いりひの夢

退勤後 駅までの道すがら
破れてしまうその前の
夏の落陽が見る夢の
その中で再現されたかのような
匂いと風景の膜に包まれた
それは薄い 薄い膜だった
ほんのりと郷愁に駆られ
まさにこれからというよりは
いつかの流るものが想起された

ただこれだけのことなのに
どうして記そうとするのか
ただこれだけのものに
どうして今日一日がみとめられてしまうのか
ただ必要だから その始まりから
どうしてここまで連れて来てくれるのか
今日も詩にみとめられていく
この恩返しは触れられない
想い 祈るかのような行為だけが唯一の
そしてまた幾たび幾重にも
みとめられていく

首の周り
寝汗をかいていることに気がついて
そうかもう夏か
徐々に覚めつつ
知らされていく

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