歳を超える

30歳になった。
30歳はもう大人だ。すごく大人だ。

17歳の考える30歳は家庭を持って子供が小学生ぐらいで家を買って、仕事は電車通勤の20分圏とかでなんか別で株とかやってんだ。
で、なんか、なんか、なんか。すごいんだよ。


2024年になった。
去年、1人で過ごした年末。
友人達と過ごすはずだったのだけどそれも叶わなくて。
実家に帰るねって言ったから。
実家の父はすごく眠いんだよ〜といって寝てしまったのだ。
体調が悪かったのに。私は見ないふりをしたんだ。
だから1人だったんだ

そして本当に今年はたった1人になってしまったものだから。

30歳になったのに、どうしてひとりなんだろうな。
30歳になったのに、どうしてひとりがかなしいんだろうな。

と、思いふけながら年末の夜にとんでもない夢を見た。

「ジャーン!実は!母!生きてたんです!」という夢。

母と父と犬が死んだ家で、父の遺品が溢れる家でそうじをしていたら

もう少しだけ朧げな記憶の、ただまだかろうじて残る記憶の中とは少し違う
ぼんやりとした顔、少し高めな声、そして服装とで母がやってくる。
ついでに親戚一同が突然やってきて
「ねえねえ!ーーのお母さんだよ!生きてたんだよ!嘘だったの!死んだのなんか!」

と、まあなんととんでもない悪夢を見てしまった。

「2020年までね、お母さんも自分が死んだと思ってたんだよね〜!」
と、悪夢の母が笑うので「え、じゃあさ、これから一緒に暮らせるの?」
と、常軌を逸した夢の中の純粋な私が聞く。

「ううん、お母さんは好きな人と暮らそうかな」

と母が顔はぼんやりとしたまま答えた。

せめて優しくしてくれよ、と思いながら。
起きても寝ても、もう誰もいないのにね。

歳を超えてしまったから。
もうしっかりとした判断ができる、そんな判断をしないといけない大人になってしまったから。

「お母さんの夢見たんだよ!」なんて、誰に言ったところで。
そんな判断ができる大人の歳に、ところてんみたいに押し出されてなったから。

ちなみに本当にみんないなくなってしまった家を片付けていたら
小さなネズミが1匹、私が先日仕掛けた毒を食って、さらに鼠取りに引っかかって「きい」と鳴いて死んでいった。

きいと鳴いたのは、わたしが鼠取りに捕まってもがくその姿に耐えられなかったので、折りたたんで踏んだからだ。断末魔。

30歳になったら、家庭を持って子供が小学生ぐらいで家を建てて仕事は電車通勤の20分圏とかでなんか別で株とかやってると思ったんだけど

30歳になった今、なんか夢もまあまあしんどいなと思いながら
死んだネズミを折りたたんで可燃ごみに出してるとは
もう誰も思わなかったんだろうな。


北陸地方の皆様に、どうか幸せなことがありますように。


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