いています。なぜなら一人前の医師になるには、それなりの研鑽期間が必要で、医師免許以外に専門医資格などがあり、勉強することが必要だからです。

事務長にその点を確認すると「医師の研究は、それぞれ皆さんプライベート(労働ではない)でされていることです」とのこと。
ん?研究は、臨床で診た患者さんの研究だよね?それって業務だよ、と私は心の中で思ったものの口には出しませんでした。

しかも大学病院の給与は薄給で、ほとんどの医師はオーバーワークの上にオーバーワークで、副業としてアルバイトをしています。
こちらは割りがいいのですが、オーバーワークです。

医師の働き方改革は形骸化しており、無茶苦茶なんですよ。

働く人が幸せになれるか?

このような点を踏まえると医療DXは、医療従事者(エンドユーザー)が主役であり患者は脇役なのです。

したがって医療DXの銘柄を選ぶ場合は、医療の質向上とか国家財政がどうかとかではなく、医療従事者にとってどれだけベネフィットがあるかを検証することが大事です。

遠隔診療と医療DX

遠隔診療は伸びるのか、という点について書いてみようと思います。

結論だけいうと、ダビンチ(インテュイティブサージカル)のように遠隔から手術ロボットを操作するシステムは、メチャクチャ伸びると思います。
しかし遠隔地からビデオで診察するシステム(以下、遠隔診療)などは、それほど受け入れられないと思います。

理由はいくつかあります。

医師や看護師など医療従事者は、使命感や責任感が人一倍強く、患者さんや地域の人から感謝されることに、本当にやりがいを持っています。
彼らは患者との直接のコミュニケーションを、とても重視しています。
最近は手術をしない内科医が増えており、触診などの直接の診察行為に誇りを持っています。
この点が、遠隔診療が好まれない一つの理由です。

医療業界全般ですが、お金のことを言うのは嫌な割には、お金のことをとても気にされます。
半数以上の病院が赤字なので、経営環境が厳しいです。
遠隔診療は手間が掛かる割に、診療報酬が低いので嫌がられています。

また診療所の商圏は狭く、各診療所は競合しないよう立地することが多いです。つまり暗黙の了解として、彼らは棲み分けをしているということです。
遠隔診療は今まで築いた優位性を、根幹から崩すので業界としても積極的になりません。

遠隔診療はビッグデータを収集することが、最終的な目的であることが多く、この点が好まれていないことも理由です。
病院の医療情報システムは、ほとんどオンプレ型であり、アドオンにアドオンを重ねています。いまだカルテに手書きなんていう病院もあります。
これだと非効率なのでは?と思うかもしれません。

しかしこの方が都合がいいのです。医師は先生業ですから、情報を共有化すると他人にあれこれ言われるので、嫌がります。
日本では自分のカルテすら、見られないのです。法律上は見られるのですが、現実はカルテそのものを見るのは難しいです。

つまり患者データのデジタル化に、消極的です。

最近はデジタル庁が電子カルテのプラットフォーム化を進めていますが、私は相当ハードルが高いと思います。

まとめると、遠隔診療は効率性にフォーカスしており、付加価値にフォーカスしていないのです。
米国のような広大な土地の場合や、医師の数が少ない場合や、医療がビジネスとして一般的に認識されている場合など、そのような背景があれば定着すると思いますが、日本はそうなっていないのです。

医療DX銘柄の選び方

ポイントは、医師や看護師などの医療従事者が泣いてよろこぶような、製品・サービスであるかということです。
生産性向上も、エンドユーザー(と社会)にどれだけ付加価値をもたらすか、で判断すべきということです。

皆さんもそのような視点で、医療DX銘柄を探してはいかがでしょうか?

以上、今回はここまで。また次回よろしくお願いいたします。

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