カッパドキア。【トルコ旅行記】
まだ日も昇らない真っ暗な時間。ツアー会社から運行しているドルムシュに多くの人々が乗ってこの場所にたどり着いた。
僕と友人はカッパドキアの気球群を見るために朝の4時ごろからここで待っていたんだ。
もう夏だけど、朝方はまだ肌寒い。
バイクで二人乗りをしてきたせいもあって体はかなり冷え切っていた。
ツアー会社の人々が準備をしている間、僕たちは何もすることがなかった。
あたりは真っ暗だし、どんどんツアーのバスがやってくるのであたりは砂埃が舞っていた。
少し歩くと、僕たちは小さな焚き火のある簡易カフェを見つけた。
まるで砂漠にポツンと立つ木製の建物。
焚き火の前まで行き、冷えた体を十分に温めた。
僕と友人はそこで少し談笑しながら気球が準備される様子を眺めていた。
周りには車が砂の上を走る音と、エンジンが稼働する音が響きわたっている。
それ以外に人の声などは一切なかった。
他の人々も僕と同じように気球が準備される光景を見ていたのかもしれない。
しばらくするとポツポツと気球に火が灯り始めた。
それを見つけた僕らは少し興奮した様子でそこへ駆け寄った。
まだ明け方の静かな空気を切り裂くようにボーッ、ボーッという音があちこちで聞こえ始める。
それと同時に暗闇の中に青と赤の光が現れる。
小さくまとめられていた気球たちは気がつくと何倍もの大きさに膨れ上がって遠くから見るよりも真下から見るとかなり大きく見える。
気がつくと周りには多くの人が集まってきていてこんなにも人がいたのかと思うほどに広範囲に気球と人が現れていた。
中にはクラシックカーやスポーツカーの姿も見える。
僕がそんなことを考えていると友人が静かに驚きの声を上げていた。
その方向を見ると離陸一機目が空へと少しずつあがっていた。
車が徐行するくらいのスピードで空へ登っていく様子はなんだか僕には奇妙に見える。
なんだかもっと迫力のあるものだと思っていた。
もっと皆がワイワイとその光景を見るものだと思っていた。
でも、そこにあったのは静寂の中に響くガスの噴き出る音とピピとなる無線の音だけだった。
朝だからなのかもしれない。
もしこれが昼に行われるイベントならもっと人々は大騒ぎだったかもしれない。
朝に行われるからこそカッパドキアのこの気球群は神秘的で人為的でありながら多くの人を魅了するのだと思う。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?