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0:恋が始まる(いや、始まっている)
はじまりの話をする。遡ると、あまり時間が経っていないことが分かる。
約2ヶ月前、私はずっと好きになれずに1年付き合っている彼氏と別れたくなっていた。
ちゃんと好きになって恋をして、いいところや悪いところを沢山、たくさん見つけて、お互いのことを知っていく1年ではなかった。
何となくで付き合って、遠距離だったのであまり会わず、たまに会って情事を済ませ、楽しかったねまた会おうねと言って去る。
そんな1年だった。
ある日飲み会で酔いすぎて、その事を吐露してしまった。
遠距離で上手くいってるカップルに教えを乞いたい。
そう言って泣いた。
私は曖昧な付き合いをしながら、ずっと彼氏のことを大切にしたかった。その方法を知りたかった。
今思えば、私が酔って余計な事を言わなければ、彼と会うこともご飯に行くことも仲良くなることも叶わなかったのだろう。
会ったのがが吉と出たか、凶と出たのか、それは今は、置いておこう。
結局、その彼に会う前に、相談する前に彼氏とは別れてしまった。苦しかった。
そんな時だ。彼を紹介してもらったのは。
1ヶ月前、その飲み会にいた気の知れた先輩が、後日気を利かせて飲み場を作ってくれた。
私と、先輩と、その彼。
言うなれば彼は、
''好きになってはいけない人''だった。
彼には5年連れ添う大切な彼女が居た。
彼は口癖のようにこう言う。
結婚したら遊べないんだから、今のうちに遊んでおく。
何年後かに結婚するから、そしたら彼女一筋に愛すよ。
不倫はしない、結婚はそういう契約だから。
結婚したら遊べなくなっちゃうからね?笑
確立された恋愛論を繰り広げている彼は、特別で、煌めいて、他の人とは違う、という実感をくれた。
彼は彼女のことを大切にしていた。
つまり、彼のことを本気で好きになってはいけなかった。
私の中では、彼のことは好きにならないだろうという自信があった。
彼女がいるのにも関わらず、彼女に黙って飲みに行ったり、彼女が居てもほかの女と致せると言ったりするような、軽くてチャラくて大学生ノリな男は絶対に彼氏にしたくないと思ったからだ。
最初は楽しいという感情だけだった。
この生ぬるい感じ、友達だけど、異性という感覚がしっかりある感じ、
それを楽しんでいた。この気持ちのまま変わらないんだと思った。
彼とは話がよく合って、言葉を慎重に選んでくれる彼と話すのは楽しかった。
可愛い可愛いと言ってくれて、気を使えて綺麗で女性らしくて、という私の欲しい言葉をすべてくれた。
彼といると自己肯定感が上がって、自分のことが少し好きになれた。
彼は沼だった。
気づいた時にはもう遅い、というテンプレでは言い表したくないが、当然もう、遅かった。
彼氏になって欲しい、と、
好きになる、ということは別物だと知った。
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