個性がないなんて嘘だ

「僕どうしたら良いんだろうな。」

「何が?」

「いや職場で最近の若者は個性がないとか自分がないとかよく言われるんだよ。僕も自分に対して個性がないなって思うんだ。別に僕は誰かに比べてすごく抜きん出てるわけじゃないし、すごく優秀な営業マンってわけじゃないからさ。だから言われることも分かるんだよね。」

「いやいや僕からすればむちゃくちゃ個性あると思うよ。」

どこがなんだろう。そんな数字も結果も出してないのに。

「そうかな?僕には分からない。」

「だっていくら好きな漫画だからって休みの日となれば1日中読んでいる人間なんてそうそういないし、ひたすら漫画のことばっかり考えてる人間なんてそうはいないよ。」

「まあそれはそうかもしれないけど。」

「これが個性じゃなくてなんて言うの?漫画が大好きで、これに命掛けてますって感じやん。そんな人間僕は他に知らんからね。だからちゃんと個性はあるし、個性が一切ない人間なんてそもそも存在しないって。それは知ろうとしていないか、その個性を上手く出せていないだけ。僕はこういう人間ですって言えてる?」

「いやこれまで大体距離を置かれてきたからあんまり漫画のことは話してない。ただ相手の話をふんふんって聞いてるだけ。だから全然面白くもないんよな。」

相手も漫画が好きなら話も盛り上がるけど、大抵はそこまで興味がなかったり、知っていてもメジャーで流行っている作品ばかりだから合わないんだよな。もう諦めてるっていうのが自分の心理の中では1番的を得ている。

「そうだろうなと思った。まあ分からないでもないよ。それだけ漫画にのめり込んでいる人間なんてほとんどいないからさ。でも漫画好きの会なんてあればいくらでも盛り上がれるんやろ?」

「そりゃあもちろんそうなるやろうな。相手が僕以上に知っていたら喜んで話を聞きたいし、もしそうじゃなかったとしても僕は相手の話を率先して聞きたいよ。だって普通に楽しいもん。」

「よし、じゃあこんなのはどう?メジャーな作品は好きな漫画だから読むことに不満はないだろうから、そこは触っておく。それで話せるポイントを作っておく。これはあくまで外向け。
そして自分用には好きな作品を今まで通りしていく。それで自分発信でそういうコミュニティーなんて作れば、自分もそこに来てくれた人も楽しくない?僕がもし漫画好きだったら絶対入りたいと思うけど。」

「なるほど、そりゃあ良いや。ちょっと作ってみるわ。」

今までは個性がないなんて言われてきたけどそんなこと全然ない。僕だって全然個性があるし、むしろ個性が強い部類かもしれない。それを相手は知らないし、知ろうともしないだけ。
それからそういう人と溶け込むのも大事だけど、別で自分が溶け込みやすいコミュニティーを自分で作れば、それは自分にとってもそこに来てくれた誰かもお互いが幸せになる。

僕はこんな世界の方がずっと良い。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
小説家として活動している藪田建治でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?