見出し画像

ハンガリーのオルバン首相は何を考えているのか?そして市民の声

ロシアと対峙するEU諸国。バルト三国ポーランドの緊張感は高く、ドイツフランスなどの緊張感はやや低いなどの特徴があるが、その中でもハンガリーは異質の動きをしていた。

いわゆる親ロシアの立場を隠そうとせず、スウェーデンのNATO加盟にも最後まで抵抗したのがハンガリーだ。

単なる親ロシアとシンプルに考えて良いものなのか・・・ハンガリーのオルバン首相の頭の中がある程度わかるインタビュー記事があったので、ここにまとめておく。

ハンガリーのオルバン首相はいったい何を考えているのか?

ロシアはヨーロッパとはまったく異なる文明に属します。自由を価値観の根幹に据えるヨーロッパ大陸の文明と比較するのは無理です。ヨーロッパでは、政治の究極の目的は自由です。政治とは、市民にできるだけ多くの自由を与えるためのものになっています。

ところが、ロシアはそうではありません。ロシアの最大の課題は、一つにまとめあげるのがほとんど不可能と思える広大な領土の統一を保つことであり、市民の自由ではないのです。

ですから、ロシアがだんだんヨーロッパの国のようになると期待するのは妄想の類であり、絶対に無理な話です。ロシアの歴史、政治、地理、伝統のどれを見ても、ヨーロッパの国とは異なるのがわかります。

上記記事より

ここまでを要約すると、「①ロシアはヨーロッパとは異質の国である」。


ただ、ここで問うべき大事なことがあります。ロシアが自分たちと価値観が異なる国だとしたら、それはロシアと協力すべきでない理由になるのでしょうか。私はこの問いに「ノー」と答えます。

そもそも世界の過半数の国々は、ヨーロッパの国々と価値観が異なります。価値観が異なる国とは協力しないという理屈で行くと、世界の国々の3分の2と協力できなくなってしまいます。理性的な議論だとはとても言えません。 ロシアとの関係はどのようにしていくべきなのか。それを理性的に討議すべきだというのが私の考えです。なぜならロシアという国は厳として存在しており、しかも、その国は強国だからです。

もちろんEUの加盟諸国内では、この件に関して見解の対立があります。EUの一部の指導者は、いまのEUの行動は合理的であり、何らかの好ましい結果が得られると考えているようです。

一方、それとは反対に、このままではウクライナが軍事面、資金面、政治面で崩壊するのではないかと考える人もいます。私は後者の立場です。プランBを用意し、新しい戦略を始めるべきです。

「②ロシアは強国であり、ウクライナが負ける可能性も考慮しなければならない」

私は共産主義の国に生まれました。自分の人生の26年間を、政治と経済が西側とソ連側に二分された世界で過ごしました。

あれはつらく、むごい時代でした。世界があの状況に戻るのを私は望みません。つながりや協力関係を求めて世界に出て行くのではなく、自国以外はすべて敵とみなす世界だったのです。

世界を分断するのは、よい政策ではありません。それは米国病とでも言うべきものです。

上記記事より

「③世界を分断するのは良くない。それはアメリカが悪い

米国人は、世のなかには普遍的価値というものがあり、それは世界のどこでも同じように理解されなければならないと考えています。私はそのような考え方が好きではありません。

私たちは経験上、そのような考え方が間違っているとわかります。まずは文化という基盤があり、その文化という基盤のうえで人々は自分たちに合った価値観や政治制度を決めるのです。

非西洋人に対して、西洋人のように振舞い、西洋の国々と同じ制度を設立するように要求することはできません。米国のそういった不健全な普遍主義の考え方のせいで、世界各地で紛争が起きているというのが私の見方です。 私たちは米国流に追随すべきではありません。私たちはヨーロッパ人であり、文化を理解できます。私たちのほうが米国人よりもパートナー国を理解できるのです。

だから米国流に従わずに、むしろ中国や日本、インド、インドネシア、ロシアなどの国の理性的な政策について議論すべきなのです。 私が世界のブロック化を是認せず、むしろ貿易を通じて「相互のつながり」を作っていくべきだと唱えているのはそれが理由です。

上記記事より

「④アメリカのせいで世界で紛争が起きているので、アメリカ追従はやめましょう」

いまの質問に私がお答えできる部分があるとすれば、私たちハンガリー人があなたがたフランス人の選んだ道の後追いはしないというところです。

フランスが選んだ道は、おそらくフランスにとってよいものだったのでしょう。しかし、ハンガリーには、よいものになりえません。

たとえば移民の問題です。もしフランスが、移民を受け入れることで、好ましい結果が得られ、これまでの社会よりも道徳的観点から見て上等な新しい社会ができると考えるなら、移民を受け入れるべきです。それはフランスが好きにすべきです。

しかし、私たちハンガリー人は、そこに大きなリスクがあると考えます。自国に移民が入れるようにし、さまざまな文化を混ぜ合わせれば、私たちの伝統のある社会より上等な社会ができあがるかといえば、その保証はありません。テロや治安の悪化、経済への悪影響なども考慮し、私たちは移民受け入れの冒険には加わりたくなかったのです。

その冒険に打って出るのがフランスの望みなら、フランスはそれを実行すべきです。でも、それを私たちハンガリーに押し付けないでください。私が要求しているのは、ただそれだけのことです。(続く)

上記記事より

「⑤フランスの真似をして、移民受け入れはしない」

ざっくりと内容を要約すると、以下の5点になるだろうか。

①ロシアはヨーロッパとは異質の国である
②ロシアは強国であり、ウクライナが負ける可能性も考慮しなければならない
③世界を分断するのは良くない。それはアメリカが悪い
④アメリカのせいで世界で紛争が起きているので、アメリカ追従はやめましょう
⑤フランスの真似をして、移民受け入れはしない

これが「オルバン首相の頭の中」である。後編があるようだが、有料記事のようなのでリンクのみにとどめておく。

ハンガリー・オルバン首相の立場は、ざっくりひと言でいえば「反米・反グローバリズム・多極主義者」であるようだ。「アメリカ・西欧の押し付け価値観から離れて、強国ロシアとも共存せねばならない」といったところであろうか。そういう意味では、現在のロシアとの親和性はやはり高そうだ。

写真ACより引用


そして市民の声

少し古い記事だが、ハンガリー市民の声を取材した記事もあったので、リンクしておく。

かつては、自由と平等を求め、旧ソビエトなど大国の支配からの脱却を目指していたハンガリーの人々。

その彼らが、いま「自由よりも毎日の生活だ」と口にし、独自路線をとるオルバン首相を支持する姿を見て、この数十年の間に彼らに何が起きたのかを、もっと知りたいと強く感じるようになった。

それを知ることこそが、現在、世界各地で、欧米型の民主主義に背を背ける国が増えている背景を少しでも理解することにつながると考えたからだ。

上記記事より引用

自由を求めて西側諸国に加わったが、思っていたほど豊かになれなかったし、むしろ西側諸国に搾取されていいるとも感じている・・・とのことだ。自由民主主義諸国が一枚岩になかなかなれない一つの要因が、ここにあるかも知れない。ある意味では、日本もアメリカにいいようにやられてきたところもあるしね。

今後の世界を読み解くうえでの、ひとつの鍵になりそうな良記事であった。

(画像は写真ACから引用しています)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?