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レポート課題S評価「睡眠と覚醒について論述せよ」

 人間は周囲の環境から刺激を受けることで脳に意識が生じる。意識には水準があり、高い水準を「覚醒」といい、意識がはっきりしていて、脳全体が広く興奮し活発に活動している状態や自律神経の変動が大きく、全身の代謝が高まっている状態を指す。この覚醒の意識水準が一時的に下降し、抑制が大脳皮質や脳幹に及び、感覚や反射機能などの生理機能が低下、意識は喪失しているが容易に覚醒しうる状態を「睡眠」という。

 覚醒―睡眠の意識水準は、思い切り感覚を研ぎ澄まして緊張している状態から、ぼんやりリラックスしている状態、ウトウトまどろんでいる状態、熟睡している状態までつながっており、心や身体の機能もそれに合わせて変化していく。

 脳幹を通る神経線維である網様体は覚醒のコントロールに関係が深く、上行性の網様体賦活系は外部刺激を検知し、脳全体を活性化させるため、人工的に網様体賦活系を刺激すると動物は覚醒状態となり、損傷を与えると昏睡状態になり、やがて死に至る。

 視床下部は睡眠と覚醒の中枢であり、大脳皮質からのコントロールを受けているとされているが、視床下部のさらに深い脳底にある視交叉上核は、両目の視神経が交わる場所の少し上にあり体内時計のリズムをつくり出していると考えられている。

 この体内時計のことをサーカディアン(概日)リズムといい、仮に外界の昼と夜の周期を分からなくしたとしても、一日をおよそ24時間として身体の働きを調節している。身体機能は一日の間に周期的な変化があり、体温が高くなるほど高いパフォーマンスを発揮できると考えられ、反対に体温が低い時間帯に人は眠りやすくなる。

 意識水準には様々な程度があるが、覚醒状態と睡眠状態の区別は明確に分けることができる。脳波を測定することによって睡眠状態は4つの段階に分けられ、第1段階が最も浅く、第4段階が最も深い睡眠状態である。第1段階の睡眠状態では、REM(rapid eye movement)と呼ばれる眼球の急速な運動が起こり、夢をみることもある。この状態をREM睡眠、または動睡眠といい、脳幹内にある橋が身体の動作を抑制し、皮質や皮質下では記憶の整理や神経回路網の構築、試運転、整備点検ともいえる心的活動が行われているが、人がなぜ夢を見るのかは十分には解明されていない。また、REMを伴わない睡眠をノンレム睡眠と呼び、第3と第4段階の睡眠のことを徐波睡眠と呼ぶ。

 人がなぜ睡眠を必要とするのかは完全にはわかっていないが、睡眠中に再回復、再貯蔵を行っており、睡眠不足によって心身ともに不調をきたすことは事実である。動物の場合、長時間寝ずにいることで最終的に死に至ることがわかっており、人間の断眠実験では、注意力の減退や免疫力の低下、幻覚、被害妄想、誇大妄想といった精神不安定な状態が生じた。

 人間の一日に必要な睡眠時間は7~8時間であり、サーカディアンリズムによって覚醒と睡眠のリズムが形成され、足りない睡眠時間の分は後続の睡眠の質と量によって補われ、眠らない時間が長ければ長いほど強い眠気が生じる。睡眠欲求の高い状態では、脳内あるいは体液内に数十種類の睡眠物質が出現し、覚醒を抑制、睡眠を誘発、維持させるはたらきをしており、ニューロン活動と睡眠物質の相互作用のもとに睡眠と覚醒の状態がコントロールされている。

 動物の種類によって睡眠時間は大きく異なり、食べ物が得やすい環境にある動物はのんびり眠ることができると考えられている。一方で、寒い時期をあえて行動せず、冬眠によってやり過ごそうという動物もいる。睡眠と覚醒は視床下部でコントロールされ、脳幹や網様体賦活系との相互作用により、生存環境と目的に合わせた、身体活動の適応的なモードチェンジであるといえる。

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