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水素と石炭で結びつきを深める日本とオーストラリア:環境分野の非主流派連合!

現在、日本とオーストラリアは水素の安定供給に向けた連携を深めている。

世界の潮流を見るうえで、環境分野では「反主流」になりつつある両国のこの協力関係はめちゃくちゃ面白いと思うため、分かりやすくまとめてみる。

なお、「いま何が起こっているか」ということについてはこれら上下の記事が分かりやすい。

水素は究極のクリーンエネルギー

まずはじめに、水素は究極のクリーンエネルギーである。

燃焼させても「水」しかできず、CO2は排出しない。「2H2+O2→2H2O」という中学レベルの化学式である。

燃やして水しかできない、ガソリンとはえらい違いだ。

では、どうして水素がなかなか広がらないかというと、①水素を作るのが難しい(高価)、②貯蔵・運搬がめちゃくちゃ難しい、からである。

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貯蔵・運搬の実証実験!

「世界初、液体水素の大規模輸送、豪州から日本へ」の記事の内容は、まさに貯蔵・運搬の実証実験を日本とオーストラリアではじめたというニュースである。

水素を船で運ぶ

だけ聞くと、「ふーん、それで?」というのが大多数の人の感想だと思うが、これはむちゃくちゃ難しいミッションなのである。

川崎重工業が造ったマイナス263度で液体水素を安定して運搬するための専用船を使っているということなので、まさに「運ぶだけで凄いこと」なのである。

これは、水素エネルギー実用化のための問題点②「貯蔵・運搬がめちゃくちゃ難しい」に対する一つのソリューションである。

石炭のゴミから水素を作るという素晴らしき発想!

次に、なぜ日本の連携先がオーストラリアなのかということであるが、石炭の輸出が主力産業の一つであるオーストラリアには石炭のゴミ・褐炭(純度の低い石炭)が山のようにあるからである。

この褐炭はほとんど使い道のないものであるのだが、驚くべきことに、日本の技術により褐炭から水素を作ることができるというのである。

J-POWERや岩谷産業の技術であろうか。これはまさに革新的な技術である。

ゴミ(のようなもの)から水素を作り出すことで、大幅な低コスト化を目指そうという野心的プロジェクトだ。オーストラリアにはそのゴミがたくさんあり、日本には技術がある

もちろん、褐炭→水素の生成過程でCO2が発生してしまうので、その回収テクノロジーも必要になるが、これも日本が割と得意とする分野である。

まだ成長途上の技術ではあるが、水素実用化における問題点①の「水素を作るのが難しい&高価」ということに対するソリューションの有力な候補の一つである。

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「環境に悪い」とされる石炭で大逆転を目指す日豪の野心的プロジェクト

 このように、このプロジェクトのテクノロジーの多くは日本企業の技術を基盤とするものであるが、石炭の輸出が主力産業の一つであるオーストラリアにとっても凄く美味しい話でもある。

 欧州が主導して、「石炭=環境に悪い」というイメージ戦略を先導している流れの中では、石炭産業のさかんなオーストラリアは反主流であるし、また原発が止まるなか火力発電依存度が高まる日本もまた反主流となっている(日本の石炭火力はかなりクリーンであるにも関わらず!)。

 日本・オーストラリアの連合により、オーストラリアは石炭産業を守ることができるし、日本はCO2リサイクル技術を役に立てることができるばかりか安価に水素を仕入れることができるようになるかもしれないという、win-winの非主流派石炭同盟というのがこのプロジェクトの本質である。

 「石炭=環境に悪い」とみなされる現状から大逆転を果たし、究極のクリーンエネルギーの供給源に石炭が昇華するというのは、なんとも胸のすく未来像のように思える。

日豪連合の未来を前向きに考えてみる

現在、日本・オーストラリアは対中国のための友好国の集まりであるQUADのメンバーである。また、オーストラリアはイギリス・アメリカと対中国AUKUSを作っているし、日米は同盟関係、日英は実質的に準同盟関係となっていることから、今後は日豪の軍事上の繋がりも徐々に深くなってくだろう。

それに加えて、今回の日豪「水素・石炭連合」は、エネルギー安全保障の問題でもあるし、そればかりか日豪が新たなビジネスモデルを築き上げていく可能性もあり、とても夢があるように思う。

日豪は時差もほぼない「縦の軸」を形成できるうえ、あいだには今後の世界の成長エンジンとなる東南アジア諸国も含まれているため、この地域での水素供給網も充実化は、とてつもないポテンシャルを秘めているように思う。

石炭と水素を介した両国の関係性に、今後も着目していきたい。

(画像は写真ACから引用しています)




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