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【投球前の静的ストレッチはパフォーマンスを低下させるのか?】

〈はじめに〉

野球選手のウォーミングアップの一環として、反動をつけずに筋肉を伸ばす静的ストレッチが取り入れられることが多いと思います。

静的ストレッチは筋力や瞬発力(ジャンプ高など)を即時的に低下させると言われることが多く、運動前は反動をつけながら伸ばす動的ストレッチを推奨する人も多く、最近では「運動前には静的ストレッチはしない」というチームや選手もいるようです。

しかし、そのような研究報告は直接競技のパフォーマンスを測定したものではなく、またストレッチ直後すぐの変化を表しているものが多いです。

実際に野球のパフォーマンスにはどう影響するのでしょうか?

そこで今回は野球の投球前における肩の静的ストレッチが球速やコントロールに与える影響を調べた研究報告1)を紹介します。


〈方法〉

対象は大学野球選手12名(平均年齢20.3±1.1歳)で、投球前に静的ストレッチを取り入れる日(実験条件:SS)と取り入れない日(対照条件:NS)の2回測定が行われました。

12名のうち、6名は投手でもう6名は野手でした。

NS条件では、通常のチームのウォーミングアップが行われましたが、SS条件では、それに加えてキャッチボール後に投球肩の静的ストレッチが行われました。

静的ストレッチは6種類(水平内転・外転、内旋・外旋、屈曲・伸展方向)行われ、各ストレッチは30秒間行われ、ストレッチ間は10秒の休息が設けられました。

それらが終了して、5〜10分後に投球練習(5球)が開始されました。
その後、マウンドから18.44m離れた捕手に向かって全力投球が10球行われました。

スピードガンで球速を測定し、最高球速と平均球速(最高・最低球速を2球ずつ除いた残り6球の平均)が算出されました。

球速の測定はスピードガンの電源故障により12名中1名が測定できませんでした。

コントロールは、審判員の経験が数年ある研究者がストライクか否かを判定し、10球中何球ストライクに入ったかが数えられました。


投手と野手では球速・コントロールの結果が異なる可能性があるため、まずN
S条件・SS条件ともに投手と野手の比較がされました。

その結果、球速に関しては、NS条件・SS条件ともに投手と野手に有意な差がなかったため、投手・野手合わせた11名の結果をNS条件とSS条件で比較されました。

コントロールに関しては、SS条件で投手の方が野手よりコントロールが良いと
いう結果が出たため、投手(6名)・野手(6名)別々の結果をSS条件とNS条件で比較されました。

〈結果〉

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