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2022年の食糧価格を考察する:上げ止まると予想するも不確定要素も多い!

1年ほどまえにこんな記事をエントリーした。

実は、小麦価格や大豆価格は高騰するだろうとの予測のもと、先物で少々利益を上げることができた2021年である(^^;

今や、食糧価格高騰問題は地上波のニュース番組でも取り扱われるほどに注目されるようになった。では、2022年の動向はどうなるだろうか?

2022年の食糧価格を考察する

ニュースで食糧価格高騰の原因として挙げられているのは主に以下の二つの理由によってである。

①中国の需要増加による「買い負け」

②代替肉の流行

中国需要の増加については、あとで触れる。ここでは、代替肉の流行について、中長期的なトレンドとなる可能性があることを指摘しておきたい。

現在、世界では牛肉・豚肉・鶏肉などを使わず、大豆等から「肉」を作り出すことが流行しつつある。この理由も大きく二つ。第一に菜食主義者などの食生活の多様性にこたえるため(ダイバーシティ流行の一環か?)、第二に牛が環境に悪い(!?)からということ(CO2削減の流れの一環か?)。

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世界に15億頭いるといわれる牛のゲップはメタンガスを多く含んでおり、地球温暖化作用が強いのだそうだ。

どちらの理由も欧米が作り出した流行に乗るもので、はっきり言って欧米の勝手な流行に振り回されるのはまっぴらごめんであるが、それでも穀物市場価格は変動してしまうので、理解しておく必要がある。

こういった理由から、食糧価格は今後もずっと高騰を続けていくというのがマスコミ一般の論調である。しかし、食糧価格を日々ウォッチしているブログ主としては、そうはならないのではないかと予想している。

食糧は消費量だけでなく生産量も増え続けている!

日本の農林水産省が地味に毎月更新している食糧安全保障月報はまことに秀逸である。こんな優れた資料が誰にも注目されることなくさらっとweb上に落ちているのがある意味で日本の凄いところ。当ブログではこれを地味に解説します 笑

各国の動向についてはレポートを見てもらうとして、全体としては、ご覧の様に確かに世界の食糧消費量は増え続けているのだが、一方で世界の食糧生産量も増え続けているのである。食糧自給率の低い日本からすれば考えにくいことだが、いわゆる農業国と呼ばれる国々の食糧生産能力は高い。よほどの大干ばつや洪水などの災害がない限り、需要に応じて供給もキャッチアップしていくのである

食糧安全保障月報令和3年12月

(食糧安全保障月報令和3年12月版より)

そして、意外と期末在庫量もプラスで推移しているのである。(ただ、コーヒーや植物油価格が上昇を続けている点には留意が必要)

そして考えなければならない中国ファクター

そして食糧不足、食糧価格高騰の一因とされる中国による買い占め。

中国が食糧を爆買いする理由は、食糧不足に対する恐怖心からである。15億人の人民を飢えさせたら政権が持たない。だから必死である。そして昨年は中国が食糧安全保障を深刻に考える複数のファクターがあった。第一に米中覇権戦争による食糧安全保障そのものの問題、第二に洪水や災害による農作物被害、第三にコロナ流行の農作物生産に対する影響の懸念、第四にアフリカ豚コレラ流行が収まり豚飼育のための穀物需要が増えた事など。

こういった事由により、中国は食糧を世界から爆買いしていたわけであるが、一方で国内での生産も必死に行ってきたわけである。農林水産省のレポートによると、

”中国の2021/22年度の食糧(穀物や豆類、イモ類の計)生産量は6億8,000万トンを超え、史上最高を更新する見通し。”

となっている。つまり、中国は(誠に残念ながら日本と違い・・・)国内農業生産も必死で増やしているのである。疫病や災害の被害も落ち着けば、中国が食糧を爆買いする動機も減少するであろう。

サバクトビバッタの現状

さらに、2021年は穀物を食い荒らすサバクトビバッタが大発生し、アフリカからインドの穀倉地帯にかけて大暴れする要因を考慮する必要があったが、2022年にはいり、いまのところある程度は沈静化しているようである。

食糧価格は上げ止まるのでは?

ということで、実際に穀物先物価格は上昇し続けている状況であるが、今から先物を買って儲かるかというと、そうはならないのではないかと予想する。今年は恐らく穀物先物は買わないw ただ穀物期末在庫量は減少の見通しから、先物価格下落まではいかず、高止まりするだろう。なお、トンガの海底火山噴火の影響については次節でまとめる。

代替肉の関連で、大豆はワンチャンありだと思うが、穀物先物を買うより代替肉産業に投資するという手もある。ただ、代替肉関連企業であるアメリカのビヨンドミート社(NASDAQ)を見ると、あまり株価は上がっていないようである。日本企業ではネクスト・ミーツという会社があってアメリカで株式公開しているが、やはり株価はあまり上がっていないようだ。

日本の投資信託としては「フード・イノベーション厳選株式ファンド」というのがあるようなので、こちらの方が取引はしやすいかも。

代替肉市場と合わせて、食糧価格については今後も定期的にウォッチしていく。

トンガ海底火山噴火の影響は?

一方で食糧価格の予想に考慮しておかなければならないファクターがもう一つある。2022年1月15日に起きたトンガの海底火山の大噴火である。

1783年、アイスランドのラキ火山大噴火により世界規模での低温・多雨が生じたという事実を忘れてはいけない。日本では天明の大飢饉の遠因となったとされるし、フランスでは深刻な食糧不足や農家の貧困が生じ、1789年のフランス革命の一因となったという説もある。

つまり、火山大噴火は地球の寒冷化と農作物不作を誘発するのである。そして、火山大噴火の影響は10年程度は持続すると言われている。

さて、小麦、トウモロコシ、大豆、コメの四大穀物のうち、もっとも冷害の被害を受けやすいのはどれだろう?

防災科学研究所のHPによると、イネは小麦・トウモロコシに比べ2倍ほどの温度積算量を必要とするそうだ。つまり、冷害でコメは育ちにくい。コメが最も寒冷化の影響を受けやすい。

日本、大丈夫か!?

イネ以外ではキビや大豆が影響を受けやすいそうである。

従って、世界的な食糧需要の増大に供給もキャッチアップしようとする流れのなか、もしもトンガの海底火山噴火の噴煙により数年にわたり地球の寒冷化が起きたとすると、コメと大豆の生産量が落ちる可能性がある

まとめ

以上を総合して、穀物先物投資をするなら、代替肉関連+冷害に弱いという要素から、「大豆にはワンチャンあり」と判断する。また、「フード・イノベーション厳選株式ファンド」も悪くないかもしれない。

今後の価格も引き続きウォッチしていきたいと思う。

(画像は写真ACから引用しています)



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