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#わたしと海

音楽を聴きながら書いたので
流しながらお読み頂けたら幸いです。

拓郎の元気がない
どうしたんだ?と尋ねても
いつもは悪態付き合う関係なのに
俯いたままだった

ふとキャンパスの方をみると
拓郎が想いを寄せていた人が
別の異性と明らかなマーブル模様

あーはん。失恋したな

それ以上尋ねることもなく
ただ一緒にいて
帰り際食堂にいって飯を食った。

貧しい学生にとって
安いレトルトのカレーは最高だった
普通に食欲のある拓郎に少し安堵した

拓郎の家にいき
なんとなくだけど
彼の所持しているマンガを読んでいた

Bバージンってやつ

この頃二人は
スピッツのナンバーから
チェリー的な二人だったけど

なんとなく気になっていたから
でももしかしたら
邪魔かもしれないから
帰ろうとするけども

なんか変に引き留められる
なら一緒にいようと思ったんだ

この頃って時間関係なかったから
拓郎の家でそのまま
眠ることも多かった

「海にいきたい」

不意に拓郎がいいだした
青春しているなぁー俺達
と思った記憶は今も生々しく残る

「俺の車でいく?」

すっかり夜中で
大学は陸の孤島
ある程度様になる海までは
2時間くらいはかかる

着いたときには4時か5時か
そろそろ明るくて
向こうにはサーファーのグループ

なんとなくこの頃は
サーフィンをしている人たちは
夕方ナイフで威嚇し合い
夜は乱交パーティーしている
変態達の集いだと思っていた

偏見ならば凄かった。

要するにそれだけでビビっていた

なるべく彼らから離れた
砂浜にたどり着き
サーファーからも
確認できるくらいの位置だけど
邪魔にはならないくらいの距離

もし、追いかけられて
乱交パーティーに誘われたら
断る理由はない

「海に入りたいなぁ」

海パンとかないけど
まぁ奇麗な車でもないし
4時に明るくなる時期は
当然夏だから

トランクスで泳げばいいか
どうせ直ぐ乾く
なにより拓郎が望むなら
落ちてる時くらい賛同してやるさ

だが、この時は知らなかった
サーファーが来るような場所だから
波は凄い。

そして最初は浅瀬だけど
だんだん体を持っていかれる
それでも幼少期スイミングスクールにも
入っていたので

泳ぐことはできるのだけど
無知にアクシデントはつきもので
波は容赦なくもっていってしまった

トランクスを
海パンは海パンで成立するを知る
波の中ではトランクスは一瞬だった

拓郎はというと
ジーパンそのままだった

お前、人の車だからって・・・
帰りのことを心配するよりも
先にテンパった

今、この地球ときゃらをは
一つに結ばれた
イブの背中を必死に叩き
林檎を吐き出させたときに

人類は衣類を忘れることで
エデンの園に帰郷することができる
ただ帰郷したのは俺だけだった

サーファーはあいかわらず
サーフィンをしている
足場が安定している場所まで
もどってくるが
腰から下は当然海中にある

車までの距離は100m~200mか

それはケースにより
通報されて逮捕される可能性

けど、ことここに至りては
どうすることもできない

先に陸にあがっている拓郎に
大きい声と上半身だけの小ぶりな
ジェスチャーをするのだけども
波の音にさらわれる

ミーのヘルプは届く事がない

何度かサーファーが
近くないタイミングを探るけども
正直タイミングは掴めなかった

こうなればアホになるしかない
焦点の定まらぬ顔をつくり
100mから200m砂浜を全力疾走した

このとき
高速で走っている感覚なのに
何故か玉はゆっくり右へ左へ
スローモーション

こんな走馬灯なら聞いたことはなかった

幸いサーファーの人たちは
俺達にまるで興味はなく
もうそのまま運転席に乗り込んだ

ズボンはあるから
ズボンを履いたとき
砂がついているから帰り道
常に気持ち悪くて
テンションはだださがりだったけど

拓郎は帰り道
ずっと笑っていた
それだけが唯一の救いだった

#わたしと海

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